第13話 “夢界サミット”開催!──聖女、寝言で予算を決める
夜。
私はふかふかの布団にくるまりながら、マリアに聞きました。
「ねぇマリア。“夢界支部”って、結局どうなりましたの?」
「はい。“お嬢様が眠ると自動で各国の代表が召喚される”とのことです」
「……こわい仕組みですわね」
「殿下曰く、“国連より出席率が高い”そうです」
「寝坊したら欠席ですものね」
「まさに“出席=睡眠”。健康的な政治でございます」
「褒めていいのか分かりませんわねぇ……」
私は湯たんぽを抱えて欠伸をしました。
「まぁ、寝ながら平和になるなら、それもいいですわね」
そして、すぅっとまぶたを閉じました。
――――――
――夢の中。
「本日、第1回“夢界サミット”を開催します!」
司会役の夢マリアが高らかに宣言。
円卓の上にはパン、にんじん、トマト、そして……なぜか枕。
「聖女リリアナ様、開会のご挨拶を!」
「ん……すぅ……Zzz……」
「……ただいま、“神の沈黙”が始まりました!」
「沈黙こそ、最高の開会宣言!」
夢の議事録係が猛烈なスピードで筆を走らせます。
「本日の議題は、“夢界予算分配”についてです!」
「……むにゃ……あんまり無駄づかいしちゃ……だめですのよ……」
「“倹約の御言葉”が下った!!」
「第1条:夢界予算、節約を旨とする!」
「……パンは……多めに……」
「“福祉支出拡充”です!」
「第2条:パン配布制度、拡大!」
「……おやつも……」
「第3条:おやつ補助金創設!」
「……ふかふか……」
「第4条:国際平和の象徴として“枕共有協定”を締結!!」
――満場一致。
世界の夢が、寝息のリズムで決まっていきました。
――――――
翌朝。
私は気持ちよく目を覚ましました。
「マリア、おはようございます。よく寝ましたの」
「おはようございます、お嬢様。……世界もよく落ち着きました」
「まぁ、良いことですわね。昨夜は何かありました?」
「ええ、“夢界サミット”で来年度の予算が成立しました」
「よかったですわねぇ……って、予算!?」
マリアが真顔で頷きます。
「総額、にんじん一万束分です。パン・おやつ・枕に配分されます」
「どんな予算構成ですの!? おやつが入ってますの!?」
「はい。“聖女の寝言”に明記されておりました」
「寝言って……わたくし、何を言ってたのかしら……」
「“クッキーもあったほうがいいですわ”と」
「恥ずかしいですわねぇ!!」
ベルナーが横から報告書を掲げます。
「お嬢様、夢界通貨“スリープル”も発行されました!」
「寝てる間に通貨が増えてますの!?」
「価値基準は“睡眠時間”。長く寝るほど裕福に!」
「……健康的ではありますわね……」
マリアが笑いました。
「“寝れば寝るほど豊かになる”――この国の理想がここにあります」
「なんだか世界が、ゆるい方向に行ってません?」
「はい。でも、戦争も怒鳴り声も消えました」
「……まぁ、それなら……」
私は再びあくびをしました。
「お嬢様、まさかまた寝るおつもりですか?」
「ええ。“補正予算”が必要かもしれませんもの」
「お嬢様、それ以上は……!」
でももう遅かった。
私はふわりと眠りに落ちました。
――――――
夜。
各国の新聞が同じ見出しを掲げました。
【第2回夢界サミット、即日開催】
聖女の寝言「おかわり、もう一枚」により、パン配布量が倍増。
各国代表、「実に温かい政策」と賞賛。
マリアは頭を抱えながら、それでも微笑みました。
「……お嬢様が寝ている限り、世界はきっと平和です」
「すぅ……Zzz……パン……ふかふかですわねぇ……」
その寝顔を見つめながら、誰もが思いました。
――この人こそ、本物の平和そのものだ、と。




