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紗良の選択2

紗良は震える指を押さえながら、クラリネットを構えた。中学時代は堂々と演奏できたのに、ここでは周りの視線が怖かった。先輩たちの演奏は、自分の知っている吹奏楽とは別次元だった。


——でも、私だって負けない。


そう自分に言い聞かせて、音を吹いた。


けれど、演奏が終わった瞬間、指導者の冷静な声が響く。


「音は綺麗だけど、表現が単調。感情が伝わってこないね」


結果は補欠。正式な演奏メンバーには選ばれなかった。


「……仕方ない。まだ最初だから」


そう言い聞かせた。次のオーディションで挽回すればいい。けれど——


その「次」も、「その次」も、何度挑戦しても結果は変わらなかった。


夏の定期演奏会。選ばれたメンバーが大きな舞台で輝いていた。紗良は客席から、それを見つめるだけだった。


「次こそは……」


それだけを支えに、朝も放課後も練習した。誰よりも長く残り、指導者のアドバイスをノートにまとめ、動画を見て研究もした。


しかし、次のオーディションでも、また補欠だった。


「音は悪くないけど、技術にムラがあるね」


「もっと曲の背景を理解して吹かないと」


そんな指摘を何度も受けた。


努力は裏切らない——はずだった。


でも、どれだけ練習しても、結果は何も変わらなかった。


演奏メンバーに選ばれた同級生たちは、どんどん上達し、先輩たちに認められていく。自分だけが、ずっと同じ場所で足踏みしているような感覚だった。


「……私、才能ないのかな」


初めてそう思った瞬間、楽器を握る手が震えた。


秋のコンクール前、最後のオーディションが行われた。


「今回こそは……」


祈るような気持ちでクラリネットを吹いた。けれど、結果は変わらなかった。


部室の壁に張り出されたメンバー表に、自分の名前はなかった。


それを見た瞬間、何かが音を立てて崩れていくのを感じた。



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