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365日、すべての君に「好き」を告げよう〜17歳の高校生、女神の呪縛を乗り越え試練に挑む  作者: 明けの明星


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3か月目~第2週「レインボーファンダジー」

ゲーム大会が始まった!

「ここは」

表情がこわばるキキョウ。


ゲーム、「レインボーファンダジー」その舞台となる宮殿。

そこは、キキョウには見覚えのあるところだった。


「なんで、ここが」


にわかに信じられない様子のキキョウ。

昔の記憶を頼りにアバターを進めてみた。


「ここに隠し部屋があるはず」

と、壁を探ると、モニターには大きな扉が現れた。


「おお!シラユキが新エリアを発見したぞ」

と驚きの声で実況が伝える。

騒然となる周囲の観客たち。


他の参加者も、思わず手を止めて、キキョウを見つめていた。

アバター ウルフVo.1を操る雄太も、思わずキキョウを凝視した。

信じられない、と言った表情で。


スクリーンに映し出される、各アバター期待度ランキング、

この場の観客と、配信をみている視聴者が、優勝しそうなアバターに1票と投じるシステムだ。

最下位に近かったシラユキが大幅に順位を上げた。


「そんなにすごいこと?」

そういうキキョウに、


「ここで新エリアが見つかるのは、2回目だ。

前は、このゲームの製作に携わった奴が見つけたから、一般ユーザーが発見するのは初めてだよ」

と雄太。


もし、ここが自分の知っている「宮殿」と同じ構造なら、隠し部屋や隠し通路など、たくさんの秘密がある。


「懐かしいな」

とキキョウは小さくつぶやいた。


そして頭に、幼いころの古い記憶がよみがえっていた。


ここは、名前こそ「宮殿」で女神の住処ではあったが、実際には牢獄だった。

自分と、キキョウノウエとよばれた母はここに軟禁されていたのだ。


キキョウの一番古い記憶は、この宮殿から始まっていた。

この冷たい石の壁に阻まれ、外界を遮断された生活。

それが何年続いたのだろう。


その間も、母と会うことは許されなかった。

いつも一人、小さな部屋にいた。


「浄化が終わるまで、あなたを外に出すことはできない」

と世話係の者が言っていた。


「キキョウさん!」

雄太の声で我に返るキキョウ。


ハッとしてスクリーンを見ると、シラユキが多くの「敵」に取り囲まれている。

その姿は、黒い球状、まるでキキョウの使い魔イレジウムのようだ。


「なに、これ?」

とキキョウが叫び声をあげるが、それより早くスクリーンのイレジウムもどきが攻撃を仕掛けて来た。


パシン、パシンとシラユキに光の光線が当たる。

そのたびに、シラユキの「HP」と言われるアバターの命が減っていく。

これが「0」になれば、ここでゲーム終了だ。


「防御して反撃を」

と隣の雄太が言う。


「防御?反撃?どうやって?」

とキキョウ。

うろたえながらも、雄太に用意してもらった「操作手順書」と首っ引きでゲーム機を操る。


「あ、できた。防御」

上手くかわすことができたようだ。


それから、反撃に転じた。

黒丸を次々と撃破していくシラユキ。

なかなか、軽やかだ。


なんとか、窮地を脱したシラユキ。

見ればHPはかなり減ってしまっていた。


「どこかで補給を」

と雄太に促されるが、


「どうすれば」

ととまどうキキョウ。


「ごめん、こっちもバトル中だ。ちょっと手が離せない」

雄太は自身のアバター、ウルフVo.1の戦いに集中していた。


ここでHPを回復させるには、「食べ物」を食べるか、参戦している他のアバターに攻撃を仕掛け、

HPを奪い取るかだ。


「それならば」

とキキョウ。


記憶を頼りに、食料が保管されていた倉庫を探す。

そうだ、この壁の向こうのはず。

しかし、スクリーンではそこは行き止まりだ。


「じゃあ」

とその壁を攻撃するシラユキ。

すると、壁が壊れまたしても新たな扉が現れた。


「お、おお? シラユキ、またしても隠し扉をみつけたか!」

場内に実況の声がこだまする。


出現した扉を開けると、思った通りそこは食料貯蔵庫だった。

たくさんの食べ物をアバターのシラユキに食べさせて、HPを回復させる。


するとその背後に、

別のアバターが出現していた。

他の参加者が、シラユキのHPを奪うために、やってきたのだ。


「お、シラユキとコウシロウとのバトルか?」

と実況。


コウシロウを言うそのアバターは、操る本人に似て身体が大きく野蛮そうな雰囲気だ。

シラユキがかわす間もなく、手に持っていた大きな剣をシラユキに向け振り下ろした。


「これは、シラユキ、大ダメージか」

実況の声が一段と大きくなった。


場内の観衆も、シラユキのピンチを確信したが、その瞬間、二人の間に割って入ったものがいた。


「ウルフだ、ウルフVo.1がシラユキの援護にきたぞ」

と実況。


雄太は見事に、自分のアバター、ウルフVo.1を自在に動かしコウシロウを撃破した。

そして、シラユキをかばいながら部屋を出た。

取り残されたコウシロウはHPをすべて奪われ、その場に倒れこんでいた。


「さあ、残り時間わずかだ」

そう言う実況の声がする。


そして、

スクリーンに大きな文字で「ゲームオーバー」の文字が浮かんだ。


「この戦いの勝者は」

と実況が言う。

これから戦績の発表となるらしい。


途中でHP切れで終了となったものがコウシロウを始めとして数名。

それから、お宝ゲットできなかったものが、シラユキなど数名。


このゲームは残ったHPと獲得したお宝の数で順位が決まるのだ。


「さあ、今回の栄えある第1位は。

ウルフVo.1だ、やはりウルフは強かった」

実況が声高らかに言う。

スクリーン上に映し出される手を振りポーズをとるウルフ、そして実際の雄太も手を上げて歓声にこたえていた。


「今回はスペシャルサンクスがいるぞ」

と実況。


スペシャルサンクスというのは、何か特別な功績をあげたアバターに与えられるのだ。

あまり例がない。


「今回のスペシャルサンクスは、シラユキ。

新エリアの発見、これは大した功績だ」

実況がそう言うと、シラユキの姿もスクリーンに現れた。


ウルフとシラユキ、二人並んで歓声にこたえている。

そして、実際の雄太とキキョウも、同じように周囲に手を振っていた。



「やるじゃないですか、初めてとは思えないよ」

と雄太が言う。


ゲームが終わり、観客たちも周囲からいなくなっていた。

雄太はキキョウのゲームでの活躍が信じられない、と言った様子で興奮しながら話す。


「まぐれよ」

とキキョウは静かに言う。


あの宮殿、やはり知っている「あの」宮殿だ。

あそこを知っている誰かがゲーム制作にかかわっていたのだろう。


「もう、あのゲームにはかかわらない方がいい」

キキョウは内心そう思った。


それでも、雄太の話は終わらない。


「あのゲームはね、クリスタルトレジャーっいう最後のお宝を見つけたらクリアってことなんだけど、

もう何年も誰にも見つけられないんだ。

きみが見つけた新エリア、これだってすごい大発見。もう話題になっているよ」

と雄太がスマホを見せてくれた。


そこには、初めて参加するアバター、シラユキがいとも簡単に新エリア発見、と大騒ぎになっていた。

そして、シラユキに関する憶測も飛び交っていた。


「やばい」

とキキョウ。


「今日のはね、本当にまぐれなのよ。

だからほとぼりが冷めるまで、私はゲームに関わらないでおくわね」

とキキョウ。

うまい具合に避ける口実ができた。


「そうだね」

と雄太、その表情は少し寂しそうだった。


「せっかく、共通の趣味だと思ったんだけどな」

と小さく呟いていた。

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