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孤独な音色

数日後。


吹奏楽部の後輩の一年生たちが、航に相談に来た。


「先輩……結城さん、やっぱり部に入ってほしいんですよ。でもどうしてもダメなんですよ。どうしたらいいですか?

なんか、すごい上手いらしいんですよ……!」


航は、あの時の梨沙の音を思い出していた。

少し考えてから、答えた。


「今は、大会前だろ。大会終わってからでいいんじゃないか?今入ってきてもお互い困るだけだと思うぞ。部活に集中した方がいい。

……保留にしといたら。」


後輩たちは、一瞬驚いたようだ。戦力になりそうなのにこの反応か…というような顔だった…

素直には納得できなさそうな顔だった。


たしかに航は、後輩達に表向きにはそう言った。

筋は通っていた。

仮に無理に梨沙が入ってきたとしても…

あの音と…ほんの少し会っただけだったがとても一緒に部活をやってる姿が想像できない…


だから心の奥では──

(……そっとしておけばいいんじゃないかなあ。)

そう思っていた。


航がこんなことを言う理由は後輩達にははっきり言えなかった。

ただ、

あの夕暮れの屋上で聞いた音色と、

結城梨沙の悲しそうな顔が、

なんとなく頭から離れなかった。

---

彼と彼女の間に、

大して言葉は交わされていない。

それでも、

航は、あの音色から確かに受け取っていた。


夕暮れに響いた、

あの孤独な旋律とともに。


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