4か月目~第2週~夏休み突入
夏休みです
「あのさ、こいつ。根はいいやつなんだけどすぐに拗ねちゃうんだよ。
でも、岳を守護天使であることに、とても誇りを持っているから、
まあ、よろしく頼むよ」
そう言ったのは、
週気にの翌日の玲奈、チャミュのいとこのミーファだった。
自分が生まれた時から、自分の事を知っていた。
この、見た目はどう見ても幼児でしかない、このチャミュ。
そう思うと少し気恥ずかしいが、それでも、
「まあ、これも縁ってやつか」
と妙に納得している岳だった。
初夏にしては暑い日が続くある日の朝、
岳はいつも通り、セバスチャンを連れて散歩に出た。
チャミュも一緒だ。
この時は、猫の姿ではなく天使のままだが、他の人には見えていないようだ。
すれ違う、同じく散歩中の犬がワンワンと騒ぐだけだ。
セバスチャンはというと、チャミュの存在をしっかりと認識しており、
チャミュの顔をペロとなめたり、背中に乗せてやったりしていた。
いつもの散歩コース、玲奈の家の前にきた。
セバスチャンが玲奈の家の敷地沿いの生垣に顔を突っ込む。
チャミュも一緒に覗き込む。
庭からは
「やあ、きみはセバスチャンだね、それからチャミュ、天使だね」
と玲奈の声が聞こえた。
岳が庭をみると、制服を着た玲奈がいた。
その日の玲奈は、たぶん初めて会う相手だ。
岳はその気配で、以前玲奈としてここに来たことのがあれば、それを感じることができるようになっていた。
「この子は、やはり女神の血筋だね」
と岳がつぶやくと、
「見極める能力、アップしたね」
とチャミュ。
正解だったらしい。
その日は岳の高校の1学期の終業式だ。
試験が終わり、やうs身が続いていたが明日から晴れて「夏休み」だ。
いつものように玲奈と駅で待ち合わせて登校する。
電車で窓ガラスに映る玲奈は、女神にありがちな金色の髪に透けるような白い肌、
とても神秘的な美少女だった。
今まで、何人かの「女神の血筋」を持つ者が玲奈としてやって来た。
皆同じような顔立ちだった。
ただ一人、キキョウを除いて。
「やっぱりあいつは少し違う」
キキョウはどちらかと言うと和風な顔立ちだ。
いま、都留田キキョウとしてここにいるその姿は、本来のキキョウだ。
少し茶色がかった髪、目鼻立ちははっきりしていて、長いまつげに薄い色の瞳。
ひいおばあちゃんが「西洋人」ということにしてあるが、それがとても自然に聞こえる。
「ねえ、岳」
玲奈に呼ばれた。
「もう、何考えてたの?」
と。
「夏休みって楽しいんでしょ。いいなあ、岳は。
あっちの世界ではそんなのないから」
と玲奈。
「きみは女神なの?」
と岳が聞くと、
「もちろん、見習いよ」
と玲奈。
女神の血筋であっても、女神に昇格するのはとても難しいのだそうだ。
「私はね、検定試験に5回も落ちてるのよ」
玲奈が言う。
「女神になるのって試験があるの?」
と岳、キキョウからそんな話は聞いたことがない。
「私は一般の見習いだからね、仕方ないの」
そう言う玲奈に、
「そっか、じゃ次は頑張って。試験はいつ、年に1回となの?」
「ありがとう、次こそは合格するわ。試験はね、ここでの時間で言うなら100年に一度よ」
やはりあっちの世界の時間軸、わからない、
岳はそう思った。
教室に着くと、雄太が待ち構えていた。
「おい、岳、大丈夫だったか?」
と小さな声で言う。
この前の襲撃の事を言っているのだ。
「キキョウさんが言うには、リアルとゲームの融合だとか。
悪い奴らをゲームに取り込んで、データを入手するってアプリ作ったんだよね」
と雄太が言う。
キキョウは雄太の能力をうまく利用している
「ゲームアプリなんか作れるんだ」
岳が言うと、
「そうだよ、ゲームの作成、前からやってて。
今回、キキョウさんのアドバイスで新しいのを作成中なんだ」
と雄太。
「出来上がったら、4人で共有しよう。これもキキョウさんの意見だ」
雄太がまだ開発途中の画面を見せながら言う。
キキョウには何かアイデアがあるようだ。
それにしても、雄太はいつの間にが自分を「岳」と呼ぶようになっている。
それに教室でも、こんなに話しかけてくる。
今までの、雄太とは少し違っていた。
「夏休みの計画、立てようよ」
そう言う雄太、かつてのおどおどした少し暗い様子はそこにはなかった。
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