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五月、祭りの町で



五月。

新緑がまばゆい光をたたえ、川面を撫でる風に若葉の香りが漂う。

ボート部のボートが何艇も川面を滑っていく。

窓を開ければ太鼓のゆっくりとした響き

それに合わせて流れる笛の音

そんな音たちが自然とどこにいても聞こえてくる

こんこんという響きに獅子頭が舞ってることがわかる

拍手がその後に続く

中学生から幼稚園児ぐらいまでもの子どもたちが一緒になって獅子舞の太鼓の乗った山車を引き歩いていく

それを周りで大人たちが見守っている

そんな太鼓や笛の音も一瞬にかき消される

二百年以上も続く音も現代の最先端の戦闘機の音にはかなわない

そんなことも誰も気にせず獅子舞は続く

もう生活の音の一部だからだ


家々にはしめ縄が張られ御祈念所の御札が下げられていた

それがやっと暖かくなった風にヒラヒラと揺れている


城下町だった古い街並みは、

この季節だけは、二百年前からの静かな眠りから目覚めるように賑わいを取り戻す。


祭り本番になると絢爛豪華な山車が並び、金糸銀糸で飾られた幕が、春の日差しを受けてきらきらと輝いた。 

夜にはそれが照明で一段とキラキラが増す


今子どもたちは、山車の上で演じる歌舞伎の稽古に追われている。

長唄が奏でる三味線の音が、町のあちこちから聞こえてくる。


ソーレ、八寸!


の掛け声とともに山車が動き出す

町内総出で山車を引っ張る

周りの人も掛け声を合わせる


ソーレ、八寸!

豪華絢爛な山車が揺れながら動いていく

航もかけ声に合わせて綱を引く

どこのお祭りもそうだが人口減少で人手が足りない そこで引き手の募集が何年も前から始まっていたそうだ

航も翔太に誘われて初めて曳山を曳く、

こっちに転校して数年しか経ってないから何もかもが新鮮だった。

曳山はあちこち修理しながらもその大部分は江戸時代からのものだ

航はその曳山に手を触れるたびに

ここも二百年間いろんな人が触れてきてその後にまた自分も触れている。

また何百年の間に自分の触れてるあとに触れる人がいるのかと想像するだけでも歴史の流れを感じさせてくれる。


本番では山車の上で歌舞伎の言い回しを朗々と唱える子どもたちの声が街角に響いてくる



ふいに、笛の澄んだ音色が路地裏から流れてきた。

どこか懐かしく、胸の奥に染み入る音だった。


町全体が、まるで一つの大きな舞台になったかのようだった。


航の吹奏楽部の仲間、

浅井翔太も、そんな祭りの準備に追われる一人だった。


彼の家は、代々この祭りに深く関わってきた。

小さな頃から、和楽器や囃子に親しんで育った。


今年もまた、翔太は町の若連中と一緒に、祭りのために横笛の練習を毎日していた。


「また今年もだな……。」


航が呟くと、

隣を歩いていた翔太がにやりと笑った。


「まぁ、伝統ってやつだよ。

逃げたくても、体に染みついちゃってる。」


駅まで向かう途中の通りで曳山の組み立てが進んでいた。通り沿いは歴史を感じさせる町家造りの家がずらっと並んでいる

木槌の音と、大工たちの威勢のいい掛け声。

汗ばむ初夏の空気に、町の匂いが濃く立ち上る。


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