4か月目~第2週~お小言と言い訳
言い訳も大変だ。
「ねえ、説明して」
とチャミュが語気を強めてキキョウに言った。
「だよね、申し開きはしないとね」
とキキョウが続けて何かを言おうとしたが、
「ねえ、問い詰めるなら私でしょ?」
とその日の玲奈、ヘラが割って入るように言った。
「私から言うね、要はさ、絡んできたイカれた酔っ払い連中をコテンパンにした、それだけよ」
とヘラ。
「魔力を使って、だよね」
とチャミュが冷静に言う。
「うん」
頷くヘラ。
「それが問題だって。あんたなら魔力なんか使わなくても簡単に倒せたでしょ」
とチャミュ。
ヘラ達の戦闘民族は、その名の通り「戦い」には特化しており身体能力も抜群。
こっちの世界で異例の記録を打ち立てるスポーツ選手などは、あっちの世界の「戦闘民族」なことが多い。
「だってさ、学習したところによると、こっちでは女の子ってのはか弱い方がいいんでしょ?
だったら、殴ったり蹴ったりできないじゃん。
もう能力で、ちょちょいってした方が、断然簡単だし早いし。だから」
とヘラ。
「だからって、あんな強力な攻撃魔法、ぶんぶん振り回して、こっちに紛れ込んでる奴らに気付かれるじゃん。
それにさ、あんな優等生の子の家でのお泊りで、なんで夜中に外に出かけたりするんだよ。
こっちだって、危ない場所はあるんだよ。夜中の繁華街なんか若い娘の行く所じゃないよ」
ヘラの弁解にチャミュが言う。
「あらまあ、お堅いねえ」
とヘラ。
そこで、
「まあ、それはそうよね。萌の親にバレてないといいけど。
でもさ、萌だって、反対しなかったのよ、出かけることに。まあ止めなかった、私たちも悪いけどね。
それは認める、反省してます」
とキキョウが口を出した。
「でもさ、ヘラの戦闘魔法なら、気付く奴ってのも稀だとは思うよ。
私の目からしても、ヘラは有能な戦闘員だから」
と続けた。
「そのまれな奴らの動きがねえ」
とチャミュ。
チャミュの話によると、あっちの世界からの潜入者が増えている、というのだ。
女神からの通達で、チャミュが警戒を強めているのだが、
しかし、その多くはチャミュでも気配を感じることができない、高機能な魔力を持つ者たちだ。
「それ、なんで私に言ってくれないの?」
とキキョウ。
自分だって、女神の意思の元、ここにいるのだ。
「キキョウに連絡がつかないって言ってたよ」
チャミュが言うには、キキョウが「音信不通」だと女神が言っていた、というのだ。
「音信不通ですって?なにそれ」
キキョウには全く身の覚えがない。
「昨日の事だよ、急遽通達があったの」
「昨日って、萌の家にお泊りしてて、夜中少しだけレイラタウンに行って、
それだけだよ、特にあっちの世界からの伝達を遮断するようなことはなかったはずなんだけどな」
「それ、調査中だから」
チャミュがため息交じりに言った。
「なんか気付かなかった?キキョウもヘラも」
とチャミュが続けて言う。
そこに、
「なんで、あっちの世界の奴らってのがなだれ込んでんの?」
と岳が口を挟んだ。
「今までにもちょこちょこ、あっちの世界からの侵入者は来てたんでしょ、
でもこんなに騒いでるのはなんで?」
と。
「そりゃあ、岳の力を狙ってるから」
とチャミュ。
「お、やっぱそれか」
と一人納得するように岳が言う。
「俺の力ってそんなにいいのかねえ」
「あっちの世界では喉から手が出るくらいほしいんだよ」
とチャミュ。
「あっちの世界で自発的に作る出せる人はいないのよ。
もともと、トウイチロウ一族の持つ力だったから。だから羨望の的だよ」
とキキョウも言う。
「俺は今まさに、大勢の敵から狙われてるってことだな」
と岳、なぜか自信満々だ。
「そういうことだね、今も脅威の真っただ中だよ。ここでみんながいるから害はないけど」
とチャミュ。
「それでだ、こんな連絡がきている」
と岳が自分のスマホを見せた。
そこには、
「戦闘態勢に入るぞ」
とひとこと、雄太からのメールに書かれたあった
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