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365日、すべての君に「好き」を告げよう〜17歳の高校生、女神の呪縛を乗り越え試練に挑む  作者: 明けの明星


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3か月目~第1週~試験後半

試験中のできごと。

「どういうことなのよ?」

岳と玲奈とキキョウの3人となった、帰りの電車で玲奈に詰め寄るように言うキキョウ。


「なにやってんの」

とため息をつきながら言う。


「あー、ごめん」

と玲奈。

何かやましいことがあるようだ。


「あの、バレるとは思わなくて」

玲奈が言うには、自分の能力を使い斜め前の生徒の答案用紙をのぞき見していたら、

その生徒がいきなり振り返り声を上げた、というのだ。


その気配を察したのがキキョウだった。

離れた教室から、力を込めて先生とその女子生徒を少しだけ、操った。

「勘違い」で済ませるために。


「カンニング、したのか?」

と岳が言う。


「いや、カンニングじゃなくて、能力で遠視しただけだよ。

でもなんでバレたんだろう。私の能力」

という玲奈に、


「あのさ、斜め前の席の子の見ちゃだめでしょ。その程度の距離なら、こっちの人間にも見えるよ。

見ようと思えばね。なんでもっと遠くにしなかったのよ」

とキキョウ。


「だってさ、その子よく出来てたんだもん。うつさせてもらうには持ってこいよ」

玲奈がそう言うと、


「丸写ししたの?」

とキキョウ。


「それじゃ、また湯浅玲奈さん、まさかの上位ランクインじゃん」

と岳も言う。


「いや、ほどよく空欄にしたよ」

と玲奈。


「結局、カンニングしたのね」


「そうしないと、零点の可能性あるからね」


「ま、能力を使いカンニングをしたら、バレちゃって、それをごまかすためにキキョウが力を貸した、ってことか」

と岳。


「ま、そういうことです」

と玲奈。


「で、キキョウはまたふらふらになってんだ」

岳がそう言うと、


「もう、復活したわよ。前みたになオーバーパワーにはならないわ」

とキキョウ。


「でも、ダメージは来るわね。それもなんとか改善しないと。

また、あんたみたいに尻ぬぐいの必要な事やってくれる玲奈さんが来るかもしれないしね」

キキョウはそう言いながら玲奈を見つめた。


「すみませんねえ、私、出来損ないの能力使いなもんで」

と玲奈。


「能力使い?それは種族なの?」

岳の問いに、


「種族ではないわ、魔法使いとは違って、生まれ持った能力を持つ者のことよ。

この玲奈には、遠くまで見渡せる能力があるの」

とキキョウが答えた。


「そうよ、かなり遠くまで見えるのよ、えっと」

そう言い、玲奈が遠くを見つめた。


しかしここは電車の中、しかも地下を通っている。

こんなところから、見ることができるのか、

そう疑問だった岳だが、


「あらまあ、あんたの雄太君、付いてきてるわね。

この1本後の電車に乗ってる」

と玲奈。


「え?そうなの?私、気配感じてなかった。油断してたわ。

どうしよう、今日、叔父の病院に行くなんて嘘だし、玲奈と話せたらそのまま引き返すつもりなの」

と焦りながら言うキキョウ。


「じゃ、次の駅ですぐにUターンだね、それなら雄太と鉢合わせすることなく帰れるよ」

と岳が提案した。


次の駅で、キキョウは電車お降り、そのまま反対側のホームに入って来た電車に飛び乗った。

岳と玲奈も、最寄り駅に着いたが雄太を見かけることはなかった。



「キキョウさん、どこに行ったんだ」

その日の夜、雄太がひとりスマホを握りしめていた。


雄太はキキョウを岳と玲奈に託したものの、気になってしまいすぐに追いかけた。

そして、キキョウの叔父の病院を探し回った。

しかし見つかったのは


「都留田動物病院」

しかもその日は休診日。

中に人の気配はしなかった。


キキョウのスマホに何通ものメールを送ったが、夜になっても返信はない。


「どこかで倒れているんじゃ」

そんな思いが頭をよぎる。


雄太はキキョウが居候をしている叔父の家の詳しい在処を知らなかった。

同じ町内と言う事だけは確かだが。


自宅の戸棚から、そっと町内会の資料を取り出した。

そこには、地域の住宅地図がある。

戸建ての家の住人の名字が書き込まれた地図だ。

そこから、「都留田」という住居を探す。


「あった」

と雄太。


地図を持ち玄関にいる雄太。

キキョウの家に行くつもりだ。


「雄太さん、なにをしているの?」

声をかけたのは祖母だ。


「いや、友達が具合が悪くなって、様子を見てこようと思って」

と雄太。


「友達?」


「そう、友達。すぐに帰るから」

そう言うと、雄太は祖母を振り切るように家を出た。


その後姿を見ながら、

「アトロ・キキョウね」

と祖母がつぶやいた。


キキョウの家に向かった雄太だったが、外はすっかり暗くなっており

地図を見てもその場所を特定できない。


そもそもこの住宅地図はかなり古いものだ。

各家庭の居住者氏名が書かれた地図なんて、個人情報に厳しい今では作ることはできないだろう。


広場だったところがマンションになっていたり、住人が変わっていたりと、最新の状態ではない。

それがますます、都留田家を見つけにくくしていた。


結局、キキョウの家は見つけられず、雄太は自宅に戻った。

スマホを何度も覗くが、キキョウからの返信はないままだ。


翌朝、白崎駅の改札口。

改札を通るキキョウがふと振り返る。


「キキョウさん」

そう声をかけられたからだ。

声の主は雄太だ。


「雄太くん、あら偶然ね。ここで会うなんて」

とキキョウ。


「この時間なんですね、これからは一緒に行きましょう」

と雄太。


今までは試験前になり、下校は一緒に帰っていたが朝は別々だ。


「え、一緒に?」

とキキョウが言う。


二人は付き合っているわけではない。

登下校一緒だなんて、まるで岳と玲奈のようだ。


「私、朝、弱くて。時間もバラバラ。だから待ち合わせとかするとかえって迷惑かな」

とやんわりとキキョウが言う。


「じゃあ、朝出るときに連絡してよ、合わせるから」

と雄太が思いがけず強い口調で言った。


「どうしたの?」

そういうキキョウに、


「いや、出来たら一緒に行きたいなって思っただけで、やっぱり朝は自分のペースがいいよね。

ごめんね」

といつもの柔らかい口調で言う雄太。


しかし、その眼の底には強い光が宿っていた。


そして一人つぶやいた。

「キキョウは俺のものだ」

と。

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