白い戦士、呼ばれる
初めての投稿になります。長く続けますので、どうぞよろしくお願い致します!
今日もまた雪が降る。たくさんの白い結晶が静かに舞い降りる。
村の名は、仮に「マハド」としておく。建物は二十と少しある。最近になって村と村人を<吹雪の鬼>が襲うようになった。しかも雨さえ少ない荒れ野に在りながら、村の周囲は一面の雪景色に。凍てついた荒野に降り積もる雪の中を、一人の「雪女」が……しかし良く見ると雪のように白く美しい女剣士だ……歩いてくる。
村に着くと彼女を村長が出迎えた。きっと遠くから歩き来るのを見つけたのだろう。五十代くらいの男性で、降雪の中、その女性の到着を待って立ち尽くしていたのだ。話しかける。
「あんた、何だね。私どもの村に何の用かな」
「ごあいさつね。あたしはジュゼ。見ての通り剣士をしています」
「村長をしている者だ。これ以上、村に入らんでくれ」
「おかしいわね。ここへ呼ばれて来たのだけれど」
「何をしに来たのかね?」
ジュゼと名乗った女性の剣士は一度、目を伏せた。顔を上げ村長を見つめる。
「戦うために来ました」
* * *
そこへ一人の老人が現れる。男性で年齢は八十を越えていると言う。自分は村の「長老」だと告げた。村長は村の人々をまとめている。長老は皆が手に負えないトラブルに見舞われたときや、ここぞというときに発言して知恵を与える役目だ。
長老によると、雪が降り始めてから……そして<吹雪の鬼>が現れてから、今日でちょうど一週間になる。けが人も出ているという話だ。村の中にも雪は積もっていた。低い鈍色の空のずっと遠くに、峩々たる山々が連なっているのが、垂れ込めた雲からわずかに垣間見えている。
村長の家の前で、村長と長老は口論になった。
「ワシが彼女を呼んだ」と長老。「他に手はあるまい」
「よそ者が村に滞在するのには反対です!規律が乱れる」
相容れない二人の男性。長老は、少なくて白いあごヒゲを撫でながら、自分の息子ほどの歳の村長にさとして聞かせた。
「外の空気を運んで来る者を恐れてはいかん」
「恐れてなどいません!……私は村の者たちを今まで通りにまとめたいと……!」
「それを恐れていると言うのだ」
「仕方ありません。皆で相談しましょう」
* * *
村人たちは村長が呼ぶと家から出て来た。ジュゼは村の中央に置かれたベンチの雪を手で払いのけて、そこへ座る。村人は、見えるだけで100人以上は居るようす。女剣士と契約するのか、つまり彼らを苦しめる<吹雪の鬼>の退治を依頼するのか、えんえんと話し合いが行われた。
村人の半数が反対、半数が賛成と見える。中でも若者や子供たちは、その大半が賛成の側に回った。
「剣士さんに頼んだら!?だって誰も戦えないんでしょ?」
「子供は数の内に入らん」と村長。「あっちへ行って遊んでなさい」
チェッ!と異議を唱えたのは、どこの家の子だろう。
「剣士」というのは、文字通り様々な「剣 つるぎ」の使い手のことである。しかもその多くは自分の「信念」に従って活動している。人助けのため、時代を変えるため……ジュゼは何のために戦う?
彼女の信念とは?白いコート姿の女性戦士の腰に下がっているのは、剣の中でも特に大きく立派な「大剣 グレートソード」だ。持ち主もそれに合わせてすらりとしており長身である。
ところで、どうやって長老は剣士たる彼女を村へ呼び寄せたのだろう?