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3日目~これからどうする

女神伝説?

見つけることの出来なかった廃墟のような教会。

そして、白崎町の女神伝説。

あの老人。

岳が教会の話をした途端、あきらかに形相が変わった。


「もう少し、話をすればよかった」

家まであと少しというところまで帰ってきたところで、岳は少しばかり後悔していた。


「手掛かりになったかもしれなかったのに」

と思いながら。


その日の夕食、食卓には母と姉、真帆と岳。

たわいもない話を、ほぼ真帆がしている。


「あのさ、白崎町の伝説って知ってる?」

真帆の話の合間にやっと岳が口を挟むことができた。

真帆は歴史が好きで、小学生の頃この地域の歴史を調べて夏休みの自由研究にしたこともあるのだ。


「え?白崎町?3つ先の駅降りたところだよね。そうだね、女神様伝説あるよ。昔、って大昔ねアマテラスの頃よ。女神さまがこの地にやってきて地元の農民と恋仲になった、って言い伝え。

あの白崎駅前、今ではショッピングモールとか住宅地だけどあのあたりは大きな森だったんだって」

と真帆が言う。


「よく知ってるね」

と岳。


「そりゃ、歴史を語らせたら」

そういいかけた真帆に、


「じゃ、こちそうさま、ありがと姉ちゃん」

と言って言葉を遮り、食卓を立って自室に戻った。


部屋に戻ると、ネットで調べた。

白崎町 女神 伝説 

だいたい、真帆の話であっていた。

あのあたりには女神伝説がある。


「日曜日か、聞きに行ってみるか?」

とあの集会室でもらったチラシを見ながらつぶやく岳。


でも、あの廃墟の教会の事を聞いた時の尋常ではない様子。

俺があの教会に関わったことを知られない方がいいのかもしれない。


岳はあの老人に、あの日あったこと、を話す気分にはならなかった。

信じてはもらえない、そう気持ちよりも厄介なことになりそうだ、そう言う思いの方が強い。


そんなことを考えつつ、渋々と宿題を済ませる。

ここで学業を疎かにして成績が下がるようなことがあれば面倒だ。

父親に塾に行かされるかもしれない。


そんなことに時間はとられたくない、「玲奈」に毎日好きだと言わなければいけないのだから。

少しでも玲奈と一緒にいられる時間を増やしたい。


「それにしても、今日の玲奈、かわいかったな」

と岳。

電車の窓に映った美少女。


「昨日の、ゲテモノめこれで普通だとか言っちゃって。

あっちにだって美人はいるんじゃん」


今日は思いがけず朝のうちに「好きだ」と告げることができた。

玲奈に会う時間が少なった、少し残念だ。


「今日はお疲れさま。今日の君にはまた会えるのかな」

とメールをしてみた。


しかし、岳の送ったそのメール文に「既読」と付くことはなかった。

時刻は深夜0時を過ぎた。


壁にかけてあるカレンダーに×を書き加えた。

これで2つ目のバツ印、まだ「ふつか」しかたっていないのだ。


「あと、363回? ふぅ、夢なら覚めてくれ」

そんな独り言を言いながら岳は眠りについた。


翌朝、いつもの駅の入り口。


「おはよ」

そう言って現れた玲奈。どうやら機嫌が悪そうだ。

なんとなく気を使いながら、改札を通り電車を待つ岳。


「言ってみて」

と玲奈が言う。


「言う?」


「そう、言って」


言え、と言われて出てくる言葉は、


「玲奈、好きだ」

これしかない。


言えた。

まだ玲奈の本当の姿も見ていないというのに。


「よかった。今日はもうクリア。今夜は家族で焼肉食べに行くんだって。

だから、キミの試練のために居残りなんかしたくないでしょ。

だから、今日は少しだけオマケしたんだよ」

と玲奈。


「オマケ?」

と岳が言った時、電車はちょうど地下にもぐった。

窓ガラスに映るのは、昨日の子とはタイプが違うがきれいな女性だ。


「美人、多いんだね、キミたちの世界って」

と岳。


「そうね、私たちの種族は多いかも」


玲奈の話によると、あちらの世界、ファンタジーワールドには多数の種族がおり、

それぞれ容姿が全く異なるのだとか。


「あっちのことそんなに喋っていいの?」

岳が心配になって聞いた。


「まあ、別に制限されてないからいいんじゃない? 岳だって聞いてないでしょ、あれしちゃだめ、これしちゃだめって」


「じゃ、同じ人がまた来るってあるの?」


「まあ、そんなこともあるんじゃない?こっちが気に入ったって物好きもいるだろうから」


「キミはなんで選ばれたの?」


「うーん、くじ引きみたいなものかな。でもさ女神の命令だもん、いやだとは言えない」


気付けば、岳と玲奈は学校に向かう道を歩いいた。

本当の姿が見えている時じゃなくても、こんなに話ができるんだ。

あちらの世界の誰かと。


「名前、なんていうの?本当の」

と岳が聞くと、


「それは言えない、かな。これは禁止事項なの。

ま、そうでない場合もあるから、毎日聞いてみたら?誰か答えてくれるかもしれないよ」


ここにやってくる「玲奈」は毎日誰かが「玲奈」としてここにいる、そのことを認識しているのか。

岳は今日の「玲奈」からいろいろなことを探ろうとしていた。


しかし、

「ねえ、キミ。なんかいろいろ聞いているけど、なにがあってもキミがあと363日がんばらないと、

キミの玲奈はもどってこない。これは変わらないよ」

と玲奈に言われてしまった。


「じゃあ、君たちの世界に囚われている玲奈はどうしているの?無事なの?元気なの」

ずっと聞きたかったこと、一番気になっていたこと、やっと声に出した。


「ごめんね、それも言えない。10人目までがんばって、いいことがあるから」

玲奈は同情したような顔をしながら言った。


「10人目?どういうことだ」


「女神の配慮だよ、楽しみにしていて」

と玲奈。


「なんだよ、人参ぶら下げたってか、なんなんだ、まったく」

岳は大きなため息をつくのだった。


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