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365日、すべての君に「好き」を告げよう〜17歳の高校生、女神の呪縛を乗り越え試練に挑む  作者: 明けの明星


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2か月目~第3週~「好き」を強化する

キキョウが岳とその日の玲奈、ブルー・ヴェスタに女神伝説の詳細とその後の話をした日、

帰宅した岳はちょうど居合わせた母に、


「ねえ、俺が生まれたのって何時?」

と聞いた。


「7時7分よ、産院でラッキーボーイって呼ばれてたのよ。

言ってなかった?このこと」

と母が答えた。


「そっか」


それだけ言い、部屋の戻る岳。

そこにはチャミュが待ち構えていた。


チャミュは黙って岳の事を見る。

この日、岳が聞いてきたことを知っている様子だ。


「お前、知ってたの?」

と岳。


岳が、成就の力の承継者であるということ。

自分と玲奈が、女神伝説の子孫であること。


その事実を知らされ、じわじわと心がざわめいていた。

キキョウや玲奈、ブルー・ヴェスタと一緒にいた時にはさほど感じなかったのに、

このなんだかすごく、胸が締め付けられるような気持ちだ。

知らない世界に放り込まれたような。


孤独感、それだ。


今置かれている状況、女神の怒りに触れて、彼女は囚われの身、自分は365日試練を課された。

それだって、誰が信じるというんだ。


くわえて、家には、猫に成りすましている天使、

転校生は女神見習い。

自分は、訳の分からない「力」を受け継ぐ者。


誰にも信じてもらえず、知られることもない世界にに一人閉じ込められているような気分。

胸が苦しくなる。


ベッドに倒れこむ岳。

それをチャミュが心配そうにのぞき込む。


「ねえ、岳。黙っててごめん」

とチャミュが小さな声で言う。


「やっぱり知ってたんだ」

と岳。


「最初はまだ未確定で。でも、アテナの調査で確定したんだよ、

岳、きみが正当な承継者だって」


「じゃあ、俺、どうなるの?

このまま成就の力ってのを持ち続けて、女神だの魔法使いだの、魔王だのに狙われる一生送るの?」


「そうならないように試練が課されたんだよ。

365日、玲奈を好きだと言い続ければ、それだけの成就の力が生成される。

好きだって気持ちが強いほど、強力な力が生まれる。

でもね、岳の作り出せる力には限界があるから、この365日で出し尽くしちゃえばいいんだよ」

とチャミュが言う。


「そうすれば玲奈も戻ってくるし、岳からこの力も消滅する。

そしてまたいつか生まれてくる、承継者を待つことになるんだよ」

チャミュはそう続けた。


「じゃあ、強化しなきゃってこと?玲奈への好きを」

もぐり込んでいた布団から目だけをだして岳が言う。


「まあ、そういうことだね。

成就の力は岳の愛の力ってことだからね」


「そんなの、出来るかなあ」


岳にとって玲奈はかけがえのない存在だ、しかし毎日「好き」と告げなくてはならないのは、

あっちの世界から来ている誰か。

いちいちそこまで深く知ることも出来ない相手だ。


「岳なら大丈夫だよ。

人のいいところを見つけるの、出来るでしょ」


「俺はそんないい人じゃありません」


「でも、やらないと。

まあ、岳の護衛は任せてよ」


「狙われる可能性はあるってわけね」


「そう」

とチャミュは頷いた。

そう言われて、少しだけ起き上がっていた岳は再び布団にもぐり込んだ。


そんなことがあっても、毎日、日替わりの玲奈がいる。

その玲奈に、毎日「好きだ」と言い続ける岳。


苦労していいところ、好きになれるところを探し出すこともあれば、

何も考えなくても第一印象で言えてしまう日もある。


その頃から岳は、誰に対してもその相手の「いいところ」を見つけ出すようになっていた。

それは自然と岳の言動や動作に出ている様だった。


「あの、緑川君。少し話してもいい?」

ある日の昼休み、岳に声をかけて来たのは野口萌、キキョウと仲の良い子だ。


「あの、緑川君、キキョウちゃんとのこと変な噂を信じちゃって、疑ってごめんね。

そのことなんだけど、キキョウちゃん、私の事まだ怒ってるかな」

と小さな声で話した。


「まだ?」

と岳。

キキョウはそんなことにいつまでもこだわる様な奴じゃない。

というか、最初から気にしていない。


「大丈夫だよ、キキョ、いや都留田さんは怒ったりしていないよ。

あんな大雑把な性格だもん」

と岳が言うと、


「でもね、前みたいに話して聞いてくれない気がするの」

と萌。


キキョウはキキョウでなんだか忙しそうだ。

岳に秘密にしているが「任務」でも遂行しているかのように。


「まあ、キキョ、都留田さんも忙しいんだよ。

勉強とか追いつかないと、って言ってたし」

そう言う岳に、


「そうか、じゃ仕方ないよね。

キキョウちゃん、同級生だけど本当にお姉さんみたいで頼りになるの。

悩み聞いてもらって、キキョウちゃんにガツンと言われると、すーっと悩みが吹き飛ぶのよ」

萌は目を潤ませながら言う。

まるでキキョウを崇拝しているようだ。


「お姉さん、そりゃあな」

と岳は思った。


「キキョウノウエの子供がキキョウってことなの?

じゃあさあ、キキョウって何歳なの?」

女神伝説の話で出た、キキョウの身の上。


はるかかなた昔の話、の女神伝説。

その時、生まれたのがキキョウ。

と言うことは、千年以上前から生きているということだ。


「珍しいことじゃないわよ」

そう言ったのは、ブルー・ヴェスタ。

あっちの世界では、寿命というのはあってないようなもの、のようだ。


「じゃ、ブルーも千年単位で生きてるの?」


「私はそこまでは」


「キキョウはそんなに生きているのに、まだ見習いなんだ」

そう言ったら、ブチ切れされた。


「事情があるのよ」

と。


「キキョ、都留田さんは萌ちゃんのこと、親友だと思ってるみたいだよ、

だから心配しないで、今まで通りにしててよ」


その額の言葉に萌も安心したように


「そんなんだ、うれしいな」

そうつぶやいた。


岳と萌がそんな話をしている間に、昼休みは終わろうとしていた。

午後の授業が始まる直前、どこかに行っていたキキョウが教室に戻って来た。


「岳、気を付けて、危険な接触がある」

と息を切らしながら岳にささやくキキョウ。


その日の帰り道、部活に出た玲奈とは別に、一人で下校した岳。

自宅の最寄り駅に着いた時、


「やあ、岳君、この前は急にいなくなってしまって、心配したよ」

そう言いながら近づいてきた人影。


「本田神父」

と岳。


そこには、白崎の森の教会に行って以来、会っていなかった

本田が立っていた。

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