表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
365日、すべての君に「好き」を告げよう〜17歳の高校生、女神の呪縛を乗り越え試練に挑む  作者: 明けの明星


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/83

3か月目~第2週~やはりそれは「デート」というらしい

電車での二人。

電車に乗り、都心ど真ん中にある「パインストア」へ向かうキキョウと雄太。

私服姿の二人は、どこから見ても初々しい高校生のカップルだ。


そもそもキキョウは誰かと遊びに出かける、なんてことをしたことがない。

雄太も、女子と二人だけでの外出は人生初だ。

いや、グループでもないかもしれな。女子とのお出かけなんか。


そんな雄太が、クラスのマドンナと二人きりだ。

キキョウに好意を寄せている男子は、クラスの内外に大勢いる。

それは雄太も知っていた。

まあ、「マドンナ」というのは雄太のひいき目な言い方かもしれないが。


今までの雄太なら、「二人で出かけよう」とんなことが言えるはずがなかった。

が、しかし。

キキョウを前にすると心臓が飛び出すほど緊張するが、このまま見ているだけじゃどうしても納得がいかない。

そんな信念が勇気を与えた。


「あの、今日は何時に起きたの?」


「8時」


「あの、朝ごはん食べて来た?」


「うん」


そんな雄太が懸命に話しかけるが、会話はぎこちなかった。


隣の車両に、雄太とキキョウの姿を凝視する人影があった。

岳と玲奈だ。

そして、岳が背負っているリュック型の猫キャリーには、白猫チャミが入っていた。


そうだ、この二人と一匹は、キキョウの雄太との「デート」を監視するため尾行しているのだ。


「ねえ、キキョウがデートだって?天変地異でもおこるのかしら」

と玲奈。

その日、玲奈としてあっちの世界からやって来たのは、ロイズと名乗った。


「やっぱり、デートだよな。これ」

岳がつぶやくように言う。

なんだか、キキョウと雄太の「デート」を認めたくないようだ。


「私も女神の見習いよ」

とそれには無視して、ロイズは言った。


「じゃ、日ごろのキキョウの事も知ってるんだね。いつもはどんな感じなの?」

と岳が聞くと、


「うーん、キキョウはね少し特殊なの。私たち、一般の見習いとは違ってね。

だから、あまり接点がなくて。よく知らないんだ」

とロイズ。


岳はキキョウが、白崎町に伝わる女神伝説の「キキョウノウエ」の娘だということはわかっていた。

ということは、人間とのハーフと言うことになる。

その影響なのだろうか、キキョウが特殊だ、というのは。


「まあ、女神の血筋は母方だけが重要だから、父親が誰でもいいんだけどね」

とロイズは付け加えた。


「じゃあ、何故だ」

と岳は思ったが、それ以上ロイズに尋ねることはしなかった。


「ロイズも早く一人前の女神になりたいの?」

と岳が質問してみた。


「あたりまえでしょ、見習いなんて小間使いみたいなもんだもの。

女神に昇格すれば、待遇が全然違うのよ。この試練に参加すると、加点されるのよ。

だからこれからも、女神見習いが来ることが多いかもね」

そう言うロイズに、


「じゃあ、楽しみにしてるよ、ロイズが女神になるの」

と岳。


「ありがとう、そうね、こっちで言うなら、3,4世紀の間には昇格できると思うわ」



電車の中は、にわかに乗客が増えて来た。

都心に近づいてきるのだ。

いかにも、「働いてます」といって風貌の乗客が多く乗り降りをする。


「わあ、かわいい」

岳の背後でそんな声がする。


岳が背負っている猫用のキャリー、まるでカプセルのようになっていて、中にいるチャミが良く見えるのだ。

チャミは白い身体をキャリーの側面にぴったりすり寄せ、ドヤ顔で周囲にアピールしていた。

その姿は、どこから見ても、愛らしい白猫ちゃんだ。

岳の後ろに立っていた、二人連れの女性がキャリーをツンツンしながらチャミに歓声をあげていた。


チャミを囲んで、知らない乗客としばし和やかな会話が弾んだ。

ますますチャミは誇らしげな表情だ。


岳と玲奈は、その間、隣の車両のキキョウたちから目を離していた。

ほんの少しの間のはず、だが。


二人がキキョウと雄太を探すが、姿がない。

気配を感じることもない。


「あーあ、降りちゃったね」

とその日の玲奈、ロイズ。


パインストアに行くには、途中で一度乗り換える必要がある。

その、乗り換えルートはいくつかある。


つい先ほど、一番遠回りなルートとなる駅に着いた。

そこでキキョウは降りてしまった。


キキョウは岳たちが、つけて来ていることに気付いているはずだ。

そもそも、「付いて行くから」と宣言していたことだし。


岳と玲奈も次に乗り換えられる駅で降りることに。

あと2駅先だ。


「やられたわね」

とロイズ。


「キキョウはわざと?」

と岳が言うと、


「キキョウの意向か、あの男子かはわからないな」

とロイズが言う。


「まあ、行先はわかってるからいいよね」

と続けるロイズ。

どちらにせよ、行先はパインストアだ。


乗り換えのため、電車を降りたキキョウと雄太。

これは雄太の意思だった。


実は、この駅で乗り換えれば、長い通路を歩いて次の電車の乗り場に向かう。

その通路を通りながら、


「見て」

と雄太が壁一面に貼られているポスターを指さした。


そこには、

「レインボーファンタジー」というゲームの宣伝ポスターだった。

いま、人気のあるゲーム。

雄太はこのゲームが大好きだ。


「これはね、何人かのパーティを作って、お宝を探すってゲームだよ。

アバターを作って名前をつけるんだ。考えておいてね。

すごいでしょう、このクオリティ」

ポスターにはこのゲームの見どころが随所に描かれている。

とてもきれいな画像だ。


「音楽もすごくいいんだよ」

と雄太は言う。


「パインストアって音響もいいから、大きなスクリーンですごい迫力だよ」

雄太の瞳が輝いている。


その嬉しそうな横顔をみるキキョウ。

なんだか自分も嬉しくなった。

こんなことは初めてだ。


「楽しみね」

そう言うキキョウ。


「そう?」

と雄太。

その顔がますます嬉しそうに輝く。


「今日、デート出来て本当にうれしいよ」

と雄太が小さな声だが、はっきりとこう言った。


その言葉を聞き逃さなかったキキョウ。

「え、デート、デート?」

今更ながら、解読し、頬が赤くなるのと感じていた。

応援していただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ