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365日、すべての君に「好き」を告げよう〜17歳の高校生、女神の呪縛を乗り越え試練に挑む  作者: 明けの明星


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23日目~チャミュの災難

チャミュはどこに?

「まあ、猫だもの、気まぐれなんだから。お腹がすけば戻ってくるわよ」

と真帆。


外に出たままいなくなったチャミを心配するも、もう外は真っ暗。

周囲を探すが、それ以上は無理だ。


さらに遠くまで捜索しようとしていた岳に、真帆が納得させるように言った。


「いや、でも」

と岳。


自分を守るって豪語していたあのチャミュが戻ってこないわけがない


しかし、家族にとってはただの猫、チャミだ。

これ以上、言い張るのもどうしたものか、

それに天使のチャミュもしかしたら、何か考えがあって出かけたのかもしれない。

そう思い、家に戻る岳。


その夜は、庭に出られる窓を少しだけ開けておいた。

しかし、その日の夜、チャミュが戻ってくることはなかった。


翌日、その日も連休、祝日だ。

いつもよりも早く起きて、セバスチャンを連れ散歩に出る岳。


「セバスチャン、チャミュを見なかったか?」

と聞いてみたが、セバスチャンは首をかしげるだけだった。


昨夜もセバスチャンは全く騒がなかったし、チャミュのことは眼中になしか。


岳がいつもの散歩コースをセバスチャンと歩くが、今日に限って違う道へをセバスチャンが進んでいく。

岳の持つリードをぐいぐいとひっぱるセバスチャン。

さすがは大型犬、力が強い。


岳は引き戻すことも出来ずそのままセバスチャンの行く方に付いて行った。

セバスチャンは岳を引きずるように走り出していた。

そして、着いたのは小さな公園だった。


公園と道路の境にある生垣に向かい一目散に走るセバスチャン。

そこで止まると、岳を呼ぶように振り返る。

そこには。


「チャミュ」

岳が叫び、生垣の根元に倒れている白猫の元に駆け寄った。

それは猫の姿のチャミュだ。


チャミュはずぶ濡れであちこち傷だらけだった。

かろうじて息はしているが、岳が呼んでも目を開けようともしない。


岳が自分の着ていたジャケットでチャミュを包んだ。


「玲奈のところに」

そう思ったが、日が変わった今、今日の玲奈はキキョウではない。


そのまま、大急ぎで家に戻った。

その道すがら、

「セバスチャン、チャミュの居場所を教えてくれたんだ。ありがとう」

と話しかけた。

セバスチャンは岳の顔を見ながら歩調を合わせて歩いていた。


家に戻ると、両親と真帆が待ち構えていた。

岳が帰りながらスマホで連絡しておいたのだ。


リビングにタオルを敷き、チャミュを寝かせる。

真帆と母が、泥の付いたチャミュの身体を拭いてやる。

それでも、チャミュは目を開けることも出来ないようだ。


「もう、動物病院、まだやってないわよね」

と母。


「救急車呼びたい気分よ、でも猫は運んでもらえないよね」

と真帆。


「救急搬送できる動物病院、探してみよう」

父がネット検索を始めていた。


「動物病院?いいのか」

と岳。

猫の姿をしているとはいえチャミュは天使だ、しかもあっちの世界の。そんなものを病院の獣医師に診せたらどうなるんだ。

岳の不安はつのる。


チャミュをこのままにはできない、しかし。


思案している間に父の声がした。


「ここ、救急外来ってのがあるぞ。都留田動物病院、24時間受付可能だ」


そこは玲奈の家の近くにある動物病院のようだ。

そういえば、古びた建物にそんな看板があったっけ。

岳は毎朝の散歩で見たことがある病院だった。


ネットで連絡を入れ、車でその都留田動物病院に向かった。

真帆に抱きかかえられているチャミュ、いや今は白猫チャミ。

動物病院に着くとすぐに、中に通された。


受付兼待合室のようなところで、


「じゃ、チャミちゃんをお預かりしますね」

と声をかけや助手らしき女性。

岳がその顔をふと見るとそこにいたのは、


「え?キキョウ?」

と思わず声を漏らす。


そこにいたのは、昨日の玲奈、アトロ・キキョウだ。

キキョウの本来の姿でここにいる。


「書類を書いてもらいたいので君も来てくれる?」

と岳に声をかけた。


両親や真帆が一瞬、「なぜ岳?」そんな表情になったが、岳はすかさずキキョウの後に続いて、

診察室へと入っていった。


診察室に入ると、キキョウはそのままもう一つ奥にある小部屋まで進んでいく。

そこには犬猫用と思われる小さなベッドがあった。


ベッドにチャミュを横たえると、手をかざすキキョウ。

その手から何かがキラキラしながら光り輝き始めた。

そしてその光がチャミュの全身を覆う。


すると、チャミュがゆっくりと目を開けた。


「チャミュ」

そう言いながらチャミュに駆け寄る岳。

チャミュはスルリと天使の姿に戻った。


「ねえ、あんた。なにやってんのよ」

そのチャミュにキキョウが強い口調で言った。


「なんで緊急通知発令もんの騒ぎ起こしてるの」

キキョウは続ける。


チャミュはすっかり小さくなりながら、昨夜の事を話し始めた。

「だってさ、昨日の夜庭に放りだされて、仕方なくその辺うろうろしていたら

この地域のボス猫ってやつに会っちゃって。

すごい勢いで、「おいお前、新顔だな、家猫か、それでも俺様に挨拶もしにこないとはなにごとだ」

とか言ってきたの。

でも、めんどくさいからスルーしてたらそいつの仲間もやってきて、僕を取り囲んで猫パンチし始めて、

逃げたら追いかけてくるし、ついに公園まで行ったところで水路に突き落とされたんだよ」


「それで、あの公園の生垣でうずくまってたってわけか」

チャミュの話を聞いた岳が言った。


「まったく、情けない。昨日優秀だって褒めたばかりなのに、なんなのよリアルワールドの普通の猫にやられちゃったってだらしないねえ」

とキキョウは辛らつだ。


キキョウの話によると、昨夜遅く、チャミュが窮地に陥っているという

「緊急通知」が女神の元に入ったのだそうだ。


「で、なんでキキョウがここにいるの?」

と岳。


「女神の指示よ。チャミュの救援隊として急遽ここに来たってわけ」

キキョウはそう言うが、


「でも動物病院にって都合いいところに来たもんだ」

と岳が言う。


「そりゃあ、ちょっと操作はしたんだけど」

キキョウは歯切れ悪く言った。


チャミュはすっかり元気を取り戻し、濡れた身体もキキョウに乾かしてもらっていた。

また猫、チャミの姿になるとキキョウに抱かれて待合室に連れていかれた。


「まあ、チャミちゃん、心配したのよ」

母がそう言いながらチャミを撫でる、真帆や父もだ。

チャミがうれしそうに、

「ミャア」

と鳴き声を上げた。


「すっかり家族だな」

岳は自分の心から安堵していることに少し驚きながらそう思った。

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