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365日、すべての君に「好き」を告げよう〜17歳の高校生、女神の呪縛を乗り越え試練に挑む  作者: 明けの明星


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4か月目~第2週~夜の外出

夜の街へ繰り出す、女子4人

「ねえ、レイラタウンに行かない?」

と言う朝陽。


レイラタウンというのは、萌の家のある最寄駅から数駅先にあるいわゆる

「繁華街」だ。


日中はショッピング目当ての人々で賑わうが、夜になると一変し飲食店のネオンがきらめく

怪しげな街となる。


路上で音楽やダンスをする若者も多く、それを見物する人たも大勢いる。

酒とたばこ、そして活気が入り混じる街と化す。


「路上ライブやってるし、観に行こうよ」

と朝陽。


「でも、危ないんじゃ」

と萌がしり込みしながら言う。


「遠くからちらっと見るだけだよ。それにまだそんなに遅い時間じゃないし。

夜、出歩けるなんて滅多にないんでしょ?」

と朝陽が萌に言う。


「そりゃあそうだけど」

と萌。

萌はなんだか興味があるようだ。


「繁華街?路上ライブ?」

キキョウはというと、知識の習得に懸命だ、追いついていないようだ。


「そうっか、それもそうね」

と萌が言う。


「行ってみようか?」

萌の言葉に驚く玲奈。


「え、行くの?」

と思わず声が出た。


午前0時は、玲奈を交代する時間だ。

あまり、変な場所にはいたくない。

これが玲奈の本音だ。


「でもね、0時にはおうちにいないと。ママから電話があるから」

と萌。


なんでも、お友達に泊まりに来てもらって、お喋りして夜更かしするのは認めるが、

22時を過ぎたら外出は禁止、深夜0時には電話で在宅を確認されるのだとか。


「いま、なんかしたでしょ」

とキキョウが玲奈にささやいた。


「まあ、ね。

22時を0時に変更しちゃったかな」

と笑う玲奈。


「そっか、でも電話出られるじゃない、レイラタウンにいても」

と朝陽が言うが、


「あの、電話はね、家の固定電話にかかってくるのよ」

と萌が答えた。


「今時、固定電話?」

と朝陽が言うが、これでは家にいないと、電話には出られない。


「あんたも行きたいの?そのレイラタウンに」

とキキョウが玲奈に言った。


「そうだよ、なんかワクワクしるじゃない。

デンジャラスエリアって言われてるんだって、そこ」

と玲奈、すっかり行く気満々だ。


「わかった、じゃあ0時には必ずここに戻るってことで。

今から行けば、1時間くらいいられるよ、レイラタウンに。

それだけいれば充分だよ」

と朝陽が言い、みな出かける支度をした。


夜のレイラタウン、すでに大勢の人がいる。

どこか、入るお店を探している様な会社員のグループや、道端でたむろする若者たち、

共通しているのは、そこにいるほとんどが「酔っ払い」だということだ。


4人が物珍しそうに、周囲を眺めながら歩いていると、歌声が聞こえて来た。

路上でギターを弾きながら歌う若者。

その前で立ち止まる朝陽。


「この人よ」

と言いながら、手拍子を始め聞き入っている。


「この人目当てなのね」

と玲奈。

頷くのは萌だった。


路上ライブの歌声に聞き惚れる朝陽、いつしか他の3人もリズムを取りながら聞いていた。

数曲披露してライブは終わった。

朝陽は一言二言、歌い手と話す、頬を紅潮させながら。


「ご満足したかな」

とキキョウ。

この状況の習得もなんとかできているようだ。


「いいでしょ、この人の歌」

夢見るような瞳で朝陽が言う。


「はいはい、ぞっこんなのね」

と玲奈がからかうように言うが、朝陽は聞いているのかいないのか、

ただ、大きくうなずくだけだ。


まだ夢見心地の気分でいる朝陽を連れて、人でにぎわう路地を進む。

すると、


「ねえ、これから飲みに行かない?」

と数人の若い男が声をかけてきた。


「え?」

と立ち止まってしまった萌。


「無視しなよ」

と玲奈が萌の手を引っ張るが、


「その子は乗り気じゃん」

と男の一人が萌の前に立ちはだかる。


「行こうよ、行こう」

男たちがはやし立てるように言いながら、萌を連れて行こうとする。

慌てて追いかける3人。


そしていつの間にか、地下につながる階段を降りそこにあった扉の奥へと進んでいた。

薄暗い店内、カンター席がいくつかある、小さなバーのようだ。


「ねえ、マスター、何か適当に。この子たちにも」

と男の一人が言う。常連のようだ。


マスターと呼ばれたカウンター奥にいた男性が、

その男を呼び寄せる。


「あの子たち、未成年じゃない?」

と。


「騒動はごめんだ。連れてくるなら大人の女性にしろ」

そう言われて、渋々来た道を引き返す男たち、そして萌達4人。

路上に出ると、街灯の下でまじまじと4人を見る男。


「なんだよ、そんなにガキだったのか」

と言いながら。


ここに来るとき、朝陽と玲奈は多少のメイクをした。

しかし、萌とキキョウはスッピンだ。

どう見ても、「大人の女性」には見えないのだが、暗がりではよくわからなかったようだ。


「じゃ、ここで外呑みでもしよう」

と男が言いながらいつのまにやら用意した紙コップに何やら飲み物を注ぐ。


「きみたち、高校生?何歳だよ?」

と聞かれ、


「みんな、高2だよ、私は17歳」

と朝陽が答えた。


男たち、見た目はさわやかな大学生のようだ。

怪しい人物には見えない。

優しい口調で、朝陽はなんだかまんざらでもない様子だ。


「きみも高2なの?」

とキキョウに聞く男。


「そうよ」

とキキョウが答えると、意外そうな表情になる男。


「大人っぽいでしょ、それにすごい美人だし」

と朝陽が口を挟む。


「まあ、未成年じゃ、ジュースで乾杯かな。遅くならない間に帰りなよ」

と男たち。


男に促され、飲み物を口に運ぶ。

その中身は。


「これって」

とキキョウと玲奈が顔を見合わせた。


「ツヨイサケ」

ってやつだよねと暗黙のうちに了解する二人。


あっちの世界(ファンタジーワールド)じゃ、水だけどね」

と言いながら。

見ると、萌はすでに座り込み、朝陽はよたよたと男にしなだれかかっていた。


「どうしちゃったの?」

とキキョウ。

この状況の習得が全く間に合わない。


「「ツヨイサケ」ってのは飲むとヘベレケになるらしいよ。

人間の間では」

萌の背に手をやりながら玲奈が言う。


「でもそろそろ戻らないと、時間が。タクシーで戻ればぎりセーフよ」

と続けた。


「きみたち、強いんだね」

とさわやかな笑顔で男が言う。


「どう、こっちもイケるよ」

と今度は瓶ごとキキョウと玲奈に差し出した。


「あー、喉乾いてるから美味しいわ」

とその瓶を一気に飲み干すキキョウ。

玲奈も、既に飲み終えているが、ふたりともケロリとしている。


「そろそろ私たち、帰るわね」

そう言いながら、すこしずつ男たちから遠ざかろうとする


「まだ平気なのか?お前たち、なんなんだ」

と男たちがつきまとう。


男たちも、かなりの量の酒をのんでいる、

そろそろろれつが回らないようだ。


「気付けに使うかなり強い酒だぞこれ」

とつぶやく男。


「だって水じゃないこれって」

と言うキキョウを、引きずるように、


「黙って、ここじゃこれは酒っていうのよ。これ以上は関わらない方がいいわ

あの二人、連れて帰るわよ」

と玲奈、いやブルー・ヴェスタが言った。


何とか萌と、朝陽を歩かせて通りでタクシーを拾おうとするブルー。


しかし、男たちが千鳥足で追いかけてくる。


キキョウもブルーも、朝陽と萌を連れてでは、素早く歩くことが出来ない。


そこに、


「おい、おい、にいさんよ、おじょうさんたちが嫌がってるじゃないか。

なんなら、俺たち来ないか?」

と別の男たちが声をかけていた。

こちらはなんだがいかつい男たちで、人相もよろしくない。


男たちがにらみ合いを始めた、その時。

「もう帰るって言ってるでしょ」

と玲奈が仁王立ちで言い放った。


ほんの少し前、時刻は0時になった。

今ここにいるのは、ブルー・ヴェスタではない。

この日の、「玲奈」だ。

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