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365日、すべての君に「好き」を告げよう〜17歳の高校生、女神の呪縛を乗り越え試練に挑む  作者: 明けの明星


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3か月目~第1週~試験突入

蒸し暑いのは辛いですね

新緑の季節が過ぎ、そろそろ鬱陶しい梅雨の季節がやって来た。

気温も高い日が多く、蒸し暑い。

この快適ではない天候は、あっちの世界(ファンタジーワールド)の住人にとってはかなり辛いようだ。


チャミュは、だるそうにぐだぐだしていることが多い。

そしてキキョウも青白い顔をして登校していた。


下校時となり、下駄箱で

「ねえ、あんたは大丈夫なの?」

とその日の玲奈に聞くキキョウ。

玲奈は体調には問題ない様子だ。


「私は平気よ。まあ、こっちの環境には馴染めるようにさせてもらってから来てるからね。

キキョウも早く順応しなよ、試験も近いんだから」

と玲奈。


「そうなんだよ、もうすぐ試験だよ、人生初の試験ってやつ」

とキキョウがぼやくように言った。


そこに、

「都留田さーん」

と声がして、駆け寄ってくる人物、雄太だ。


「さ、一緒に帰ろう」

と言いながら。


岳と玲奈に会釈をし、キキョウ連れ出すように校門をでる雄太。

岳たちとは電車も同じ路線、駅まではもちろん同じ経路、それでも一緒に、とはならない。


雄太はキキョウと二人だけのこの時間をとても大切にしているようだ。

普段は、無口でクラスの中でも目立たず、空気のようだ、と言われることの多い雄太。

でも、キキョウと二人の時には、自分の好きなことの話、ゲームや理科のことをたくさん話した。

キキョウはというといつも、その話を笑顔で聞いているだけ、なのだが。


「キキョウさん、夏バテ早く治るといいね」

と雄太が言う

雄太はキキョウの体調を心配し気を揉んでいたのだ。


「大丈夫だよ。今まで寒い地域に住んでいたから、最近の急な蒸し暑さにはなれてなくて」

とキキョウ。


「じゃあ、スタミナのあるもの食べて体力付けないと。

でも、本当に夏バテだけ?あまり不調が続くなら、病院で診てもらったほうがいいよ」

と続けて言う雄太。


「本当に、この気候にまだ順応できていないだけよ。

病院だなんて大げさだなあ」

キキョウはそう返した。


「ならいいけど。キキョウさん、なんか一人で頑張りすぎるところがあるから、心配なんだよ。

無理しちゃだめだよ。何かあったらすぐに言ってね。隠したりしないでね」

雄太が真剣な眼差しで言う。


「うん、ありがとう」

そう言いながら、


「こめんね、隠し事だらけで」

と心で思うキキョウ。


このところ、雄太と二人で話す機会が多いキキョウ。

雄太の純真でまっすぐな心をキキョウはわかっていた。

本人は隠そうとしているがようだが、その純粋な想いがキキョウにひしひしと伝わっていた。


自分が雄太に好意を抱くことはない。

恋愛感情なんかもってのほかだ。

そもそも自分には、愛だの恋だのを理解することができない。


それでもキキョウは雄太の事を拒むことはなかった。

毎日、一緒に帰り、たわいもない話をし、そして一緒に笑った。

そんなことは、今まで一度も経験したことがない。

でもなんだか、「楽しい」気持ちになる時間だった。



定期試験がいよいよ明日に迫っていた。

岳の自宅では、久しぶりに家族4人が揃って夕食の食卓についていた。


「試験勉強は進んでいるのか?2年生になって成績はまあまあのようだが、油断はしないように」

と父が言う。

相変わらず岳の成績の事ばかり気にしている


「今回は姉ちゃん先生はご入用じゃないのかしら?」

と姉の真帆。


そういえば、今回の試験では朝陽も亮も、

「岳の家で勉強したい」

とは言ってこなかった。


「勉強なら、ぬかりなくやってるよ」

と岳。


「試験中、チャミはお母さんが預かるわよ。

部屋にいたら気が散るでしょ?」

と母が言った。


いつも岳の部屋に入り浸りのチャミュ。

まあ、邪魔な時もあるけれど、いないと困る存在でもある。


「いいよ、チャミはそのままで。それよりも試験中はセバスチャンの散歩、交代してよね」

そう言う岳に、


「そう、じゃあチャミはそのままで。最近、寝てることが多いから少し心配なんだけど。

セバスチャンの散歩?まあそうだったわね、試験中は代わるって約束してたわよね。

じゃあ、真帆、お願いするわ」

と母はそう言って、真帆の顔を見た。


「えー、セバスチャンの散歩?私で大丈夫なの?すごい力で引っ張るわよ、あいつ」

と真帆は少し不満げだ。


「お父さんが行けばいいのに」

と真帆が父に言い寄る。


「父さんは、朝早く出るから無理だ。お前が一番時間に融通が利くじゃないか」

と父。


確かに、父は家族の中で一番早く家を出る。

大型犬のセバスチャンの散歩は時間的に無理だろう。


「仕方ないなあ、セバスチャン、いい子で歩くよね?」

真帆が岳に聞いた。


「セバスチャンは問題なしだよ、ちゃんと姉ちゃんを誘導してくれるよ」

と岳に言われ、


「よかった、それなら安心。じゃあ、試験当日から最終日までは交代するから」

と真帆が言った。


「これで岳も試験に集中できるな、まあ女の子と仲良くするのもいいが、まずは勉学を優先だ」

父が、締めくくるかのように言う。


「愛しの玲奈ちゃん」

と真帆がからかうが、


「さ、食事がすんだなら、食器は下げておいてね」

と席を立った母がその会話を全くスルーするように言った。


その母の足にを白猫のチャミがまとわりつく。

ミャアミャアと小さく鳴きながら、母を見つめるチャミ。


「チャミちゃん、ご飯あげましょうね」

と猫なで声で言う母。


「ま、岳、試験中は玲奈ちゃんともほどほどにね。ママがうるさいわよ」

と部屋に戻るとき、すれ違いざま真帆がそう言った。


「ほどほど、ってなんだよ。

高校生らしい付き合いしるんだ、俺たちは」

と部屋でチャミュに向かって言う岳。


「真帆に見られてるよ、時々。

玲奈とイチャイチャしてるとこ」

とチャミュ。


「イチャイチャなんかしてないぞ、俺は毎日の試練をクリアすることで精いっぱいだ。

毎日、毎日、日替わりの玲奈に好きだと言う、なんか俺、浮気者みたいじゃないか」

そう言う岳の言葉に、


「ふうん」

とチャミュが返事をする。


「でも、なんか魅力的な玲奈ばかりで、それはそれで楽しいんだけどね」

と続ける岳。


「岳? 玲奈の事」

チャミュがそう言いかけたが、そのまま黙った。

チャミュは、岳は本物の玲奈から心が離れてきているのではないか、そう感じ始めていた。

岳には言えないが。



翌朝、いよいよ試験初日だ。

朝早くから、真帆が大騒ぎをしながら散歩の準備をしていた。


パーカーにジャージ、そして軍手と言ういで立ち。

ビニール袋だの、ティッシュペーパーや水の入った小さなバッグを持ち、

セバスチャンと玄関を出た。


その姿を2階の自室窓から見送る岳。

横にはチャミュがいた。

さすがに今朝は散歩に同行はしないようだ。


岳の言った通り、セバスチャンが自発的に散歩コースを進んでいた。

真帆の歩調に合わせるように。

そして、セバスチャンと真帆は、玲奈の家の前を通りかかっていた。

ちょうど庭に面する歩道だ。


庭に、玲奈の姿があった。

玲奈は、真帆の姿を見つけると、少し驚いたような顔をしながら軽く会釈をした。


「玲奈ちゃん?あんな感じだったっけ?なんか別人みたい」

遠目に見た玲奈の姿に、真帆は違和感を覚えていた。

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