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★★★買い物ガンガン★★★

 俺はマリと一緒に馬車でお出かけをしている。車内では俺の正面に座るマリはニッコニコ。何がそんなに嬉しいのか?


「俺が侯爵家の馬車で各道具屋やら食料品店に向かい買い物とか。誰得?」


 侯爵様が何を考えてるのかサッパリ分からない。コレをやれと指示しているのは侯爵様だ。


 それにノリノリでいるマリ。どうせ「一緒にお出掛けできる」と言った単純な理由でこれに従っているに違いない。


 さて、そうやって俺は各店でアレもコレもと欲しいと思った物を買い漁っている。

 その買った品を纏めてマジック小袋にポンポンと入れて行く。


 もちろんこれの事は世間に知られない様にと、店で働いているスタッフや店長に見られたりしない方法を取っている。


 小部屋を用意してそこに買った物を揃えて貰って、そこで俺が品をしまう。

 その際には店の関係者は全て出て行って貰って見られない様にしておくのだ。


 さて、実はこの買い物には一つ注文されている事がある。それは。


「なるべく多くの店に回って、各店でそこそこの大金を使うって。ホント、何でこんな事する必要が?」


 しかもお金は侯爵様持ちだと言うのだ。これには侯爵様が本当に何を考えているのか増々分からないので俺は少々自棄を起こして買い物をしている。

 俺の足りない頭で考えても答えなど導き出せないと解り切っていたから。


 ただし、只より高い物はない、と言った言葉だけは脳内で繰り返されてはいたが。


 買った品は全て俺の物にして良いと言われていた。俺はこれに次に向かう試練場に潜る為の物資をバンバン買ってマジック小袋の中に詰め込み続けている。


 マリはそんな光景を楽しそうに見ているだけ。何かしら言う事も無く俺と一緒に店に入って俺がアレソレコレと言って店員に注文を付けている所を眺めているのだ。


 これには普段のマリの態度を知っている俺としては不気味にしか思えない。


 何かしらマリにはこの件の事の説明を侯爵様はしているのだろうが。

 そこら辺は俺の知らずとも良い部分なのだろうきっと。

 だからマリは今も別段この買い物に関しての事に一切口を出してこないんだろう。


 と思っていたら。


「ねえタクマ。次に向かう気でいる試練場は次に何処に行くか決めてる?」


「いや、ベラの居た試練場の次に近い所かね?別にこれと言って決定って訳でも無いけど。最終的には虱潰しに、って感じなるかね。だからまあ順番にここから近い場所から順にって思ってたけど?」


 次に向かうのは服屋である。その途中の馬車内でマリが質問をして来たのでそれに俺は軽い気持ちで答えたが。


「じゃあさ、こんなのはどう?試練場は試練場でも、国が入る事を禁じた「異界」って言われる試練場。」


「・・・この買い物ってさ、侯爵様がその「異界」って所に俺に入って欲しいが為に、って事で前金みたいな扱いで全部侯爵家様が金出してる感じ?」


 もう今相当に金を使いまくっていた。必殺の「だが断る!」を口に出し難い程の金額を。

 と言うか、正直言ってここまでで金貨をどれくらい使ったかをちゃんと数えていなかったりするが。


「ここまで来たらもう断り辛いじゃん・・・」


 ハメられた、とまでは行かない所なのだろう。ずっと俺はこの買い物を疑い続けていたのだから。


 しかしソレはソレ、別に俺はここで断固押して断る、と言った事も出来るはずなのだ。だが。


「ゴメンねタクマ。父上はどうやらその強さを見込んで依頼を正式に出したかったみたいだったんだけどさ。真正面から頼んでも断られそう、って言って、こうして回りくどくて陰湿な手を取ったんだって。」


「なあ?野党たちに油断させるとか、そんな理由じゃなかったのか?この買い物は?」


 俺はてっきりそう認識していたのだが。


「ソレもちゃんとあるんだってさ。父上が言うにはこうして大金をタクマが使っている様に見せかけるのも、奴らがタクマに注目して他に注意が行かない様にする揺動だって事みたいだよ?」


「あー、だから俺にこうして金を払わせていると言った感じに見せてるのね。」


 代金を支払う際には俺がそもそも店へと現金払いをしている形になっている。その金はもちろん侯爵様が馬車の中に揃え用意しておいたモノだ。


 コレがそもそも、侯爵家が買うとなれば、後で店側が屋敷に購入された商品を運び入れ、その際に代金を受け取る形になるはずだ。

 しかし今こうして俺が求め、その場で金を払い、商品を店で受け取っている状況である。


 後で野党たちがこの動向を調べれば、俺が大金持ちだと言った形に見える事だろう。


「野党の件が解決したらしたで、俺はその分の報酬は別で貰えるんだよね?今回の買い物の代金に報酬が一緒に含まれてるとか無い?」


「うん、そこはちゃんと説明をしておいてくれって言われてる。ちゃんと別だよ。野党たちの件の依頼は依頼で別、報酬は支払うって。」


「いや、うん、ソレは良かったよ・・・いや、良く無いよ。いや、でもまあ、うん。はぁ~、溜息しか出ない。」


 侯爵様は俺の次の行動を先読みしていたと言った事なんだろう。この野盗の件が片付いた後に俺が試練場に行く気でいた事を悟られていたという事である。俺の浅い考えなど見通されていたと言う事だ。


 そしてその目的地をその「異界」などと異名を付けられた試練場に誘導したかったが為に、こうして後出しじゃんけんみたいな真似をして来たと。


 そして自らが頼んでは俺がその話に乗って来ない確率の方が高いと見て、こうしてマリを使って侯爵様はこの話を振って来た訳だ。

 そしてマリもマリで絶妙に断り辛い金額を俺が使ったタイミングを見て話を切り出して来たと。


「キタナイ、流石貴族、キタナイ。」


 小声で俺は下を向いて吐き出す。こうなってはもう仕方が無い。


 俺は開き直って次に入った服屋で下着、上着、ズボンと、必要だと思った分量をポンポンと買う。


 こうなってしまっては覚悟を決めるしかない。次の目的地はその「異界」と言われる試練場に決定だ。


 こうして買い物を終えて屋敷に戻って来た俺たち。買った物は全てマジック小袋に入っている。荷物おろしなど無く、馬車を下りるだけで済むのは楽チンだ。


 そんな事を考えていたら直ぐに侯爵様に呼ばれた。どうやら今後の事で少々の話をしたいらしい。


 これに俺は好都合だと思ってそこで「異界」の情報を聞こうと思って案内に付いて行った。

 そして部屋に入れば侯爵様が待ち構えていて俺を見るなりこう言ってくる。


「その様子だと話はマリから聞いている様であるな。受けてくれると見て良いかね?」


「こんな騙し討ちみたいな真似は今後やめて貰いたい所なんですけどね?」


「別に断られても代金を後から請求する様な事は言い出さなかったがね。それで、野盗どもの事であるが。」


 先にどうやら侯爵様はそちらの話をしてしまいたいらしい。


「タクマ、君を囮に使わなくても良くなった。奴らが根城にしている場所が特定された。」


「早いなぁ。どれだけ抱えてる諜報員優秀なんです?・・・あれ?そうなると今日のコレ、買い物ってほぼ意味無くない?あ、意味が無い訳じゃ無いかぁ・・・」


 この買い物は確かに野盗たちに俺へと注意を向けさせるための誘導もあるのでそこは意味が薄くなってしまうだろうが。

 しかしもう一つの方で俺はまんまと侯爵様の思惑に乗せられてしまっている訳で。


「で、やるのは何時ですか?さっさとそいつら片づけちゃいましょう。あ、ベラ使います?便利ですよ?アイツの邪眼。」


 俺が頼んで魔石をアイツに与えればホイホイとその「邪眼」を使ってくれるだろう。

 相手を即死させるだけじゃ無く、気絶させたりも調整が利くのだ。大勢相手に使えば一発で全員捕縛が可能だろう。


 しかしこれは侯爵様が僅かに頬を引き攣らせながら「ソレは止めておこう」と断るのだった。


 まあ断るのは分かる。侯爵様からしたらベラは「本物」の化物であるからして。

 俺の様に扱い易い相手では無いとしっかりと心に刻んでいるんだろう。


 利用したとしても、ソレは最終手段と言った感じか。

 余りにも便利な力だからと言っても、ソレを多用してしまえば後々でどんな皺寄せが来るか分かったモノじゃ無い、そんな風に侯爵様は考えているかもしれない。


 俺にしてみれば利用できるなら幾らでもホイホイと使って楽しちゃった方が良いと思うのだが。


 所詮俺の思考はこの世界の人の一般的な所とはかけ離れている自覚はある。

 だからここで無理にベラを推奨する気は無い。侯爵様が嫌がっているのだからソレをごり押しで捻じ込むと言った事はしない方が良いだろう。


 それに余り無駄にガンガンとベラを利用するとその為の対価で支払う魔石があっという間に無くなる。

 とは言えまだまだ大量にマジック小袋の中に魔石は入っているが。


(とある日にベラが「お前を超えたぞ!」とか言って俺に挑んでくる日が近づいて来ちゃうだろうしな)


 何かと便利だからと言って魔石を食わせて「邪眼」を使用させていれば、その内にベラが必要な分を吸収し終えて俺にリベンジしてくる日が早まるだろう。それもそれで面白くは無い。


 そうなればベラとやり合う場所の事も気にしなければならなくなるだろうし。

 そもそもがそうなった場合に周囲への被害と言うか、ショックと言うか、そう言った部分にも気を配らねばならなくなるだろう。

 そんなの只々面倒なだけだ。何時までもベラには「便利な道具」くらいの立ち位置でずっと居て欲しい所存である。


(まああいつは放っておけば何処へでも勝手にぴょんぴょんとアッチコッチ歩き回ってるけど)


「明日の早朝にでも奇襲を掛けて一気に打倒してしまいたいが、協力はして貰えるかね?」


「まあ良いでしょ。俺もそいつらにいつまでも目を付けられ続けるのは鬱陶しいですし。一人残らず叩き潰しましょう。」


 侯爵様の要請を俺は了承する。こんな問題何時までも時間を掛けて対応する事では無い。

 さっさと片づけて心の安寧を得てしまうのが一番だ。こんな奴らをいつまでものさばらせておく道理も無い。


 俺は最初囮だったのだから、こうして野盗の拠点が発見できたのであるならば俺がそこに参加しないでも構わない話だ。

 侯爵様の兵と国の兵が出ると言った事であったはず。ソレで戦力は充分だと思える。


 けれども俺は自身でケリをつけておきたかったと言った部分があった。

 他人任せで全部済めばいいのだが、ソレが後で「あと一歩の所で逃走されました」とかになったら目も当てられ無い。

 そう言った事は無いとは思うのだが。だからと言って油断も出来ないだろう。

 奴らは俺を恨んでいるとの事であるので、ソレなら他所に始末を託すとかせずに自分の手で潰すのが確実だ。


「一人も逃さない自信はあるんですけど、ソレもあれですね。事前にこちらの動きを察知されていて先に逃げられて奴らのアジトがもぬけの殻、何て事は勘弁ですよ?」


「そこら辺の点は大丈夫だ。問題無い。」


侯爵様がそう言うので俺はこれに何も言わずに心の中だけで思う。


(コレが妙なフラグになったりしないでくれよ?後々が面倒になるってもんだぞ?)

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