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★★★決めかねる★★★

 そんな状況に響いて来る、恨み辛みの籠った怨嗟の声が。


 森の中には少しづつ朝日が通って来ており、所々が光って幻想的な光景になっているのに、その声はこの場には似つかわしくない。


「誰だ!?」


 隊長さんが意識を切り替えてその声の主に対して気を吐く。


 しかし怨念が籠もった声はソレを無視してずっとぶつぶつとこちらに響いて来ていた。


「見つけたぞ・・・とうとう見つけた・・・お前さえ・・・お前さえいなければ!私は!」


「殺してやる・・・殺してやるぞぉぉぉぉ・・・お前の罪を徹底的に理解させた後に無残に!惨たらしく!魔物の糞へと変えてやるぅぅぅぅぅ!」


「何故私がこんな目に遭わねばならなかったのだ・・・お前さえ・・・お前さえいなかったら私は今頃ぉぉぉぉぉ!」


「どうしてだ・・・私が何をしたというのだ・・・私は掟に従って行動したに過ぎない!なのに!同胞たちは!・・・この仕打ち・・・クソおおおおおおおお!」


「全ての元凶は・・・お前のせいだぁぁああああああああああああ!」


「お前を・・・お前を殺さないと・・・私は!私はぁぁぁぁぁ!」


 どうやら既にぶっ壊れ案件な人物である模様。そして俺はこれに思い切り顔を顰めざるを得なかった。


「逃げたいな・・・あの声、覚えがあるんだよねぇ。忘れたかったけど。隊長さん、マリ、ベラ、俺ちょっとここから離れるから。あいつが俺以外を狙ってくる事も考えないといけないしね。あの分だと無差別に襲ってこないとも限らんし?後で事情は説明するから。んじゃ、ちょっと逃げるわ。」


 俺は一人森の中を走って逃げる。怨嗟の声が遠ざかる方向に。

 ここで呑気にマリが「いってらっしゃい」と見送りの声を掛けてくれていたが、それに俺は返事をせずに真っすぐ森を突っ切った。


 これに背後から「待ちやがれええぇぇ!」と迫る叫び声。


「コッワ!ホラー苦手なんですけどね?うっわ!何コレ!結構本気で走ってっけどコッチは!追い付かれそうなのナンデ!?」


 幾ら木々が邪魔だとは言えども俺に追い付く速度を出して来ている追跡者。


「いや、なんだこれ?さっきから何だか微妙に木の枝が邪魔してきていないか?」


 風も無いのに木々がざわついているのに気が付いた。そしてとうとう木の枝の一本が唐突に俺の目の前に不自然な動きで道を塞いできた。


「うおぉっ!?これってそう言う能力的な何かかよ!?アイツがやってんのか!?」


 背後を振り返れば追跡者はぐんぐんとこちらに迫って来ていた。

 しかも木々はその通り道を開ける様にしてそのルートに重なる枝などが自然と避けて行っていた。


「流石エルフぅぅぅぅぅぅぅ!そう言う事簡単にできちゃうのねえええええ!」


 追いかけられるスリルに俺は思わず声を大きくしてしまう。

 そう、相手はエルフ、森の民。この怨み様だと多分俺の「凶手」の効果がそのまま出たのだろう事は直ぐに推察できた。


 そう、俺があの森で連れて行かれた先で意地の悪い事をして来たあのエルフである。

 奴の住居?があったであろう木、奴が俺へと見下した目で「上って来れるなら来てみろ」的に立っていたあの木。


「アレ多分死滅しちゃったんだろうなぁ。別に後ろめたい気持ちとか一切無いけど。」


 そんな事をぼやきながら進路に突然出て来る木々の枝をぶっ飛ばしつつ走り続ける俺。


 ある程度逃げたとしても、このままでは俺に不利な状況であのエルフと接触になる。

 木々の無い開けた場所に出なければこのままエルフと戦闘になると木々がそこに邪魔をしてくるとみられる。


「つってもさー?ここ、何処ヨ?」


 迷子だ。遭難だ。何も考えずに走り続けて方向すら今は分からない。

 何も考えずに飛び出してしまったのはもう後悔しても遅かった。


「救助は見込め無いかぁ。どうすっかな?」


 呑気な事を言っている間にもエルフは僅かずつ俺へと接近をしてきている。

 目が血走っているそのエルフは口元がニヤケていて非常に狂気を醸し出していた。


 そうして何時まで走っていただろうか?どうにも相当な距離を走ったのか、森が途切れて目の前に草原が現れた。


「ワッフー!ギリギリ間に合った!さて、話し合いは・・・通じ無さそうだな。よう、久しぶり?元気してた?俺はちゃんとあの時言ったよな?それ、ちゃんと聞こえてただろ?全部俺のせいにしようとしてるその根性はどうなの?傲慢なの?俺はお前の事情もその掟ってのも何も知らんよ。責任転嫁をしてくんなよこっちに。」


「・・・死ね!」


 問答無用で弓で矢を射かけられた。やっぱり駄目である。俺の煽りにも反応してこないと言う事はもうこのエルフの精神は相当に堕ちてしまっていると言う事だ。


 コチラの言葉が耳に入っていないと言う事は、向こうは自分のしたい事だけを俺に押し付けるつもりだと言う事。

 そしてコレが答えである。エルフ、俺を殺害する気Maxハート。


「うーん?飛んで来る矢を掴めるとか・・・ファンタジーと言うか?ニシシンクウハ?的な?」


 出来てしまった事にちょっとした驚きである。まあそれだけの事が出来てしまう身体スペックであるのだが。

 飛んできた矢を掴む事を簡単にできてしまう俺。これに次の行動をどうしようか悩む。


「はてさて、俺はこの後どうするべきなのかね?コイツ、殺しちゃうの不味く無いか?」


 ここで既に早々に弓矢では俺を殺せないと判断したんだろう。エルフは腰に着けていたナイフをサッと抜いてこちらにゆっくりと歩み近づいてきている。


「反省もしない、後悔もしてない。俺はやりたい様にやった。その結果が、これねぇ?別にどうも思わんな?」


 普通は何かと「やっちまったなぁ」と思う場面なのだろう、ラノベとかであれば。

 でも実際には俺にはこのエルフに思う所も無ければ「ザマア」と思う所も無い。


「まあこうなるだろうなぁ、とは思ったけどもさ。ちょっとくらいは。だけど、殺されてやる、なんて事もしてやらない訳で。」


 まだまだナイフなんかじゃ遠い間合いでエルフが突進して来た。


「ぬおッ!?」


 俺はソレを咄嗟に避ける。大きく横に飛んで。


「今のは何?やっぱ魔法?風か何かの?それとも精霊魔法的な何かか?」


 俺の疑問、質問に相手は答える心算など微塵も無い様子。

 と言うか、もう既に鼻息も荒くこちらの声が聞こえていない模様である。


「あーあ、ベラが居たら良かったのになぁこの場に。でもマリの護衛にあの場に残しておかないと駄目だっただろうし?・・・おっと!」


 あそこに俺が残ってエルフに対峙した場合の事を考えた。

 恐らくはこのエルフ、他への被害など構わずに俺へと襲撃を仕掛けて来ていただろうその時は。


 この様子ではきっと俺以外が見えていない。見境が無い、ソレが一番厄介で怖い所だ。だからこうして俺は単独にならざるを得なかった。


 もしかしたらベラの「邪眼」で対応が出来たかもしれないのだが。

 万が一を考えたらソレもソレで怖かったのでこうした選択しか取れなかった。


 マリに被害が行けばもっと問題は肥大する。そう考えてしまえば俺がこうして遭難した事の方がよっぽどに問題を小さくできるというモノだ。


「ベラが守ってくれるとは思うけどなぁその時は。でもあいつ、イマイチ信用ってのがまだ無い・・・おうっと!?」


 このエルフ、先程から突進の繰り返しであり、その緩急もこちらにタイミングを読ませ無いレベルだ。

 突然に迫って来るエルフに対する用心をしながら今後の事を考えるのだが、そう言った隙を見逃さずに相手はナイフを構えて突撃してくるのでオチオチ思考している暇も無い。


「おーう・・・殺すか、殺さないか、ソレが、問題だ。」


 気取っている場合じゃ無かった。何度か繰り返された突進はここでピタリと止まったのだ。


 その時のエルフの表情は「狂気」の笑み。これに俺は「あ、やべ」としか言えなかった。


 次の瞬間には既に俺は空高く舞い上げられていた。


 そんな状況でちょっとパニックになりかけつつ地面を見れば薄っすらと光っている線が確認できた。何故だかソレは六芒星を描いている。


 俺は「やられた」と思った。このエルフ、狂気に精神が沈んでいる癖に妙に冷静に動いていやがったのだ。


 多分コレは魔法陣とか言った技術なんだろうとは思う。

 俺をこの様にして打ち上げたのはその魔法陣から生まれる魔法の力なのだろう。その魔法陣の効果のハズ。


 俺が打ち上げられた高さはざっと二階建ての家くらいだろうか?随分と滞空時間が長い。

 そのおかげでこれだけの確認と思考を出来たのだが。落ちる時はあの「無重力感」が俺を襲って直ぐに地上が迫って来る速度である。


「ハイ着地!この程度で俺が大怪我したり死ぬ様なビジョンは見え無いんだよなぁ。」


 俺のこの化物級身体能力を舐めないで欲しい。この程度で傷を負う様であれば今頃ここに存在していたりはしない。早々に死んでいただろう。


 エルフはこの結末に顔を歪ませている。怒りで。思う様な結果を得られなかった事に増々俺へとその恨みの感情を増幅しているっぽかった。理不尽である。


 恐らくは慌てふためいた俺がロクな着地をできずに足を痛めてのたうち回る所でも想像していたんだろう。

 そうすれば幾らでも痛めつけるのが楽になるとでも考えたのだと思うエルフは。


「そっちは俺の事を勝手に格下と決め付けてるんだろうけどね。じゃあそれが覆されるとか、お前がどう言った判断を下すのか見物だよ。」


 俺があの時に放った「凶手」と言う素手の攻撃スキルがその効果を発揮しているのであれば、あの木は。


【これを受けた存在はその身を崩壊させて粉々に砕け散る】


 である。そしてこのエルフの怒り様ならソレがこの世界で現実となった証明として捉えて良いハズ。


 そんな真似ができる相手だと見極められずに最初から決め付けで見下して来ていたのだから、このエルフの罪は相当重いと言う訳で。


「対応するエルフがお前以外のもっと温和な奴だったらもっと違った結末になっていただろうなぁ。ねぇ?今どんな気持ち?俺がお前なんかよりもよっぽど強くて上位存在だと分かって、ねえ?どんな気持ち?追放されたんだっけ?あの集落でお前ってどれ位の立場に居たの?ソレが今は・・・ぷぷっ!」


 滅茶苦茶煽ってやった。俺が森の民の、あの集落に連れて行かれた際にこのエルフの取った態度にやり返す様に。


 さて、感情と言うのは余りにも高ぶり過ぎると限界を超える。

 その限界を超えた時に人は無表情になると良く言われる。もしくは盛大に笑う、とか。


 余りにも処理しきれないエネルギーを別の方向に逃がす為だとか、キレ過ぎて逆に冷静になるとか言われているが。


 どうやらこのエルフの「怒りゲージ」は相当に容量が多い様で。


「ぎ・・・ぎざまぁぁぁぁぁ!」


 そのロングサラサラストレートヘアがゆっくりと浮いて行く。

 逆さに立ち上がってまるでスーパーなサイヤ種族かと言わんばかりに怒髪天である。


「顔真っ赤。プライド高過ぎ問題。頭の血管プッツンして死んじゃうぞ?」


 コレでは感情のコントロールどころでは無い。脳動脈破裂でもして死ぬんじゃ無いかと思える位の怒り様である。

 ギャグ系の漫画やアニメでも余り見無い程の様相である。これには俺も少々引く。


 だが相手にしてみればそんなのは関係無い。このエルフは俺を殺せればソレでスッキリするのだろうから。


「しぃぃぃぃぃぃい!・・・ねぇぇぇぇぇぇぇ!」


 力が入り過ぎてギリギリと歯ぎしりをさせつつも、そのエルフは充分に大声で俺を殺そうと矢を放ってきた。

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