琴音現る(笑)
琴音は特別支援学級の生徒のため航とあまり会うことはなかった。
でも琴音は遠くからでも航をみかけると駆け寄ってきてなにかと絡んでくる
それに航もなぜかうまく答えることができていた。慣れというのも変だが毎日のように、奇妙な会話を続けているのが普通になっていた
そんななか放課後の吹奏楽部の練習中。
ふと視線を感じて顔を上げると、
廊下の向こうに、小さな影が立っている。
それは、綾瀬琴音だった。
彼女は、遠くからじっと、こちらを見つめていた。
その目は真剣で、けれどどこか寂しげだった。
最初は気味悪がった部員たちも、次第に慣れていった。
最初の出会いが悪かった航だけは、
冷やかされるたびにいちいちカッとなってしまう
「お前、最近誰かに見られてる気しない?」
ある日、パーカッションの先輩がニヤリと笑って言った。
「何の話ですか?」
「ほら、お前が演奏してる時、毎回廊下の端っこで見てる子がいるだろ?」
「……気づいてました?」
「そりゃあな。あんなにじーっと見つめられたら、気になるに決まってるだろ」
他の部員たちも興味津々といった表情で話に加わる。
「お前、まさかあの子と知り合いなの?」
「いや……ちょっとしたことがあって……」
「へえ~、気になるねぇ」
彼が返答に困っていると、いつの間にか話は盛り上がり、しまいには冷やかしの対象になっていた。
「お前、モテてるんじゃね?」
「違います!」
「まあまあ、そう照れるなって!」
みんなが笑うなか、彼だけは複雑な気持ちだった。
(……なんで、あいつは毎日見にくるんだろう。)
航にはわからなかった。
だが、あの日聞いたあの音色だけは、頭から離れなかった。




