アンコールの曲で
アンコールが終わった舞台上で、
宮原沙織はホルンを胸に抱きしめ、静かに立ち尽くしていた。
会場は一瞬の間が起きた。
その一瞬から大きな拍手が沸き起こった。
しかし、それはいつものアンコールとは異なる拍手になっていた。
それもすぐ終わってしまい拍手よりも観客の中のモヤモヤが大きくなっていた
誰も知らない曲…
航は宮原沙織をずっと見据えていた
彼女の肩は、微かに震えていた。
航にはわかった…
スポットライトの光の下、航にはホルンに光る小さな別の光を…
そしてそれは彼女のその目元に滲んだ涙のような気がした。
──この曲。
──あの子の曲だ…
航の胸の奥に、あの日の記憶が押し寄せた。
誰もいない音楽室で、あの少女が吹いていた、
誰も知らない、美しい旋律。
忘れていたあの旋律…
そう…忘れていた…自分は忘れていた…あの子のことも…
そのことに気がついた時、体中が熱くなって、汗が滲み出してきた。
なんてやつだ…俺は…
ボッーと生きてるにも程がある…
航は、思わず立ち上がった。
「行ってくる…」
誰に向けるでもない言葉をつぶやいた
「先輩?どこいくんですか?
もう帰るんですか?」
「宮原さんとこ…」
「ちょっと…なに言ってるんですか?」
「サインもらいに?」
驚いている後輩たちを気にすることもなく答えることもなく振り向きもせず航は向かった。
後輩たちに置いてお構い無しに帰る観客を押しのけて航はむかった
コンサートホールの控室へと駆け出していた。
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関係者以外立ち入り禁止
控室エリア。
お構い無しに入ろうとするとスタッフが気づいた
「君!そこだめだよ!入ったらだめ!」
スタッフに止められながらも、
航は必死に説明した。
「どうしても、あのアンコール曲のことを、宮原さんに聞きたいんです!聞くだけです。あれは友達の曲のはずなんです。それをなんで宮原さんが知ってるのか…それを聞きたいんですけど…」
「君ね…そんなこといってもダメだよ…帰りなさい…」
「お願いですから…」
「ダメなものはダメだよ…君高校生でしょ?学校どこ?言う事聞かないと通報するよ…」
「通報ですか…じゃあなたが代わりに聞いてきてください…」
この押し問答を離れたところから後輩達は心配そうにみていた。
後輩たちは心配そうに遠くからこちらをみてることはわかっていた。
スタッフと揉めていると控室のドアが開き宮原沙織が顔を出した。
航の真剣な眼差しに何かを感じ取ったのか宮原が声をかけた
「あなたは?」
「琴音の中学の時の友達です」
琴音と必ずなにかの関係があるはずだと勝手に思い込んでいた航はとっさにそんな返答をしてしまっていた。




