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碧眼の彼女  作者: さんれんぼくろ
第二章 プレイゲーム
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第一〇一話 変わらないで

前回、賑やかな家庭で楽しい会話をしました。

 挿絵(By みてみん)


 賑やかだったご飯のあと、いつものように風呂に入ってから地下のサウナへ行った。


 今日ぐらいはいいかとも思うんだけど。


 一日一日行うルーティーンというものは、一度変えると調子を保てなくなるんだとか凪さんが言ってたのだ。それを思い出して、疲れた体に言い聞かせながらいつもと変わらないように過ごす。

 帰ってくるのが遅かったから鍛錬はしてないけど、筋トレとイメトレだけはするとして、1つやっておきたいことがあるからいつもよりは早く出ることにした。


「……もうちょい絞れっかな」


 鏡に映る自分の体は、ほとんど無駄な肉は無い。我ながらまあまあいい体してんじゃねぇのとは思うものの、凪さんに比べたらまだまだな俺。


「改善の余地ありか」


 独り言をぶつぶつと言いながら、服を着て自室に行くためにリビングの近くを通る。


「隆、隆」


 そこにいた母さんが、珍しく小さな声でニコニコと俺に声をかけた。


「なに?」

「珍しいものが見られるからこっちおいで」


 何だ? 我が家の中で珍しいものなんてあったっけ。

 いや、無いから珍しいんだった。


 若干不審に思いながらも連れられてリビングの中に入る。すると、確かに普段は絶対に見ない、というか見せてはくれない珍しい光景がそこにあった。


 未来が、寝落ちしてる。


「疲れたみたいね」


 テレビの前にあるソファーに横になって、静かに寝息を立てているなんて姿は、今までに一度も見たことがない。

 ストイックな未来だから、いつも絶対その日のメニューはこなしてからキチンと自分のベッドで寝るのに。


 母さんの言う通りかなり疲れたのだろう。


「部屋連れて行ってあげて。起こさないようにね」

「ああ」


 それだけ俺に頼んで部屋を出る母さんは、父さんに風呂に入るよう言いに行ったらしい。

 ゆっくりと慎重に首の付け根と膝に腕を通して、抱き起こそうとしたときだ。小さな声が聞こえた。


「……いで」


 その小さな寝言を発した未来は……泣いていた。

 起きているわけではない。

 目は閉じたまま、涙が筋になって流れて横髪を少し濡らしていく。


「怖い夢でも見てんのか」


 拭っても拭っても、そのすぐそばから溢れ出てくる涙。

 そして、どうやら何度も同じ言葉を繰り返し発しているらしかった。

 何を言っているんだろうと、未来の口元に耳を近づける。


「か……ないで……」


 か細い声で、あまりよく聞き取れないものの、その断片だけで俺は未来が何を言っているのかを察した。


「……あいつの夢でも、見てんのか」


 とめどなく溢れる涙は、怖いからじゃなくて、きっと……悲しみ。


「大丈夫だよ。変わらねぇから」


 未来が漏らす『変わらないで』の願いに、もしかしたら起きてしまうのではないかと思うぐらい、強く抱きしめた。


「俺だけは、絶対に変わらねぇから」


 お前への思いも、決意も。

 絶対……変わったりしねぇから。

お読みいただいてありがとうございます。


『変わらないで』


何に対して、どうして、変わらないでと言っているのか。

そして、隆一郎の『変わらない』という言葉。


それらは何を意味しているのか。

答えはまだ先になります。


《次回 協力者》

隆一郎が電話をする相手は……。

よろしくお願いいたします。

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