4か月目~第2週~萌の家で
女子が集まれば、恋の話でしょ
「ねえ、岳ちゃん、呼ぼうよ」
なんだか陽気に言う玲奈。
「だったら、朝陽の好きな亮とか、あと雄太とかも呼ばない?」
と続けて言う。
「だめだよ、そんなことがパパとママにバレたらどうなると思ってんの?」
と萌。
朝陽も怪訝な顔だ、ただ萌とは違い、
亮を呼びたい気持ちはあるのだが、キキョウが一緒では複雑なのだ。
「亮はキキョウが好き」
もうこれは紛れ間もない事実、朝陽にはわかっている。
「そうだよ、これ以上なんかしたらヤバいでしょ。
女子だけで楽しく過ごそ」
と朝陽が萌に同調して言う。
「だよ、あんたの岳くんとは後でお会いください」
キキョウも言う。
「仕方ないなあ、じゃ、コイバナ、しない?」
と玲奈が言いだした。
「コイバナ?何よそれ?」
とキキョウが玲奈にささやいた。
「頑張って習得してよ」
と笑う玲奈。
萌の部屋に4人がいる。
玲奈と朝陽は萌のベッドに寝転がり、キキョウと萌は床のソファに座っている。
「へえ、女の子って感じの部屋だね」
と玲奈。
ベッドから起き上がった玲奈が部屋を見渡しながら言う。
萌の部屋は2階の奥、さほど広くはないが窓が大きく、日中なら明るいのだろう。
そんな部屋の仲には花柄のカバーのかかったベッド、
白い机と本棚、たくさんの本とぬいぐるみや人形が並んでいる。
壁際に小さなソファとテーブルが置いてある。
そして白い壁には、きれいな風景がが何枚か掛かっていた。
2面ある窓には、レースの付いたピンクのカーテンが付けられている。
「萌のママの趣味だよね」
と、朝陽。
「そうよ、ママが可愛いのがいいわねって」
萌が言う。
いつの間にか、テーブルを囲むように座っている4人。
そこで、話が始まった。
「あんたが言いだしたんだから、最初に話してよ、あんたと岳との馴れ初めでも」
と朝陽が言う。
一瞬、顔がこわばる玲奈。
そこまでの知識があるのかどうかは不明だ。
「でもさ、みんな知ってるよね。私たち1年生の時の文化祭の日から付き合ってるって。
だから、話なんか聞いても面白くないよ」
と玲奈。
ぎりぎりの知識はあったようだ。
「だよね、知ってるよ。玲奈ちゃんから告白したんだっけ?」
と萌。
どうやら、この一件は当時かなりの噂になったようだ。
「だからさ、朝陽ちゃんの話、聞きたいな」
と萌が言う。
「朝陽ちゃん、亮君の事が好きなんでしょ?」
萌にそう言われた朝陽、
「うん。すごく好き。
私ってさ、小さい頃からませてて、誰だれのお嫁さんになりたいーとか言ってたのよ、幼稚園の頃。
小学校でも、同級生に告白したし。中学では、付き合ってた子もいた。
でも、亮の事を思う気持ちとは違うって、今頃になって気付いたの。
亮の事は真剣に好き」
朝陽が真面目な顔をして話した。
まだ、酒が残っているのだろうか、自分の気持ちを正直に話す朝陽。
「だからね、亮には近いうちに告白する。
ねえ、キキョウ、あなた、誰が好きなの?亮なの?雄太なの?それに岳とも親密だよね。
もしも亮に気がないんだったら、思わせぶりなことはやめて」
とキキョウに詰め寄るように言う朝陽。
「思わせぶりって、そんなつもりじゃあ」
とキキョウ。
その側で玲奈が笑いをこらえている。
キキョウが「思わせぶり」だって、と。
キキョウも朝陽に言われたことに驚いていた。
自分が、男子に思わせぶり、
あっちの世界にも、もちろん恋愛や色恋沙汰はあるのだが、キキョウには無関係だった。
「そもそも、私は誰の事も好きになったことはない」
と心で思うキキョウ。
でも今はそれでは収まらないだろう。
「私はね、海外に住んでいた時のクラスメイト、ヴァレンの事が忘れられないの」
とキキョウ。
「ヴァレン?」
萌と朝陽が同時に声を上げる。
「ほら」
と自分のスマホの画像を見せるキキョウ。
そこには、金髪の美青年とキキョウのツーショット写真が映し出されていた。
「えー、何このイケメン」
「遠距離恋愛してるのねー、知らなかったよ」
と口々に言う朝陽と萌。
玲奈はシラッと、
「何言ってんのよ、これ、アイドルのヴァレン・ティーノルじゃん」
と。
画像のイケメンはあっちの世界の今大人気のアイドルスターなのだ。
もちろん、キキョウの知り合いでも、相思相愛の仲でもない。
キキョウが慌ててあれこれ知識を習得してところ、こういう言い訳が一番良い、との判断で、
力を使い、こういう事をでっち上げたのだ。
「あーあ、あとは知らないよ」
と玲奈が笑って言った。
「大丈夫よ、ここの子たちは知らないしね」
とキキョウ。
「申し送りに書いておかないと。キキョウがヴァレン・ティーノルと遠距離恋愛してると言ってるってね」
と萌がキキョウにつぶやいた、その時。
「え、何?」
と萌。
萌のスマホに、新着のニュースが表示されたのだ。
「深夜のレイラタウンで、集団で失神。
男性数人が意識不明、喧嘩か?」
と。
「あ、まずい」
と玲奈が小さな声で言った。
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