13話ラブコメ主人公はTL先輩には敵わない
短めです。
…TLでした。
浅黒く日焼けした肌。
僕らよりも頭一つ高い身長と服の上からも分かる筋肉質な身体。
上履きのライン色から彼が1つ上の学年だと分かるが、その精悍な顔つきはもっと上の男だと感じさせる。
なんというか、その。
「NTRもののに出てきそう」
「「TLに
出てきそう」」
「「「え?」」」
三者三様というか三者二様の発言に疑問符が重なった。
「いや、この状況はどうみてもNTRものの人じゃん!」
僕が憤慨したように二人に向けて言うと
「えー、違うよね。そんな軽薄そうな感じじゃないし」
「なんというか、顔もそうだけど腕の血管とか長い指とか目が行くよね。別にTL読んだことないけど」
分かってないなぁといわんばかりの両の掌を上に向ける2人。いうか早乙女は今更何を守ろうとしているんだ。
「TLってあんな感じなの?」
「うんまぁ・・あんな感じかな。知らないけど」
早乙女がそっぽを向きながらつぶやく。
コイツ官能小説だけじゃなくてTLも読んでるのか。
なんか嫌だな……。
「じゃあ、多数決とってTL先輩ね!……いや私的には後輩か」
番原先輩の提案に僕も渋々ながら従うほかない、多数決なのだから。
それにしても・・。
「うぅ……美菜……」
柱の陰でうずくまる山内と先輩を見比べる。
双方ともに容姿は同じくらいのものがあるが、それ以外のところで明確な差というものを感じる。
そうかこれが、
「「「ラブコメ主人公じゃあTL先輩には勝てないかぁ」」」
「うわあぁん」
負け犬の遠吠えが廊下に木霊した。
◆◆
柱の影で山内は頭を抱えてしゃがみ込み、膝に顔を埋める。
肩は小さく震えていて、もしかしたら泣いているのかもしれない。
「……知らなかった」
小さな呟き。それが、山内の本音だった。
そっと山内の背中に手を置く。
「山内……」
「俺……美菜のこと、ずっと好きだったけど……美菜は、もう……んなんか呼び捨てになってない?」
細かいこと気にすんなよ。
「諦めるの早く無いか?まだ勝負はこれからだろ?」
こいつ本当に河上さんの好きなのか怪しくなってきたぞ。
正直、中学時代にあれだけ見せつけられた身としては2人にはそう簡単に終わって欲しくない。
「ただの仲の良い先輩後輩なんじゃ無いかな?邪推しすぎだと思うけど」
「本当にそう思う?」
縋り付くような山内の視線から逃れるように残りの同伴者である2人に助けを求めると
「咲月ぃ、気休めはやめなさいよ」
「あはは…あれは…ちょっと仲が良いではねぇ、無理があるかなぁ」
2人が指す方を改めて見ると、
体制を崩した河上さんと先輩がそのまま抱きつく形になっているのが見えた。
「あ、やっぱ無理かもしれない」
「うわぁぁん!」
非常な現実に山内は声を上げる。
そんな彼に番原先輩が拳を振り上げた。
「ちょっと大きな声を出さないでよ!」
慌てて僕が山内の口を塞ぎ、振り上げられた番原先輩の拳早乙女が押しとどめる。
この先輩、言動が暴力的だよ。
そういうとこで振られたんじゃないの?
「ちょ、先輩! けが人ですから!失恋という名の傷を負った。 山内も泣くな、まだ死んでない、恋は多分まだ死んでないから!」
「んぐっ、ふがっ……!」
もがく山内を柱の影に押し込み、俺たちは息を潜めた。
ここで騒ぎになれば、あっちの「超絶いい雰囲気」な二人にこちらの偵察
というかストーキング一歩手前の行為がバレてしまう。
あらためて視線を向けると、河上さんは顔を赤くしながらも、
先輩の腕の中で申し訳なさそうに、けれどもしっかりと支えられ部室の方へと歩き出していた。
……うん、どう見ても「ただの先輩後輩」が踏み越えていいパーソナルスペースを数センチは突破している。
なんというか男子と女子というよりも男と女を感じさせる雰囲気だ。なんか正味、えっちだ。
「あれがTLよ。こうなると破局は時間の問題ね」
なんてことを言うだこの先輩は。
「……そ、そんな!僕はどうしたら良いんですか!?恋愛マスターなんでしょ!」
「山内、この先輩は恋愛マスターなんかじゃないよ。ただのTL読者だ」
「さっきからそのTLって何!?」
こいつ最早共通言語となっているTLすら知らないとは……負けるのも必然か。
「簡単にいうとアンタは恋愛始まりの街すら出てないレベル1の勇者であっちは、隠しダンジョンも周回済みのレベルカンストの勇者ってことよ」
「いや…それは言い過ぎじゃ…のび太と出来杉君くらいだよ」
全然フォローになってないよ早乙女。
秘密道具なしの山内じゃ勝ち目ないだろ。
「勝ち目がないってことぉ!?」
不憫なハチワレはやっと現実を理解したらしい。
ここまでくると最早可哀想になってくる。
「早乙女は河上さんからなんか聞いてないの?」
詳しくは聞いてないが早乙女と河上さんは中学以前からの付き合いである。同じ高校になってからも交流は続いているし、僕から見ても親友と言っても差し支えない距離感だ。
「ん……いやぁ、あんまりそういう話は聞いてないけど」
途中言い淀む早乙女になにかの含みのある感じる。
ただ嘘ではないのだろう。
「ほ、ほら。まだそういう関係じゃないんだよ。大丈夫だよ!」
あまりにも苦しいフォローだった。
そしてそんな頼りないものすらも先輩は無碍にし、持論を展開し始める。
「いやぁー、無理じゃない?今時鈍感系がオラオラ系に敵うわけないじゃん。私だって明だってねぇ、煮え切らない関係が続いてたらオラオラ系にクラってくるよ」
「いや、私は別にこないですから」
「いやでもさ考えてみてみ、出来杉君がオラって来たらどう?」
「それは…アリかも」
「でしょ?」
TL版出来杉の話はもういいよ!
どんだけ出来杉好きなんだコイツら。
てか、TLの出来杉ってなんだよ。
頼りになるはずの女子2人が出来杉の話に夢中になる
その傍。山内は魂が抜けたような顔で虚空を見つめていた。
「これはやっぱりアレしかないんじゃない?」
「あれってなんですか」
どうせまたコンドウさんだろ?
そう目で訴える僕に番原先輩はニヤつきながら、舌を鳴らす。腹立つなぁ。
「てってれてっぇてれー、電気負荷ぁ!」
お馴染みの効果音を口ずさみ、最初期暗記パンの不謹慎ネタと共にスカートのポッケから飛び出してきたのはやっぱりコンドウさんだった。
誰がそのネタ分かるんだよ。
それに……。
「先輩、てってれてってれーは古いですよ。今はてってれーんです」
「そこぉ!?」
山内、僕も疲れたんだよ。
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