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365日、すべての君に「好き」を告げよう〜17歳の高校生、女神の呪縛を乗り越え試練に挑む  作者: 明けの明星


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3か月目~第2週~パインストア

雄太の意外な特技、ゲームのチャンピオンのようです

「デート?これってデートよね」

と心で言いながら、顔が熱くなっているのを感じるキキョウ。


その傍らを歩く雄太は、一人思う。

「キキョウのすべてが知りたい」

そう言う思いに駆られ、自宅を探し回ったこともあった。


「キキョには自分だけを見ていてほしい」

キキョウに近寄る人々を疎ましく思い、それを拒まないキキョウに苛立ちを覚えたこともあった。


でも。

今は、キキョウの傍にいるのは自分だけ。

キキョウは自分だけを見てくれるはず。


そう思うと自然と笑みがこぼれる。


壁面いっぱいにゲーム「レインボーファンタジー」の広告が貼られている、駅の通路を二人で通りながら、雄太は少しだけキキョウの顔を見た。


いつもの彼女だ。


電車を乗り継ぎ、

パインストアのある駅に着いた。


ここは都心の真ん中、大きな駅だが人でごった返している。

雄太とキキョウが、電車を降り改札に向かおうとするが、ホーム反対側の電車も同時に到着したようで、

人の波が押し寄せた。


大勢の人に、押し流されそうになる二人。

その時、キキョウが雄太の手を握った。


雄太は手を硬直させ、握り返すこともできな、

そのまま、キキョウに手を「持たれて」いるだけだ。

キキョウは雄太の手を引っ張りながら、階段を降り改札口に向かった。


「すごい人ね。ここの改札でいいんだよね?」

とキキョウ。


この駅はいつもの改札口がある。

出口を間違えると、道に迷いそうだ。


「ここから出れば、目の前だよ」

と雄太。

その時には、キキョウは雄太から手を離し、隣に並んでいた。


改札をくぐり地上に出てると、大きな通りに出た。

交通量も多く、広い歩道には大勢の人。


その大通り沿いに、ガラス張りのおしゃれなビルがある、そこが「パインストア」だ。

中に入ると、広い吹き抜けのロビーのような空間があった。


ここには、たくさんのパイン社製のゲーム機や、パソコン、デジタル機器の販売のほか、

体験コーナーや、本日のお目当てでもあるゲームのデモンストレーションなども行われている。


「こっちだよ」

雄太はそう言いながら、奥に進んでいく。

慣れた様子だ。


ロビーを通り抜け、区切られた空間に入ると、

そこには、大きなスクリーンがあった。

すでに、「レインボーファンタジー」のデモ映像が流れている。


カウンターで受付をする雄太。

置かれているタブレットに、情報を入力しゲーム端末を受け取る。

キキョウも同じようにした。

端末を受け取ると、ディスプレイに繋ぎアバターを作った。


こんなゲーム機を操作するのは初めてだが、画面のガイダンスのおかげでスムーズに進めることが出来た。


しかし、途中でつまずいた。


「何とかの、なんかをONとかOFF,とかって何?

と雄太に尋ねるキキョウ。


何度やっても、

「設定が違います」

と赤い字が現れる。

もうお手上げだ。

わけがわからない。


と、途方に暮れかけたとき、雄太がキキョウの端末を覗くと、機器を受け取り操作を始めた。

何度やってもエラーになった画面が次に進む。


「名前、どうする?」

キキョウにそう尋ね、てきぱきと操作する雄太。

ゲームに使用するアバターには名前を付けるのだ。


「じゃあ、キキョウで」


「そのままじゃん」


「じゃあ、どうしよう?」


そう言われて少し考えると、


「じゃあ」

と画面に文字を打つ雄太。


そこには

「シラユキ」

とあった。


「キキョウさんのアバター、名はシラユキ、ぴったりでしょ」


雄太が微調整したキキョウのアバターは、

白い衣装に金髪の美少女。手には魔法使いが持つような杖を携えている。


そういう雄太のアバターは、いかにもゲームに出てきそうな、マントを着た勇者の姿だ。


「名前はなんていうの?」

とキキョウに聞かれ、


「ウルフだウルフVo.1(ボリュームワン)Vo.1 」

と雄太。


その頃、パインストアの入り口にやっと到着した岳と玲奈、そしてチャミ。

中に入ろうとすると、


「こちらではペットのご入場はご遠慮くださ」

と店に人に引き留められた。


外には出さないからと交渉するが、認められることはなく、チャミは受付で「荷物」として預かってもらうことになった。

キャーリーごと、受け付け奥の事務室に連れていかれるチャミ。


「だから連れてこなくてよかったのよ」

と玲奈に言われるが、


「行きたい、っていったのはあいつだ」

と岳。


仕方なく、チャミを受付に託し、雄太代キキョウの姿を探す岳と玲奈。

二人がゲームのデモンストレーションに来たのはわかっていたから、ロビー奥の会場に向かった。


既に人だかりができている、ゲーム「レインボーファンタジー」のでも会場。

大きなスクリーンには、参加者のアバターとハンドルと呼ばれる名前が表示われている。

全員で20名ほどだ。


「お、ウルフVo.1が参戦か」


「ってことは、ウルフが来ているの?」


「世界チャンピオンが?」


場内がざわつき始めていた。


「ねえ、雄太って?」

とキキョウがささやくと。


「ま、見ててよ」

と雄太。



「へえー あいつ有名なんだ。ただのオタクかと思ってたのに」

とその日の玲奈、ロイズが言う。

雄太に関する申し送りはばっちりなようだ。

岳と玲奈は、雄太たちに気付かれないように、会場の片隅から二人を見つめていた。


「でもさ、私たちはわざわざ見に来ることってあったの?

せっかくのデートをよ?」

と玲奈。


こっそりあとをつけよう、と言い出したのは岳だ。

しかもその理由ははっきりとはしていない。


「あんたさ、キキョウの事がきになるんでしょ?

私というものがありながら。今日の試練、まだクリアできてないよね、今日は苦戦だね~」

と玲奈に言われ、返す言葉がなくなった岳。


「でも、キキョウはこっちの世界に詳しくないし」

なんとか言い訳し始めたその時、


場内が暗くなり、スクリーンがより鮮やかに映し出され、重厚な音楽が流れ始めた。

「レインボーファンタジー」のために作られたという有名ミュージシャンによる楽曲だ。


スポットライトに照らされた司会進行係の若者が、

スクリーンのアバターの紹介をする。


「次は、お待ちかね、ウルフVo.1だ。

世界を驚愕させる、天才、ウルフ、今日の参戦に感謝する」


その言葉が終わらない間に場内が歓声に包まれた。

しかし、操作をしている雄太の姿が、映し出されることはない。

あくまでも、アバターウルフ、へ贈られている賛辞のようだ。


「私も出ちゃっていいの?」

場の雰囲気にすっかり圧倒されているキキョウが雄太につぶやいた。


「もちろんですよ、楽しんでよりましょう」

と雄太。


このゲームは、迷路のような「王宮」の中にちりばめられている「宝」を探す、

というものだ。

行く手を阻む敵や、邪魔をしてくるほかのプレイヤーとの戦闘もある。


キキョウのアバターには、雄太のチョイスで「中レベル」の装備がつけられていた。


「次は、初参戦のシラユキ、ウルフが推す期待の新生。ようこそプリンセス」

と司会者がキキョウのアバターを紹介した。

場内には大きな声援がこだました。

「私、オマケで参加なのに、大げさに紹介しないでよ」

とキキョウ。


「さあ、ゲームのスタートです」

という司会の言葉で、ゲームが始まった。


ゲーム機の操作もおぼつかないキキョウは、入口からなかなか先に進めない。

それでも、数分もするとなんとかアバターを自由に動かすことが出来るようになっていた。


スクリーンに映し出される、ゲーム内の王宮。

たくさんの部屋が入り組んだ通路でつながっている。


「ここは」

キキョウがつぶやく。


「ここ、聖地の宮殿だ」

と。

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