4か月目~第4週~合宿スタート
合宿、どうなることやら
「いい、包丁と火は使っちゃダメよ」
「お風呂入るなら、男子は最後よ」
「テント、出しておいたから組み立ててね」
「真帆、頼んだわよ」
とその日の朝、母はいつにも増してお喋りだった。
「はいはい、大丈夫だって」
と真帆が適当にあしらう。
その後も、あれやこれやと多岐にわたり指示を出しまくり、
そして、やっと、
「じゃあ、行ってくるわね」
と言い残し家を出て行った、母そして父。
高級ホテル、「ロイヤル・パレス」のスイートルームに宿泊し、ティナーはホテル内の高級イタリアン、そして、翌朝はホテル自慢のモーニングバイキングの朝食。
母にとっては夢のような時間になるはずだ。
朝から、念入りに身支度をし嬉々として出かけて行った母。
父と並んで歩く姿は、まあ、どこかの仲睦まじいい夫婦と言った感じだ。
出がけに、白猫のチャミを抱きあげ、撫でる母。
「チャミちゃん、今日はね、ママたちはお出かけなのよ。いい子にしててね」
そう声をかけながら。
「にゃご」
とチャミが喉を鳴らす。
そして、チラリと岳の顔を見た。
その目は、「どうだ」と言っているようだ。
両親が出かけてしばらく経っと頃、玄関のチャイムが鳴った。
「こんにちわ」
そう言って現れたのがその日の玲奈だ。
「あれ、一番乗り?」
そう言いながら家に上がりこむ玲奈。
「お邪魔しまーす、今日は楽しみにしてたのよ」
と玲奈。
「おい、おまえ」
と岳が声をかける。
「あのさ、おまえじゃなくて、私は妖精フィールズよ」
と玲奈が言う。
もちろん、傍に真帆がいない事を確認して、だ。
「フィールズっていうんだ」
と岳。
ちょうど、窓ガラスにその姿が映っていた。
愛くるしい容姿のフィールズ。
透けるような白い肌に、大きな青い瞳、白に近いサラサラの金髪が、背中の羽にかかっている。
「あ、おまえ」
とチャミュが近寄って来た。
敵対心むき出しだ。
「まあ、天使さんのチャミュ。今日はよろしくね。私は使命を果たすために来てるんだから、
今日くらい友好的にしてくれないかな」
とフィールズ。
「おい、使命ってのはホントなんだから、協力しろよな」
岳に言われて不機嫌そうにうなずくチャミュ。
「わあ、岳、ありがとう。そう言ってもらえるとがぜんやる気が出るわ」
とフィールズが眼をキラキラさせながら言う。
「なんだよぶりっ子しやがって」
どチャミュ。
「まあ、仲良くしてくれよ。雄太のためにも」
と岳がとりなす。
「え、あんた?」
背後で声がした、キキョウだ。
玲奈の事を見ながら、その場に「固まって」いる。
「なんで、あんたがいるのよ」
とキキョウ。
「あ、今日の玲奈、知ってるの?」
と岳が聞く、少しだけわざとらしい。
「知ってるわよ、こいつはさ、縁結びの力があるとかで誰とでもくっつけるのよ。
いい迷惑な奴よ」
とキキョウが玲奈を指さしながら言う。
「そんなことないわよ、モジモジしてる子の背中押してあげてるだけじゃない。変な言いがかりはやめてよね」
とフィールズ。
「まあ、今日のメンバーじゃあんたの力の出番はない思うけど」
そういうキキョウに、
「ほらね、彼女、ほんとに天然。全く分かってない。今日のターゲットは自分だって」
とフィールズが岳にこっそりとつぶやいた。
そんな話をしている間に、玄関に雄太が到着していた。
「遅くなりました、今日はよろしくお願いします」
礼儀正しく挨拶をして家に上がる雄太。
「これ、祖母からのお土産です」
と包みを差し出した。
どうやら、どこかの郷土土産らしい。
「あら、全員そろったのね。じゃあリビングに来て」
と真帆が声をかける。
リビングのダイニングテーブルに、人数分のプリントが用意されている。
真帆が作った
「合宿のタイムテーブル」だ。
「じゃあ、これからチーム白崎の合宿を開催いたします」
と真帆が声高らかに宣言をした。
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