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11日目~難易度が

11目からはレベルアップ

「ねえ、玲奈、って今は私か、で、玲奈のいいところいっぱい思い出して、

別に私のでもいいけど、それでがんばって」

いつものように駅で落ち合うとすぐにその日の玲奈はすぐにまくしたて始めた。


その日の朝早く、犬のセバスチャンの散歩で既に出会っているその日の玲奈。

なんだかすごくせかされる感じがしている岳。


「ねえ、なんか焦ってる?大丈夫だよ」

という岳の言葉をさえぎるように、


「ねえ、昨日で10日目よね、ってことは担当がついたんでしょ?

レベルアップしたのよ、きみ。だから今まで通りにはいかないの」

と玲奈。


「担当?」


そうか、あの天使チャミュのことか。

確か、試練の担当天使だとか言ってたな。


「そうよ、担当が付くとやっと本格的な試練が始まるの。だから今までは違うのよ。

今までは言うならお試しってとこかな」

と玲奈が言う。


「そうなんだ、でもなんで君、そんなことよく知ってるの?」


岳がそう言った時、電車は既に地下を通っていた、窓ガラスに映るその姿、

「天使」だ。


「天使?」

と岳が驚きの声をあげた。


「天使が玲奈になったりするんだ」


「そうなのよ、でもね、私は別の子の試練担当天使もやってるから、早く帰りたいの。

ってか帰れないとまずいの。だから必ずクリアしてよ」

その「天使」である今日の玲奈が言う。

慌てて話すものだから、随分と早口だ。


ガラスに映るその姿は、チャミュより少し体が大きく、金色の長い髪、大きな瞳のとても美しい天使だ。

しかし焦りのためか、眉間にしわが寄っている。


電車を降りて学校までの道、岳と玲奈が並んで歩く。

玲奈からはずっと質問攻めだ。


「ねえ、玲奈と初めてデートしたのは?」

「ねえ、玲奈に初めてもらったものは?」

「ねえ、玲奈に初めてあげたものは?」

と、延々と続く。

鼻の頭にはあせをかいている玲奈。


そう言えば本物の玲奈も慌てていると、鼻に汗をかいてたな。

試験の前日、ほんの仮眠のつもりが朝まで爆睡したとかで、大慌てでこの道を歩きながら一夜漬けならぬ数分漬をしながら歩いたっけ。

その時の玲奈の顔、真剣そのものだった、が、岳にはどこかおかしく見えて、笑ってしまった。


もちろん、

「人が真剣なのに」

とバシバシ背中を叩かれたけど。


「かわいかったな」

と岳がつぶやいた。


その時の玲奈に似ている、

今、焦って鼻の頭に汗をかき、早口で話す玲奈が。


「好きだよ、そんな玲奈」


あ、言えた。


「あ、何?なになに??クリアじゃん」

と玲奈。


「ありがとう、よかった、クリアできて」

玲奈が岳の手を握り頭を下げる。


「べつにお礼を言われることじゃ」

と岳。


「私の受け持っている、試練の受験者がね、ちょっと困ったちゃんでねえ。

もう目が離せなくて」


「そんなんだ、僕のほかにも試練を受けている人っているんだね」

岳の言葉に、


「そりゃあ、いるわよ」

と玲奈がいうが、それ以上話そうとはしなかった。


「ねえ、せっかくだから名前教えてよ、君の」

岳が聞くと、


「私?私はね、キエルっていうの。みんなはキエリィって呼ぶけどね」

と玲奈。


クリアできたことですっかり安心したのか、玲奈はいつのまにか歩みも遅く、話し方も早口ではなくなっていた。


「じゃあね、私はこっちだから」

と玲奈が自分の教室に向かって走って行った。

その日の玲奈を見たのはそれが最後だった。


その日の夜、「今まではお試し期間」という言葉を気にする岳。

「今まで通りにはいかないってことか、難易度ってどれくらい上がるんだ」

と思案する。


それでも、玲奈のいいところ、それはたくさんある。それはすべて岳の好きなところでもある。

だから、大丈夫だ、それに日替わりの玲奈、毎日なんともユニークではないか。

その子たちのいいところもどんどん見つけて行こう。


でも待てよ、いいところを探す、それが「好き」につながるのか。

いいとこ探しをするのが目的ではないじゃないか。


ここでまた不安が募る。

じゃあ、どうすれば。


「今度チャミュが来たら相談するか」

と20日目を待つことにする岳。


それまでは自力でなんとかするしかない、まあ、大丈夫だろう。

根拠のない自信がみなぎる岳。

チャミュは頼りになる、自分の担当がチャミュでよかった。


今日の玲奈、キエルという天使も誰かの担当なんだ。

どんな奴なんだろう、困ったちゃんだなんて。


ま、激励でもしておくか、

「担当してる困ったちゃんのお世話がんばれ」

とメールする岳、もうすぐ日付が変わる。


「呑気だね、岳は。私が担当しているのは」

その日の玲奈がそうつぶやいた時、時計の針がちょうど0時をさした。

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