4か月目~第2週~繁華街での出来事
深夜の繁華街で騒ぎ?
「もう帰るって言ってんだけど」
と玲奈が言う。
男たちの真ん中で仁王立ちになりながら。
時刻はつい先ほど深夜0時を過ぎた。
「おいおい、そりゃあないだろう、なあ、ねえちゃん」
とガラの悪い男たちが難癖をつけてくる。
「どいてよ」
それにも動じず、立ち去ろうとする玲奈。
玲奈の肩に伸ばされていた、男の手を荒っぽく振り払う。
「あんた」
とキキョウ。
この「玲奈」は、兵士だ。
戦うことに特化している民族。
戦うことが大好きな民族。
「あんた、ヘラじゃないの?」
とキキョウ。
「前にも来たわよね?」
そうキキョウが聞くと、
「そうよ、岳ちゃんにまた会えるなんて嬉しいわね。
その前に、こいつら何とかしないとね」
そういう、ヘラと呼ばれたその日の玲奈。
「おい、この子たちは帰りたいって言ってるだろう」
強い酒をジュースと偽り飲ませたくせに、前任気取りで言う若い男たち。
「おお、お前ら、手も出せないダメ男が」
ガラの悪いやつらはからかうように言う。
「なんだと」
「ほお、やるんか」
大学生風とガラの悪い奴らが言い合いを始めていた。
お互い酒の入った者同士、紳士的な話なんかできるわけがない、
すぐに、胸ぐらをつかんだり、こずいていたり、乱闘騒ぎになりそうな勢いだ。
「まずいよ、これ」
とキキョウが言う。
しかし、視線はヘラに向けられていた。
「こいつ、暴れそうだ」
とつぶやくキキョウ。
それとほぼ同時に、ヘラが素早く男たちの間を通って行った。
すると、次々と男が倒れこんでいく。
「なんだ、こいつは武術でも使ったのか」
うずくまりながら、ガラの悪い男が言う。
「行こう」
玲奈を引きずるように、男たちから引き離した。
朝陽と萌は、呆然としながら立ち尽くしている。
それから、なんとかタクシーに乗り込み、萌の家まで戻った。
まだ、ふらつきながら鍵を開けて家に入る萌。
続いて、3人も。
リビングから電話のベルが鳴り響いているのが聞こえた。
あわてて、電話を取る萌。
「まあ、萌ちゃん。もうずっと電話をかけていたのよ、なんで出てくれないの?」
萌の母の声が受話器越しに聞こえてくる。
興奮しているかのような、大きな声で話しているようだ。
「あの、あの、おしゃべりに夢中で」
しどろもどろに言い訳をする萌。
しかし、口調がどうもおかしい。
「ちょっと変わって」
とキキョウが萌から受話器を受け取る。
そして、
「あの、私、萌さんと同級生の都留田キキョウと申します。
今日はお言葉に甘えて、お邪魔させていただいています。
萌さんが色々と準備をしてくれていたのですが、私たちがよく食べるもので、
追加のお菓子をコンビニに買いにいっていだんです。
萌さんは、お母様からの電話をきにしていたのですが、私たちだけじゃ、コンビニの場所がわからないから、無理に連れ出してしまって」
とスラスラと話している。
「ご心配をおかけして、申し訳ありません。
コンビニに行っただけで、あとはおうちで女子会をさせていただいてます」
とキキョウ。
その後、また萌が電話に出たが、先ほどまでとは打って変わって、
穏やかに話していた。
電話を切ると、
「キキョウちゃん、ありがとう」
と萌が言った。
「ママがね、しっかりしたお嬢さんね、萌ちゃんにあんなお友達ができてママも嬉しいわ」
だって、と萌。
どうやら、電話の件は何とかなりそうだ。
「家の固定電話でよかったねえ、テレビ通話とかだったら顔真っ赤なのがばれちゃうよ」
と笑う朝陽。
だいぶ冷めたとはいえ、まだ「酔っ払い」だ、もちろん萌も。
「キキョウさんはと玲奈ちゃん、なんともないのね、もしかしたら酒豪なの?」
と萌。
「だから、ここでいう酒って」
そう言いかけたキキョウを玲奈が肘でつつく。
「ま、家では晩酌してるからね、うちは。お父さんのお供よ。ないしょね」
と玲奈。
「あ、外国では食事の時にはアルコールがつきものだから」
と慌ててキキョウも言う。
それから4人は順番にシャワーを使い、持参した部屋義に着替え萌の部屋で
くつろぎはじめた。
時刻は深夜、かなり遅い。
「そろそろ効いてきたようだね」
とキキョウが言う。
「酒を分解する術ね。なんで即効性効かせないのよ。こんなに時間かけて」
と玲奈。
「だってさ、そんなことすれば身体へのダメージあるでしょ。
あの二人は生身の人間なんだよ」
とキキョウ。
「へえーあんたがそんなこと、気にするなんてね」
と玲奈。
「なによ、ひとのこと冷酷非道みたいに言わないでよ」
そういうキキョウに、
「ま、噂だったってことだね」
と笑う玲奈。
ーそうよ、私は冷酷で、無慈悲な女神ー
(候補だけど)
とキキョウは思う。
胸が苦しくなるような気持になりながら。
「ねえ、ねえ、岳ちゃん、呼ぼうよ」
その時、キキョウの憂鬱を打ち砕くかのように、玲奈が陽気に言った。
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