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僕の”前の席”がラブコメしてる。  作者: 雛田いまり
①僕の”前の席”がラブコメしてる バカと自意識過剰な早乙女さんの場合
10/11

突きあえばいいじゃない!

俺、山内海里と河上美菜は所謂幼馴染というやつである。


元々、親同士が大学時代からの友人同士で家も近く何かと一緒に過ごすことが多かった。最初は親同士が集まる為の口実に使われている感じがして、何でこいつと遊ばなきゃいけないんだなんて思ったりもしていた。


正直、最初は仲はあんまり良く無かったかな?

でも、それが変わったのは……えっ?それ長くなりそうだって?うんまぁ、え、割愛?


いやでも、……アッハイ。


えーとそんなこんなで今日まで付き合ってるんだか、好きあってるんだからよく分からない関係が……えっ?突き合ってる?


あの、番原先輩は黙ってて貰えますか?


えっと…あの、その…最近妙によそよそしくて…高校入ってからクラスも違うし、当然一緒にグループも違うし…その、つまり、疎遠になりそうなんです……。


◆◆


何だろう。

すごい、すごい胸がスッーとします。

こんぐらっちゅれーしょん!

こんぐらっちゅれーしょんですよコイツは!


殆ど机に突っ伏した状態で項垂れる山内に感じたことを率直に言えばそんな感じだった。

なんか台風が来たみたいな、クラスの女子が突然泣き出した時のような、不謹慎なお祭り感があった。


笑っちゃダメだ、笑っちゃダメだ、笑っちゃダメだ。


今目の前にいるのはストレッチャーで運ばれてきたズタボロになった愛の飛行空士だと思え。


息を止め、歓喜の感情が漏れ出るのを必死に堪える。視界に山内の入れると耐えきれないので、顔を横にずらすと、これまた同じように頬凹ませて必死に耐える番原先輩が見えた。


最低だよこの人。

あんたが相談しろって言ったんじゃないか!

しかも、話聞いてる最中に変な茶々入れるし。

何だよ突き合ってる?って男子中学生かよ。


そしてさらに別の方、早乙女はと言うと興味が無いのか誤魔化しているのか、爪の甘皮を弄っていた。いや、ちょっと口元がモチャモチャしている。こいつもまぁまぁ最低だ。


「ねぇ、俺はどうしたら良いと思う?」


山内の問いかけに僕らの間に緊張が走った。

ここは冷静に。何でも無いかのように振る舞うんだ!


「あぇ、そ、そうだなぁ…未だ高校入ったばかりだしさ。新しい友達との付き合いとかもあるだろうし、疎遠っていうのは考えすぎじゃないかな?」


疎遠になれ!疎遠になれ!

秒速5センチどころか、秒速30万キロくらいで思い出になれ!


「でも……中学の頃は毎日一緒に登下校してたし、家にだって…」


次第に言い淀む山内は何かを思い出し、それを振り払うかのように頭を振る。そのほんのりと赤らんだ耳が僕の想像を掻き立てて止まない。


またウジウジと顔を上げず、続きも話さない山内に神経が苛立つ。


家にだって何だよ。

早く続きを話せよ。

このミーティングは録音されています。


「只野は優しいな。そんな前のめりになって聞いてくれるなんて、こんな事ならもっと前に相談していれば良かったよ」


「……僕たちは中学校からの仲じゃないか!これくらい当然だよ!」


山内に言われるまで自分が前のめりになっている自覚すらなかった。完全に苦し紛れの発言だったが何とかとりつくのに成功したのか、山内は若干涙ぐんでいた。


こいつが鈍感系で助かったぁ。


「それ比べて俺は自分のことばっかりだ……してほしい事ばっかりで自分な美菜に何かをしてあげようなんて考えもしていない」


あーまたバッド入ったよ。


誰かこいつをどうにかしてくれと他の2人に視線を送るが、完全にこちらに興味を失ったのか、番原先輩と早乙女は別の女子トークに夢中のようだった。


いつの間に仲良くなったんかコイツら。


仕方ないここは僕のこれまでの人生を持って生み出した名言でコイツの人生に一筋の光を指すしかない!


「あーうん。それはダメだよね。相思相愛って言うくらいだしお互いのことを思わないとね」


うーん、薄っぺらい!笑

制作時間数秒の渾身の名言はやっぱりダメだ。

何だろう言葉に経験値が全く乗ってないね。

AVを教材にして自身がAV男優くらいテクニシャンだと錯覚してる童貞かな?

自分で考えて悲しくなってくる。


「相思相愛か……只野は良いこというな。なんか響いたよ」


嘘つけお前!

適当こくなよ!


「俺、見えてきたよ。なんか焦ってた。もしかしたら美菜が誰かの付き合ってたりしないかとか…でも、そんなの考えすぎだよな。まだ入学したばっかりだし、同じクラスの友達が何が好きかのかそういうのを少しずつ知っていく時期だもんな」


「あーうん。ソウダネ」


よし!そのまま疎遠になれ。

そして僕の方が先に好きだったのにぃ!って咽び泣け。


もはや何の発展性もないような相談だったが、

山内の顔は晴れやかだった。そして僕もこいつの恋の邪魔ができて満足だった。


これで一件落着。

そんな空気をぶち壊したのはやっぱりこの人だった。


「あのさ、あんた達って別に突きあってないんでしょ?」


立ち上がり腕を組んだ番原先輩が山内に訊ねた。


おいっ!余計なことするな!

こいつの背中を押してゴールインしたらどうするんだ!

僕の努力を無碍にする番原先輩の口を塞ぎたくて堪らない。


「はい……付き合っては無いです」


「なら、簡単じゃ無い!突きあえばいいのよ!」


さも名案かのように高らかに宣言する番原先輩。


ん?


邪推かもしれないが、語感が別のことを意味しているような……。

というか、あの人が手に持ってるのって…。


いや、まさか。

見間違いだと誰かに言って欲しかった僕は早乙女に声をかけると


「……早乙女、アレって」


「違う!偶々だから!偶々貰っただけだから!」


いや何の話?

てか、お前机汚ねぇな。


ぶんぶんと腕を振りながら何かの言い訳をする早乙女。その慌てようよりも、その前にある机にぶちまけられたコイツの鞄の中身が気になって仕方ない。


「男ならこれ一択よ!名付けて仲直りえっちだいさくせーん!」


完全に状況がカオスになっているのもお構いなし。番原先輩の天高く掲げられた手には大人のエチケット。薄い近藤さんが握られていた。


うーん、酷い!

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