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剣士対鬼、ひとつ

 女剣士はしばらくようすを見ようとするが、鬼はお構いなしに攻撃して来る。ジュゼの体力は有限だが相手の体力は底無(そこな)しだ。巨大な腕を振り回してつかみかかる鬼。女剣士はグレートソードを振るってこれを避ける。ジュゼは攻撃よりも先に身を(まも)る選択をした。しかしながらこれは裏目に出てしまい、いたずらに体力を消耗(しょうもう)することになる。


「エェーーーイッ!!!」


 剣を振り鬼の脚を切り払う!(やいば)は深く「雪」を(けず)ったがそれだけだ。鬼は倒されるどころか、ますます勢い付いて、一人で戦う女剣士を捕まえようと腕を伸ばす。


 ジュゼは片手で剣を使いそれを(ふせ)いだ。鬼のもう片方の手が彼女を()(つぶ)そうと迫る!雪に足を取られながらも、倒れるようにしてジュゼは()けた。


 誰も見ていない雪上(せつじょう)で、剣士と鬼の激闘は続く。もし村の人がここに居たら、ジュゼへ逃げるようにと叫んだだろう。しかし、もしそうだったとしても、彼女は鬼に背を向けたりはしない。女剣士を支える信念を見よ。その目に宿(やど)る光は闘志(とうし)か、それとも……?


            *     *     *


「正しいことをしているつもりかね?」と村長は()いた。

 正しいかどうかは分からない。ただ、これ以上傷付く人が出るのを放置してはならなかった。


 <吹雪の鬼>は、もごもごと人の言葉で悪態(あくたい)をついている。鬼とはそういうものだ。人の悪心や邪念が動かしているのだから。ジュゼへ語りかけているのではない。無意味に人の使う言葉をつぶやいているのである。

「……もっと温めてくれよ……あいつが憎い……腹がへったよ……」


 鬼は言うことと行動がちぐはぐである。中には人に近い知性を持ち、人とコミュニケーションを取るものもあると聞く。しかし眼前(がんぜん)の鬼は(かしこ)さを持たず、見境(みさかい)なく人を襲う魔物でしかない。雪は横から吹き付けたかと思えば静けさを取り戻して降り積もる。


 先ほどの小さな雪ダルマは、なぜ降り止むことを知らない雪に埋もれてしまわなかったのだろう?そもそも人の手で作られたものなのか、最初から岩山の上にあったのかも(あや)しい。もしかすると村で作られたものに鬼の念がとりついて移動したのかも知れなかった。恐ろしいことに。


            *     *     *


 皮肉ではあるが、そうした鬼を生じさせるのも人なら、鬼を退治するのもまた人である。攻撃を一発食らって吹き飛ばされる女剣士。しかしすぐさま起き上がり、白い息をハーハーともらしながら体制を整える。


 見上げれば<吹雪の鬼>の(ゆが)んだ顔。ジュゼの攻撃は全て、雪に吸収されてしまう。果たしてこれで鬼に勝てるのか疑問だ。


 ジュゼとて、襲われた人や家屋(かおく)を見て心が動かなかった訳ではない。内面の動揺(どうよう)をおもてに(あらわ)さないことで、外見だけでなく心も強く保ったのである。「信念」を行うためであろう。強いマインドコントロールを自分自身に(ほどこ)しているのだった。


 剣士と鬼、ふたつの影が雪の上でもぞもぞと(うごめ)いている。だが現実には両者ともに素早く動き回りつつ攻撃をくり出しているのである。

「しぶといわね……!」

 わずかな(あせ)りを見せるジュゼ。あの鬼が村の小さな畑を荒らす前に仕留(しと)めねばならない。瞬間、(はげ)しい突風が雪を両者へ叩きつける!ゴウゴウと猛烈に吹雪いているその中で、ふたつの影はひとつに固まった。


 ジュゼはどうなってしまっただろう?女剣士に上へおおい(かぶ)さるように、<吹雪の鬼>は大きく体を伸ばして倒れ込んで来た……!


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