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  作者: 鬼畜原 末吉
第三章 消えない過去
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運命

第八話

言葉が出ないとはこのことか。なんて声をかけるべきかわからない。そもそも声をかけるべきなのだろうか。

「なんとなくにしては、いい名前だな。ロス、か。」

彼女は両手を顔に当てて伏せたまま、動かない。そもそも俺が彼女を理解し、彼女を慰めることなど、不可能なのだ。俺は、彼女のような過去があるわけではない。いやむしろ真逆だった。俺は飼い主、その周りの人たち、全員に愛されて育った。それに飽きた。それが嫌になったなんて、口が裂けても言えない。もしそんなことをぬかしたら…彼女はこの巨鳥のでかい背中から飛び降りるかもしれない。彼女は愛を知らない。ロスとの関係も、ロスは彼女を恩人だと思っており、友や愛とはまた違ったものなのだろう。

「りん…」

その時、ロスは高度を下げ始めた。どうやら向かっていた場所に着いたらしい。りんは顔を上げ、

「ありがとう、じい。」

とつぶやいた。

そうして着いた街は、俺の知っている街。嫌と言うほど知っている街だ。りんはロスに礼を言い、帰るように促す。もちろん、別れたいのではない。だが彼には彼の生活もあり、何より変な鳥、扱いされるわけにはいかないという優しさだった。

そうして、また二人きりになった。だが休む暇もなく、俺の最も恐れていたことが起こる。

「ガノフ―」

それは俺の名だ。

そう、ここはほかでもない、俺が生まれ育った街だ。



続く


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