4か月目~第1週~敵
敵襲、どうする岳?
「チャミュ?」
岳の部屋に姿がない。
隠れているのか?
声をかけるが返事はない。
いつもなら、毎晩この部屋で眠るチャミュ。
たまにリビングで母や真帆に捕まっているが、隙を見て岳の部屋に入り込む、これが日常と化していた。
日が変わる直前に来た、玲奈からのメールも気になる。
「何か起きているのか」
外に様子を見に行きたい衝動に駆られる岳。
しかし、家には両親も姉の真帆もいる、そして庭には犬のセバスチャン。
誰にも知られずに、家から出るのは難しそうだ。
仕方なく、スマホを握る岳。
そしてキキョウにメールを送る。
チャミュの姿が見えない事、玲奈から意味深なメールが来たことを伝えた。
しかし、そのメールには反応がない。
普段なら、「眠っているんだろう」くらいにしか思わないが、その日は何故が胸騒ぎがする。
何かが起きている、そう直感していた。
カーテンの隙間から外を見るが、特に変わった様子はない。
庭のセバスチャンも静かだ。
しかし、岳はこの変にソワソワする感覚に違和感しか感じない。
その時、
ピロン、とスマホからメールの着信を知らせる音がした。
見ると、キキョウからの返信だ。
「いまさ、とりこみちう」
と一言。
なんだこれは。
意味が分からん。
考え込む岳。
が、何かが起きている、これは確信へと変わった。
しばらくして、再びスマホに着信音が。
「ごめんねー、取り込んでてさ。今、チャミュと一緒に応戦中なのよ。外みて」
とキキョウからだ。
部屋の窓を開け、身を乗り出し外を凝視する。
が、やはり辺りは深夜の静けさで、街灯のあかりだけが周囲を照らしている。
いや、よく見ると。
小さな光が動いている。
岳の目が暗闇に慣れたせいか、その小さな光がいくつもあることに気が付いた。
そして、静寂を破るように、
「ミャアーー」
と猫の鳴き声が響いた。
数匹の猫が争うような叫び声だ。
バタバタと動物の走るがしたと思うと、
「ミャア」という名季語wが遠ざかる。
岳の目に、黒い影が走り去って行くのが見えた。
と、同時に部屋の窓、ちょうど岳が外を覗いていたその窓に、何かが飛び込んできた。
黒い球体だ。
その球体を追うように、白猫チャミが窓から入って来た。
「あーびっくりした」
そう言いながら天使のチャミュに戻る。
「それはこっちのセリフだ」
と岳。
「何が起きたんだ?」
とチャミュに問い詰める岳。
すると、
「我が話そう」
と黒い球体から声がした。
「お前は、イレジウム?」
と岳。
そこにいた黒球体、それはキキョウの使い魔のイレジウムだ。
「おお、そうだ。キキョウ殿の意のままにこれとともにあらん」
とチャミュを見ながら言うイレジウム。
実際、イレジウムは球体であり「目」は存在しないのだが、そのものの言い方で、
何故かそう感じられてしまう、そんな威力があった。
「そっか、でもな、お前、普通に喋れないの?」
と岳。
イレジウムのその話し方はどこか、堅苦しくまるで「時代劇」だ。
「そんなこと言っても、イレだってここの言葉は学習しつつ話してるんだからさ。
大目に見てやってよ、わかりにくいところは僕が通訳するから」
とチャミュが言うと、
「かたじけない」
すかさず、イレジウムが言った。
「で、ここにはキキョウは来ていないんだね?」
そう言う岳に、
「ここはイレに任せて、キキョウ本人は家にいるよ。
彼女の得意技だよ、遠隔操作は」
チャミュが言うには、「異変」を感じたキキョウがイレジウムを偵察に行かせた、
そして同じく異変を察し、外に出ていたチャミュと落ち合った、ということらしい。
「で、その異変って何?」
との岳の問いに、
「だよね、それ知りたいよね」
とチャミュ。
チャミュは次の言葉を出すのを躊躇っているようだ。
それを見たイレジウムが、
「お前を狙う者が現れた」
とはっきりと伝えた。
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