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地球の裏側の夢



放課後、旧校舎の階段に腰を下ろして、

航は水筒を傾けた。


春から夏へと変わろうとする空気。

遠くのグラウンドからは、野球部のかけ声が響いてくる。

野球部はいつも帰りは遅い

吹部もかなり遅い方だが周りはもうみんな帰っていた


そんな中、

トランペットの音が聞こえてきた、

ドヴォルザークの新世界より

まぁ確かにこの曲はもう帰るぞ〜の曲だけど

もう帰らないとの時間なのになあ… 

そう思った航は校舎に戻った


練習を続ける少女がいた。


「お~い、アナ〜

もう帰る時間だぞ〜」


アナ・ミウラ。


日系ブラジル人。

この町で生まれ、この町で育った。

最初に渡っていった移民から数えたらもう4世ぐらいになるんだろ。


町には大きな工場がいくつかありもう何十年も間日系ブラジル人が働いていた 

あるものはここで結婚し家庭を持って日本人に溶け込みながら暮らしている

アナの一家もそんな家族の一つだった

---


アナは、陽気だった。

いつも誰かに声をかけ、笑顔を絶やさなかった。


けれど、航は知っていた。

彼女の裏には、努力と、諦めない心があったことを。

---


「アナ、お前さ。

なんでそんなに頑張るんだ?」


帰り道、アナは駅前で自転車そこからバスで帰るために学校前の公園の中を自転車押して歩いていた.。公園内は自転車の走行は禁止になってるからだ

航はアナと一緒に帰ることになりふと尋ねた。


アナは、

にっこりと笑った。


「将来ね、ブラジルに行きたいんだ。」


「ブラジル?」


「うん。向こうの学校で日本みたいに音楽を教えられる学校作りたい。」


航は、驚いた。


「……すげぇな。」


「すごくないよ。」

アナは笑った。


「日本みたいに、全国どこの学校でも音楽やれる環境、少ないからさ。

あたし、子どものころからずっと音楽好きだったけど、

うち、お金ないから、ほとんど独学だったし。」



「バイトして、買ったんだよ。これ中古だけど、だから、大事にしてる。」


アナは、ケースを撫でた。

まるで宝物のように。

それにしてもマイ楽器持つこと自体がそもそもすごいことなのにと航は思った。 

学生でマイ楽器持ってやつはほとんどいない。

音大志望ぐらいかもしれない。



そういう航は家庭環境のおかげでマイ楽器だ。

これはアナからみればとてもうらやましい環境だった。両親からも手ほどきを受けられるという環境。

子供の頃からそういう環境が自然にあった。

それを自覚するのは航にはまだだった。


彼女の両親は、三交代制工場で働きづめだった。決して裕福とは言えない。兄弟もいる。


だから、アナは音大への進学を諦めた。


「教育学部行くよ。弟も妹もいるし。でもパパもママも私に心配しなくていいから大学行きなさいっていってくれる。それだけでもうれしいんだ。みんな私のトランペット大好きって言ってくれるし」

そう、彼女は明るく言った。


「教師になって、地方でもちゃんと音楽教えるんだ。お金ない子にも、楽器触らせたい。

あたしみたいに、誰かが音楽を続けられるように。」


その目は、太陽みたいにまっすぐだった。

-

その日。

航は、なんだか胸が熱くなった。


夢を持つこと。

それを手放さないこと。

それがどれだけ勇気のいることか、

初めて痛いほどわかった気がした。

音大という夢は諦めたかもしれない。

それでも別の形で夢をちゃんと見つけて前に進もうとしている。

仕方なくじゃなくて同じ熱量の夢を別の形にして。

決して環境はいいとはいえないけど…


--旅客機が着陸体勢に入って滑っていく音が聞こえる。ブラジルは地球の反対側。ここからの直行便はない。

はるばる先祖がそこまで行き苦難の道をへてまたアナのように日本に来てまたブラジルにいくという。


夏が来る。

それぞれの夢を胸に抱えながら。


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