めちゃくちゃ甘い琴音のミニトマト(笑)
いつもの合奏練習の時琴音が授業で栽培したトマトをみんなに配ってくれた。
「はいっ、みんなにっ!」
そう言って琴音は、大きなビニール袋を大事そうに抱えて部室にやってきた。袋の中には、赤く色づいた小さなミニトマトがぎっしり詰まっていた。
「これ、琴音が育てたのか?」
航がそう尋ねると、琴音は満面の笑みで何度もうなずいた。
「うん!先生と一緒に!──みんなに、あげる!」
聞けば、生活科の授業で植えたミニトマトを、彼女は毎日、先生と一緒に水をあげて育ててきたのだという。
まだ青いうちは心配して見守り、少し赤くなったら「もうちょっと」と我慢して収穫を待った。
「みんな、ホルンとかトランペットとか、がんばってるから──だから、元気、出るように」
そう言いながら、ひとつずつ丁寧に手渡していく琴音の姿は、まるでお祭りの日の巫女のようだった。
「……うまっ!」
「これ、売ってるのより甘いぞ!」
部員たちは口々に驚きの声を上げた。太陽の味がする、そう思えるほどに甘くて、みずみずしい。航もひとつ口に入れた瞬間、思わず目を見開いた。
琴音はその様子をニコニコしながらじっと見ていた。そして、誰よりも嬉しそうに、にへっと笑った。
それは──
太陽の下で育ったミニトマトみたいに、素直でまっすぐで、優しさであふれた笑顔だった。
そんなことが続いてるうちに航もまた、彼女の存在を自然に受け入れ始めていた。
もう一人の部員?のように…




