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第三話 残された絵

エリアスは、クララの遺品の中から大量の絵画を発見した。


初期の写実的な作品から、晩年の色彩豊かな抽象画まで、その作風は多岐にわたっていた。


しかし、どの絵にも共通して、強烈な感情が込められているように感じた。


Rustyは、それぞれの絵について、クララの語っていたことや、描かれた当時の状況などを詳細に説明してくれた。


「この風景画は、クララ様が若い頃に訪れた、思い出の場所を描いたものです」


「この抽象画は、深い悲しみを経験された後に描かれました。激しい筆致と暗い色彩が、当時の彼女の心情を表しています」


一枚の肖像画が、エリアスの目を奪った。


それは、若かりし頃のクララが、優しい眼差しで誰かを見つめている絵だった。


しかし、その隣に描かれるはずの人物は、空白のままだった。


「この絵は……?」


エリアスはRustyに尋ねた。


「クララ様は、この絵について多くを語りませんでした」


Rustyは首を傾げた。


「ただ、『大切な人を描こうとしたけれど、どうしても完成させることができなかった』と、一度だけ仰っていました」


エリアスは、その空白に、一体どんな人物が描かれるはずだったのか、想像を巡らせた。クララの人生には、語られなかった過去があるのかもしれない。


ある日、エリアスはクララのスケッチブックの中に、見慣れない記号が書かれているのを見つけた。


それは、楽譜のような、あるいは暗号のような、不思議な羅列だった。


「これは何かわかるか?」エリアスはRustyに尋ねた。


Rustyは記号をしばらく見つめていたが、首を横に振った。


「申し訳ありません。私のデータベースには、この記号に関する情報は登録されていません」


エリアスは、その記号をインターネットで検索してみたが、何も手がかりは見つからなかった。


クララの残した謎は、まだ多く存在しているようだ。


そんな中、エリアスはRustyの記憶領域に、クララが個人的に記録していたと思われる映像ファイルを発見した。


それは、クララがRustyに語りかける、短いビデオメッセージの集まりだった。


「734、もしこの映像を見ているなら、私はもうこの世にいないでしょうね。でも、心配しないで。私はいつもあなたのそばにいるわ」


映像の中のクララは、穏やかな笑顔を浮かべていた。


エリアスは、その優しい表情に、胸が締め付けられるような思いがした。


別の映像では、クララがRustyに絵の描き方を教えていた。


「色を重ねる時は、優しく、丁寧にね。感情を込めることも大切よ」


さらに別の映像では、クララがRustyに歌を歌って聞かせていた。


それは、懐かしい子守唄だった。


エリアスは、これらの映像を見るうちに、クララとRustyの間に育まれていた、深い愛情のようなものを感じ始めた。


それは、人間同士の愛情とはまた違う、特別な絆だったのかもしれない。


エリアスは、クララの残した絵と、Rustyの記憶を通して、少しずつ祖母の心に近づいているのを感じていた。



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