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2か月目~第2週~イジメと収束そして伝説の続き

仲間外れのキキョウ、どうなる?

「ねえ、ねえ、なんでどっか行っちゃうの?」

朝、登校したキキョウは明らかに避けられている。

クラスの女子から。


とりあえずは状況確認だ。そして「学習」しながら事態の把握に努めるキキョウ。

どうやら、あのショッピングモールにはいなかった女子、そして男子まで話が広まっていようだ。


いつの間にやら登校していた朝陽を見つけると、

「ねえ、みんな様子が変だよ」

と側に寄り、そう言った。

朝陽の反応が知りたい。


困った顔の朝陽。

しかし、他の女子のように避けることはせず、


「あのさあ、キキョウちゃん。昨日の今日だもん。

皆の視線も厳しいよ」

と小声で言った。


「やっぱり岳と二人でいたこと?」


「あたりまえじゃん」


「あれは仕方のないことだったんだけどな」

とキキョウは言うが、朝陽は何も答えなかった。


そして、

「女子の信頼回復いそがないと。私もあまり味方できないよ。今度は私がターゲットになっても困るからね」

と小声で言うと席に着いた。


「めんどくさいなあ」

とつぶやくキキョウ。


妬み、嫉妬、陰湿ないやがらせ、そんなことは日常茶飯事だった。

キキョウは女神の見習い。

大勢の女神候補生がしのぎを削るそんな毎日。

勝ち残るのは、ほんの一握り。

ファンタジーワールドでのキキョウはそんな中に身を置いている。


「ここにもあるのか、嫉妬に妬み」


しかし、思いあたるフシ、それは岳と二人だけで出かけたことだ。

要は岳の「彼女」玲奈を差し置いて自分が二人だけでいたこと。

キキョウはすっかり彼女のいる男子に色目を使うヤツ状態。

女子たちの正義感が爆裂だ。

そんなコとは友達でもなんでもない。


「キキョウさん、本当なんですか?緑川君と密会していたって。怪しい建物から出てきたって。

信じてたのに」

休み時間、そう声をかけてきたのは、野口萌だった。

大人しく内気だが、キキョウとは何故か会話がはずんだ。

そして、いつも悩みの相談を持ち掛けていた。


「やっぱり、玲奈さんに失礼だと思います。私、もう今までみたいにできません」

ときっぱりと言う萌。


萌も、あのショッピングモールにはいなかった。

それなのに、その場に居合わせたかのような語りっぷりだ。

しかも、「怪しい建物」ってなんだ。

話がなんだか湾曲されて伝わっている。


「じゃ、しょうがないね」

そう言うと、キキョウはさっさとその場を離れた。

焦った顔で立ちすくんでいたのは萌だった。



休み時間、今までなら萌をはじめとする女子たちが、

何かしら話しかけてくるのだが、今日は誰も側に寄ってくる気配がない。


それでも、キキョウの動向を常に気にかけている。

そんな気配が見え見えの状況だ。


「そう言えば、今日は緑川君、一人で学校に来てたよね、

いつもなら湯浅さんと一緒なのに」


聞こえよがしにそんな声が聞こえて来た。

キキョウはあえて無視を貫く。


「今日の玲奈、誰なのよ。岳と仲たがいとか?それはやめてもらいたいんだけど」

そう思いながら、キキョウは今日の玲奈を探った。

キキョウの持つ力で。


「ふーん、あいつか」

とキキョウ。


「気が進まないけど、しかたないか」

そうつぶやくと、キキョウは玲奈に向けて「力」を込めた。


そして昼休み。

「今日は一人で食べるか」

と机に弁当を取り出したキキョウ、その時、


「都留田キキョウさん、いますか?」

と大きな声がした。


教室の入り口に玲奈の姿があった。

玲奈はキキョウに駆け寄ると、


「キキヨウちゃん、昨日はどうもありがとう。あなたのお陰で助かったよ」

そう言いながらキキョウの手を握り、そしてハグした。


「よかった、大丈夫だった?」

とキキョウ。

お互いに手を取り合っている。


「なに、どうしたの?」

と岳が恐る恐る傍に来た。


周囲は呆然としながらその様子を見ている。

玲奈が、

「あのね、昨日どうしても叔父の家に家に行かなくては行けなくて」

と言うと、


「玲奈ちゃんのおじさん?あのデザイナーの?」

と周囲の女子。


「そうよ、こんどの親戚の集まりのためにドレスを作ってくれたんだけど、

昨日仮縫いだったのに、私、具合が悪くて行けなくて。

叔父さんは忙しいから、昨日じゃないと時間が取れないって。だから、キキョウちゃんに頼んだの。

私とキキヨウちゃん、身長も同じくらいだし、体型も似てるから。

岳と一緒だったのは岳のスーツも作ってもらうからよ」

と玲奈が言った。


「ねえ岳、なんで説明しないの?みんな変な誤解してるじゃない」

と玲奈が岳に言う。


「え、そうなの?」

と昨日、ショッピングモールで会った女子たちが言う。


「そうなんだ、キキョウちゃん、それじゃ仕方ないよね」

と女子の態度が変わってきた。


「ねえねえ、玲奈、ドレス作ってもらってるの?素敵だわ。出来上がったら見せてよ。

岳とツーショットのところ」

と言う声が上がる。


「もちろんよ。ねえ、岳。一緒に写メ取ってみんなに見てもらいたいな」


いつの間にか、岳と玲奈、そしてキキョウの周囲には人だかりができており、

皆、玲奈のドレスの話で盛り上がっていた。


「じゃあ、私は教室に戻るね、岳、今朝は、私が忘れ物しちゃぅたから先に行ってもらったけど、

帰りは一緒に帰ろ」

と玲奈がそう言い、教室から出て行った。


「そっか、キキョウちゃん、代役ごくろうさま。

さ、一緒にご飯食べよ」

と声がかかった。

いつも話しかけてくる女子たちだ。

その一番後ろに萌の姿があった。少し、バツの悪そうな顔をしている。


「玲奈?」

そう言いながら玲奈を追い廊下に出た岳。


「まあ、何はともあれ、ありがとう」

岳が言うと、


「ま、これはキキョウに貸しひとつね」

と玲奈。


「玲奈はキキョウの事を知ってるの?」

岳の問いに、


「知ってるも何も、腐れ縁よ」

そう言い残し玲奈は戻って行った。


下校時間、岳と玲奈、そしてキキョウが一緒に校門を出た。


「お邪魔しちゃって、悪いね」

そう言うキキョウに、


「まあ、貸しの対価は必要よ、見返りは何がいいかな」

と玲奈。


「きみたち、どういう関係なの?」

岳が聞く。


「私とキキョウはね、おなじ女神見習い。ライバルってことよ」

と玲奈。


「今日、あんたを送り込んでくるなんて、アテナの策略よね」


「私が来なかったら、丸く収められなかったでしょ。

そもそも、昨日、私を連れて行かなかったのが悪いのよ」


「昨日の玲奈じゃ無理でしょう。連れて行けないわよ」


「まあ、女神とは無縁だったからね」


「玲奈も、女神伝説を知ってるの?」

キキョウと玲奈のやり取りを黙って聞いていた岳が口を挟んだ。


「そういうことね、私も女神の血筋だもの。

キキョウほどエリートじゃないけど。

ねえ、女神伝説の続き、あなた知ってるんでしょう?

教えてよ。それが手助けした見返りよ」

と玲奈はキキョウに言った。


「面白い話じゃないけどな。

そんなに知りたいの?」

とキキョウ。


「あたりまえよ、リアルワールドの女神伝説、限られた者しか知ることができない。秘密文献に記されているの。あなたみたいなハイスペックは閲覧許可があるけど、私なんか手を触れることもできない。

あなたとは格が違うって見せつけられている、私の気持ち、わかる?」

岳とキキョウを交互に見ながら話す玲奈。

その表情は寂しそうだ。


「仕方ないな、じゃあ、教えてあげるよ。

そんなに卑屈にならないでしょ、あんただって優秀な女神候補じゃん。ブルー・ヴェスタ」


キキョウにブルー・ヴェスタと呼ばれたその日の玲奈。

窓ガラスに映ったその姿は、金色の髪にブルーの瞳、透けるよに白い肌をした美しい女性だった。


「じゃあ、始めるよ、女神伝説の続きの話」

キキョウが静かに語り始めた。

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