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365日、すべての君に「好き」を告げよう〜17歳の高校生、女神の呪縛を乗り越え試練に挑む  作者: 明けの明星


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2か月目~第3週~学校に戻り

キキョウは大丈夫?

「アトロ・キキョウ」

キキョウのあっちの世界(ファンタジーワールド)での呼び名だ。

それを知っている?雄太の祖母が?


キキョウの耳元でささやかれたこの言葉に一瞬たじろぐキキョウ。

しかし、靴を履き終え外に出ようと勢いをつけた身体は、留まることができずそのまま玄関外に駆け出していた。

振り向くと、雄太の祖母は玄関から皆を見送るように、手を振っていた。

キキョウを凝視している様子もない。


聞き違い?気を取り直して

「ごめんね、私のせいで遅くなっちゃって」

とキキョウが皆に言うと、


「気にしないで、無理しないようにゆっくり戻ろう」

朝陽がそう言い、他の皆も頷いた。


「ねえ、雄太君、おばあ様は女神伝説に詳しいの?」

白崎駅までの道すがら、何気なく雄太の隣に並んだキキョウが聞いた。


「そうなんですよ。女神神話の事が大好きのようです。

うちは古くから代々このあたりに住んでいるから、余計に興味がわくのかもしれないです」

少し上ずった声でそう言いながら雄太は隣に並ぶキキョウの横顔をそっと見た。


「キレイですね」

思わず口に出す雄太。


「え?何か言った?」

とキキョウが聞き返した時には、雄太は視線を前方に移していた。




一行が学校に戻ると、もうすかっかり腹痛が「治った」岳も合流し、遅れた言い訳をするために職員室に向かった。


「お前たち、3班がぶっちぎり最後の帰還だ。でも大したことがなくてよかった。

白崎町では局地的な落雷が発生したようだし、ショッピングモールでスリの一団が捕まったとか。

ショッピングモールの管理事務所から連絡があったよ。

お手柄だな、野口、それから都留田」

と担任が言う。


大幅遅刻のお咎めはなさそうだ。

3班、全員無でを撫でおろし、職員室を後にした。


「おい、都留田。具合はどうだ?保護者、叔父さんご夫婦だよな、連絡入れておこうか?」

と戻り際に担任に声をかけられたが、キキョウはやんわりとこれを断った。


「じゃあ、今日は誰かと一緒に帰れよ」

担任のそんな声に送られて、職員室を出るキキョウ。


「そう言うわけで、一緒に帰りましょ」

下駄箱で岳にそう言うキキョウ。

岳と玲奈と共に帰るつもりだ。


「もちろん、3人で」

と玲奈が答える。


そこに、

「都留田さん、いたいた」

そう言って駆け寄ってきたのは田沼雄太だった。


「一緒に帰ろうよ、家近いんだし。送りますよ」

そう言いながら。


小さくため息をつく玲奈を横目にみながら、キキョウには雄太がかなりの決心をして、声をかけてきたのがよくわかる、断ることなど出来るわけがない。


結局、雄太とキキョウ、岳と玲奈、この4人で校門をでることになった。

4人で同じ電車に乗るが、雄太とキキョウは途中の白崎駅で降りて行った。


「じゃ、また明日」

そう言いながら、キキョウは手を振り雄太と二人で駅のホームを歩いて行った。


「キキョウに、何か話したいことがあったんじゃないの?」

と岳が言う。


「なんで?」


「そんな気配が漂っていたから」


そんな会話の後、

「そういう事ね」

と玲奈が納得したようにうなずいた。


最寄り駅に着き、玲奈と別れ家に向かう岳。

近所のコンビニに少し寄り道をして家に戻った岳。

しかし、誰もいないようだ。いつもなら母がいるはずなのに。

チャミュも姿を見せない、白猫のチャミもだ。


「なんだ、留守か」

そう言いながら2階の自室に入ると、そこには。


「あーあ、だっさいねえ。こんなになって」

と話している、チャミュの声だ。


見ると、岳のベッドに誰かがおり、チャミュと、もう一人が覗き込んでいる。


「え?玲奈?」

と岳が言う。

チャミュと一緒にいたのは先ほど別れたばかりの玲奈だった。


「おい、どうして?なんでここに?」

そう言いながらベッドに近寄った岳。


ベッドを見ると思わず、

「えっ?」

と小さく声を上げて、目をそらすようにチャミュを見た。


ベッドの上にいたのは、キキョウだった。

しかも上半身、何も衣服を身に着けていない。

裸だ。

その胸に、チャミュが自分の手をかざしていた。


玲奈はキキョウの手を握っている。

当のキキョウは目を閉じ、眠っているかのようだ。


「あーあ、アトロ・キキョウ、しっかりしてよ。

こんなことでオーバーパワーだなんて」

とその日の玲奈。


「あと少しだから待っててね、岳。あとで説明するから」

と玲奈が言う。


チャミュは集中しているのか、岳を見ることもない。

チャミュがかざしている手は、白く光っていてその光がキキョウの胸に吸い込まれていった。


「さ、これでいい」

しばらくして、チャミュが言った。


「ミーファ、助かったよ」

とチャミュ。

その日の玲奈は、ミーファ、チャミュの従姉だ。


キキョウはまだ目を開けない。

そっとシーツをかけてやるミーファ。


「あのね、これは」

とチャミュが話し始めた。


今日の校外学習で、何度か魔法を使ったキキョウ。


「力を使いすぎたんだよ。オーバーパワーと呼ばれる状態だ。

だから、僕が力の補充とリカバリーをやったってわけ」

とチャミュ。


「課外活動で、具合悪くなってたんでしょ、キキョウ。

これもオーバーパワーの影響。

私がキキョウにここに来るように指示したの。さっき帰り道で。キキョウの危機を感じていたから。手遅れにならなくてよかった」

ミーファがそう言った。


「キキョウ自身は自覚がなかったようだね。

あっちの世界じゃ、これくらいなんてことないから、ミーファが冷静に分析してくれてよかったよ」

とチャミュ。


「帰りに会った時、何かおかしかったから、探ったのよ。

あの坊やがいなければそのまま連れて来たんだけどね」

ミーファは雄太の事を言っていた。


あの坊や、雄太のことだ。

あの時のキキョウもため息をついていた。

「で、キキョウは?」

と岳が聞く。


「ま、大丈夫だよ。僕の回復術は最高だからね」

とチャミュ。


そんな話をしていると、ベッドのキキョウがモソモソと動き始めた。


「気が付いた?」

と声をかけるミーファ。

そう言いながらミーファはキキョウにブラウスを着せていた。


「キキョウ、こっちでは消費する魔力が違うようだよ。重力が違うのと同じだね。

気を付けないとね」

とチャミュが言うと、


「違う、この世界の魔力消費量のちがいじゃないよ。

私から力を抜き取る何かが働いたんだ」

とキキョウが言った。

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