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第九話

 竜馬が工房で待機を始め、二時間は経過したか。

 ただ待つだけ時間は非常に長く感じ、そわそわと余計なことばかり考えていた。

 勢いで出撃を言い出したことに後悔はしていないが、些か軽率だったかとは思う。

 何しろ戦う相手が見えていない。囮や陽動と思い付いたことを口にしたが、無論、具体的な策があるわけではなかった。

 アリウスがそんな竜馬の提案にも乗ったのは、それだけこの街が追い詰められている証拠に他ならない。そして現状を打破出来なければ、この街以外に行く当てがない竜馬にとっても死活問題であるのはいうまでもなかった。


「リョーマ、大丈夫だと思うけど、一度乗ってみて頂戴」


 と、呼びに来たのはティニアだ。

 緊張の面持ちで格納施設へ向かうと、既にファーニバルは準備されていた。

 改めて見上げるファーニバルは、レーベインを始めとするこの街のウィスタに比べると一回り小さく、十二メートル前後といったところか。

 アリウス、ロイ、ティニアの三人が見守る中、縄梯子を使い、赤い機体の胸部に乗り込み、席に着く。

 機体が一回り小さい所為か、レーベインに比べて同調する感覚がより鮮明になっていた。


「リョーマ、動かせそう?」


「やってみるっす!」


 ティニアに返事を返し意識を集中すると、ファーニバルは一歩踏み出して見せた。

 翼と尻尾があるにも関わらず、バランスも問題ない。まるで自分の手足を動かしていると錯覚してしまうほど、竜馬はファーニバルと見事に同調リンクしていた。


「行けるっす!」


「いいかリョーマ、君のために輜重隊を編成した。行き先は彼らに従ってくれ。君の心意気は買ったが、くれぐれも先行する魔導師たちの邪魔だけはしないこと。それだけは約束してくれ」


「了解っす!」


 竜馬は一度深呼吸をすると、確かな足取りで格納施設を後にする。

 ファーニバルの背中を見送るロイは、隣のアリウスに言わずにはいられなかった。


「アリウス様、本当によかったのですか?」


「何をだ?」


「ファーニバルを余所者に使わせてしまうことです」


「リョーマが逃亡したら、とでも考えているのか」


「確かに根は悪い人間ではないでしょう。しかし己に危機が迫れば、何時心境の変化が起きるとも限りません」


「そうなったらそうなったまでの話。ファーニバルは王家の象徴などと呼ばれているが、実際は数世代前の旧式ウィスタに過ぎない。仮に私に魔導師としての素養があっても役に立てることが少ない骨董品。そろそろ処分の検討をしていたところだ」


 正直なところ、リョーマには大した戦果を期待していない。それがアリウスの本音だ。

 それでも送り出したのは、この街が助かる一助になればと、一つでも多くの手を打ちたい為政者としてのさがに過ぎなかった。

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