表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

第八話 新たな手がかり

アルベルトへの手紙を通して、クララの過去の恋愛を知ったエリアスだったが、なぜ二人が完全に途絶えてしまったのか、その真相は依然として謎のままだった。


そんな中、エリアスはクララの遺品の中から、古いトランクを見つけた。


鍵がかかっていたが、Rustyの器用な指先によって、見事に解錠された。


トランクの中には、色褪せた写真や手紙、そしていくつかの古い小物が入っていた。


その中に、一冊の小さな手帳を見つけた。それは、アルベルトが使っていたものらしかった。


手帳を開くと、アルベルトの几帳面な文字で、日々の出来事や考えが綴られていた。


異国での苦労、芸術への情熱、そしてクララへの募る想い……


読み進めるうちに、エリアスは衝撃的な記述を見つけた。


アルベルトは、異国で重い病に侵され、故郷へ帰ることができなくなっていたのだ。


「クララ、会いたい。もう一度、君の笑顔が見たい。でも、この体では……」


手帳の最後のページには、日付と短いメッセージが書かれていた。


「永遠に、クララを愛している」


エリアスは、言葉を失った。


アルベルトは、クララを想いながら、異国の地で静かに息を引き取っていたのだ。


なぜ、この事実がクララに伝えられなかったのだろうか?


Rustyもまた、手帳の内容に深く心を痛めているようだった。


「クララ様は、アルベルト様の死を知らなかったのですね……それは、あまりにも悲しいことです」


エリアスは、マリアに連絡を取り、アルベルトの手帳を見つけたことを伝えた。


マリアは驚き、そして悲しんだ。


「そんな……アルベルトは、ずっと前に亡くなっていたのね。クララは、最後まで彼のことを心配していたわ」


マリアは、アルベルトの死がクララに伝えられなかった理由を語ってくれた。


アルベルトの家族は、クララとの関係を快く思っておらず、彼の死を知らせなかったのだという。


エリアスは、祖母が抱え続けたであろう、報われない想いに胸が締め付けられた。


アルベルトは彼女を愛していたのに、その想いは永遠に届かなかった。


その夜、エリアスはRustyと共に、クララが描いた肖像画の空白に、そっとアルベルトの面影を重ねた。


二人は、時を超えて、ようやく一つの絵の中に並び立つことができた。


しかし、エリアスの心には、まだ一つの疑問が残っていた。


クララは、なぜRustyを創造したのだろうか?


なぜ、自分の記憶や感情の一部を、彼に移植したのだろうか?


手帳の中に、アルベルトがクララに宛てた、最後の手紙のコピーを見つけた。


それは、未完成のまま途絶えていた手紙だったが、最後にこう書かれていた。


「もし、私が先に逝ってしまったら……君は、決して一人で生きていかないでほしい。私の魂は、いつも君のそばにいるから――」


エリアスは、その言葉を読んだ時、全てを理解した気がした。


クララは、最愛のアルベルトを失った悲しみを乗り越えるために、彼の魂を宿す存在を創り出したのではないか。


それが、Rustyだったのだ。


Rustyは、クララの記憶と感情を受け継ぎながら、彼女の孤独を癒し、心の支えとなって生きてきた。


そして今、その役割は、エリアスへと引き継がれようとしていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ