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365日、すべての君に「好き」を告げよう〜17歳の高校生、女神の呪縛を乗り越え試練に挑む  作者: 明けの明星


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4か月目~第4週~合宿の成果

イレジウムの「訪問」があったものの、その後は静かな夜が戻った。

岳は、しばらく寝付けなかったが、やがて夢の中へと入っていた。


翌朝、何やらテントの中で動くものが。

もそもそと、動く。

雄太でも岳でもない。


いち早く気付いたのは雄太だった。


「わっ」

と叫び声をあげた。


その声に岳も目を覚ました。

テントの中を見回すと、そこにいたのは犬のセバスチャンだった。


「おい、おまえ」

そういいながら、セバスチャンの頭を撫でる岳。


「犬、いたんだ」

と雄太。

昨夜は花火に驚いて、寝床から出てこなかったのだ。


「散歩行けってか」

と岳。

岳はリビングに戻り、セバスチャンの散歩セットを持ってきた。


「散歩行ってくるわ」

と岳。


そして、

「お前も行く?」

と雄太に聞いたが、


「いや、待ってるよ」

と雄太。


岳とセバスチャンを見送ると、雄太はまたテントの中で横になった。

そして、


「やわらかかった」

と一人つぶやく。


昨夜の事がよみがえる。

そう、キキョウと、キスをした。


自分から、キキョウに。

そして、キキョウの方からも。


唇を合わせただけ、だけどあれはキスだ。

柔らかい、すべすべとしたキキョウの唇。


思わず自分の唇に手を当てる雄太。

昨日の感覚が、忘れられない。


「わーいいお天気」

テントの外でこんな声が聞こえた。

人の気配がする。


「ねえ、起きてる?」

そして、テントの入り口から、顔がのぞいた。

真帆とキキョウだ。


「起きてるよ」

そう言いながら、慌ててタオルケットで身体を覆う雄太。

暑かったので、ランニングとパンツで寝ていたのだ。


「あれ、岳は?」

と真帆。


「セバスチャンの散歩に」

と雄太が言うと、


「そっか、これは休めないもんね」

と真帆。


「じゃ、朝ごはんにするから、家に入ってね」

そう言うと、キキョウと共に、テントを離れて行った。


その後姿を見つめる雄太。

キキョウの姿が、まぶしい。


狭いテントの中で、服を着る雄太。

そして、使ったタオルケットをきちんとととむとテントを出てリビングに向かった。


室内に入ると、ベーコンの焼けるいい匂いがしていた。

キッチンに立ち、フライパンを持っているのはキキョウだ。

エプロンをしている。


「あ、雄太、雄太。おはよう これ運んで」

そう声をかけて来たのは玲奈だ。


玲奈に言われたまま、皿とコップをダイニングテーブル運ぶ雄太。

すでに、フルーツやサラダがテーブルに乗っている。


「じゃあ、朝ごはん食べるよ」

真帆がそう言い、皆がテーブルに付いた。

セバスチャンの散歩から戻った岳もだ。


岳は玲奈を見る。

その日の玲奈を見るのは、今日初めてだ。


「だれだ?」

と岳。

最近では、その日あっちの世界からの玲奈の本来の姿を、見通せるようになってきていた。

その日の玲奈からは、なんだか暖かい、慈愛に似た優しさを感じていた。


「さ、合宿も最終日。みんなの目標は達成できたかな」

と真帆が言う。


「私は達成、感想文書けたしね」

と、一番乗りで答えた玲奈。


やはり、横顔が優しい。

「誰なんだろう」

岳はそっと玲奈を見ながら思った。


「雄太君は、どうかしら」

真帆が雄太にふった。


「僕は、みんなとこうやって一緒に過ごせて、それだけで十分です。

今まで、オタクとか言われてて、一人でいることが多かったし、

なんか、すごい楽しかった」

と雄太。

本心だろう。


そう言いながら視線が時々キキョウに向けられる、それを真帆はちゃんと見ていた。


「じゃ、キキョウちゃんは?」

当然の流れで真帆がキキョウに聞いた。


「私も、楽しかった。私も、みんなと一緒に過ごすってあんまりなくて。

この学校に転校してきてからそういうこと、少しずつ出来るようになって、

いいな、って思いました」

とキキョウ。


「また、みんな、おいでよね」

と真帆が言い、感想の発表は一旦終わりとなった。


「なんだよ、俺には聞かないで」

と岳。


朝食後は、食器の後片付けを真帆とキキョウ、そして雄太がやっていた。

キキョウの洗ったお皿を、雄太が拭き、真帆が戸棚にしまう。

そんなローテーションだ。


岳と玲奈は、台所仕事からは外された。

全員がいると、狭いから。と言う理由で。


仕方なく、庭でやった花火の後始末をする二人。

二人で、昨夜の花火の燃えカスを拾い集める。


「ねえ、君って」

と岳が玲奈に言う。


「私?私はねフローラ、フィールズのお仲間よ。特技は愛の見守り、なのよ」

とその日の玲奈。


「ちょっと見てこい、って言われちゃっててね、あいつらのこと」

と玲奈。

そしてその視線の先には、二人で同じ皿を持ち、笑っているキキョウと雄太がいた。


「私がの力はあの二人には必要ないようね」

そう言いながら、フローは優しい笑顔を見せていた。




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