懐かしい音色
会場には一般客はもちろんだが航たちのような学生もたくさん来ていた
航は会場を見渡していた
こんなにたくさん音楽聴きにくるんだ
どんな形でもいいから今日の機会がその人と音楽のいい出会いになりますように
なぜかわからないが自然にそんな気持ちになっていることが航自身不思議だった
「今日ここにきたことがいい出会いになるといいなあ…」
とつぶやいてしまった
純粋に航にはそう思えた
「イヤだなぁ(笑)先輩出会いっておっさんくさ(笑)いい人いるんですか?(笑)」
「え?なに?そういう意味じゃなくて
音楽の話(笑)」
「何だそっちか(笑)先輩真面目すぎ(笑)」
ここまできて後輩にからかわれるとは思わなかった航だった
演奏が始まった
プロの音色はさすがだった
ソロがそもそも珍しい
聞き入っていた航
なぜかどこか懐かしい音色のような気もして
あれ?なんだろう?
と思いながらも演奏は続いていった
そしてプログラムが終わり
大きな拍手が鳴りやまなかった
そしてアンコール曲が始まった
みんな静まり返って曲を聴いていた
すると少し会場がざわつくほどではないが演奏中なのに話し声が聞こえたりお客さん同士顔見合わせたり少し会場が浮ついていた
しかしそれも演奏によって静まり返る
それはその音が演奏がなにか違うということに聴いていた人に思わせたからだ
航も当然その一人だった
でも航が他の人とちがってたのは
この曲に思い出があったからだ
航にだんだん浮かんでくる思い出
それは懐かしい
あれ?これ?…
航の中にどっとあふれてくるものがあった
それは一瞬だったけどたくさんの記憶だった
曲だけじゃない
音色もそうだった
あ…そうか…
アンコール曲が終わる頃には全て思い出していた
それと同時になんともいえないモヤモヤが航の中に
え?なんで?この曲はあの子の曲だけど
なんでここであの人が…
モヤモヤはもう溢れて航は演奏には集中できなかった




