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365日、すべての君に「好き」を告げよう〜17歳の高校生、女神の呪縛を乗り越え試練に挑む  作者: 明けの明星


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4か月目~第1週~チャミュの使命

「あのね、チャミュはね」

とキキョウが話し始めた。


初めて、岳の力を狙う者が現れたその夜、あっさりと撃退したが、

岳がチャミュに言ってしまった、ひとこと。


「役に立たない奴」


そう言われたチャミュはすっかり拗ねていじけている。

キキョウがとりなしても、その日の玲奈、いとこのミーファが何を言ってもチャミュの機嫌は戻らない。


「だって、だって、岳が、僕を嫌いって言ったんだもん」

小さい声でそう言い、不貞腐れるチャミュ。


「嫌いとまで言ってない」

岳はそう言うが聞く耳を持たない。


「こうなるとめんどくさいんだよ、コイツ」

とミーファが言う。


「岳がごめんなさい、しないとダメだなこりゃ」

と続けた。


「こめんなー」

諭された岳が言うが、


「ちっとも気持ちが伝わらない」

そう言うと、ますます拗ねるチャミュ。


「岳は僕の事なんか」

そう言いながら、わんわんと泣き始めた。


「仕方ないなあ、岳に同情でもしてもらうか」

とミーファ。


隣で頷いたキキョウが、

「じゃあ、話しちゃうよ」

というと、語り始めた。


「チャミュはね」

と。


ーチャミュは、長い長い間、きみの誕生を心待ちにしていたんだー

とキキョウが言う。


「待ってた?どういうこと?」

と岳。


「いつか生まれてくる、力を承継するもの、その守護天使、まあ世話係に任命されたのが天使のチャミュ。

こっち世界で、女神の血筋を引く者が生まれるたび、承継者かどうか調べていた。

何度も何度も。なかなか承継者は現れなくてね。皆諦めかけていた。

承継者はもう現れないのではないのか、って。

それでも、チャミュはひとりずっと探し続けたんだ。

そして、やっと見つけたのが、岳、あんただよ。

岳が生まれてから、ずっとチャミュはあんたの守護天使だった。

小さい頃、なんか覚えてない?」

そう言われた岳が昔を思い出す。


「そう言えば」


ー小さい頃、なぜか危険を回避することができたー


幼稚園の頃だろうか、友達と手をつなぎ道を歩いていた。

その時、靴が脱げてしまい一人立ち止まった。

数歩先を行く友達の横を走り抜けたトラックが、ちょうど水たまりを通り

大きく水を跳ね上げる、そして友達に水がまともにかかりずぶ濡れになった。


ある時は、家族で出かけるとき、駅に着くとホームに電車が入って来た。

父や母は、急がないで次を待とう、と言ったが岳がどうしてもといいはり、

家族で駆け込み乗車をした。

すると、次の電車で車両故障があり、駅でずっと停車することになった。

岳たちの電車はかろうじて、ダイヤ通りに動き目的地に行くことができた。


そんな些細なことだが、危機を回避できたことが何度もあった。

それは、


「チャミュが守っていたからだよ」

とキキョウ。


「チャミュはね、きみと出会うのを心待ちにしていたんだよ。なかなか現れない承継者、守護天使を任命されながら任務に就くこともできなかったチャミュだから、君が誕生したときはどんなにうれしかったか、わかる?」

とミーファが言った。


任務を与えられながら、それは果たせない。

あっちの世界(ファンタジーワールド)では大変な屈辱なのだそうだ。


「そうなんだ」

岳が感慨深げにうなずいた。


「俺の誕生を待ってた、ってどれくらい?」

と聞く岳。


「チャミュは私と同世代よ」

とキキョウ。


「千年単位か。見た目はガキなのに」

と岳。

確かにチャミュは幼い子供のような外見だ。


「それ言ったら、また泣くからやめてよ」

とミーファ。


「だからね、チャミュは」

そう言いかけたキキョウを遮るように、


「チャミュ、ごめんよ。チャミュに会って、なんだか懐かしい気がしていたのは

俺とお前、ずっと前から繋がっていたからなんだね。

役に立たないとか言って、ごめん。

チャミュがいなかったら、今頃」

そう言うと、うずくまるチャミュの頭にそっと手を置く岳。


「いなかったら、何度も水しぶきがかかり、電車が遅れて目的地に付けず、

そんな感じだったかな」

と岳は思ったが、口には出さずにいた。


「でも、なんで昨夜の襲撃ではチャミュは攻撃をしなかったの?」

と岳が聞いた。


「チャミュはね、岳の成就の力を守り、その力と取り出すことにすべての能力をつかっているんだよ、

玲奈への試練を見守るってのもあるけど、それも力に関することだからね。

だから、攻撃する能力までは余力がないんだよ」

とミーファが言った。


「まあ、もともと天使は戦闘員ではないんだけどね」

とキキョウ。


「ということは、この先、俺が成就の力を持ち続ける以上、チャミュとは離れられないってことだね」

と岳。

そう言いながら、再度チャミュの頭を撫でた。


「頼むよ、相棒」

岳がそう言うと、


「ほんとに相棒?」

とチャミュがやっと顔を上げた。


「僕、岳の相棒?」

と念を押すように言うチャミュ。


「そうだよ、これからもよろしく、チャミュ」

と岳が言う。


「そっか、相棒か。よし、僕に任せろ」

とチャミュがやっと笑顔で立ち上がった。


「ほんと、こいつが拗ねるとめんどくさい。

この先も大変だね、岳」

とミーファがあきれたように岳に言った。


「そのさっぱりとした言い方、いいねえ、好きですよお、玲奈」

と岳。


「お、ちゃっかりと試練はクリア。要領よくなったね」

ミーファがそう言いながら笑った。




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