★★★どこに繋がるか分からないフラグセリフ★★★
その後、一週間はそんな稽古を続けた。
子供たちは俺と一緒に稽古をしている事にヤル気を起して一生懸命に木剣を振る。
どうにも子供たちは強い俺と一緒に型稽古をしていると言った事が良いらしい。
メキメキとその腕前は上達していっていた。しっかりと飯を食い、しっかりと運動する。これで成長しない子供など居ない。
そんなある日の事、ようやっと侯爵様が戻って来た。
どうにもその顔は晴れやかだ。問題が解決したのだろうと察せられる。
俺たちは集められて侯爵様から事の始末がどうなったかの説明を受ける事になって応接室に居る。
「あー、問題は片付いた。皆、心配を掛けたな。」
この言葉で既にもう俺たちには被害が迫る様な事は無くなったと言う事である。
アカルは既に侯爵家に雇われる事はもう了承している。
シーラルは一部の子供たちが行く事になっている孤児院の方に一緒に入る事になっていた。
もうビラットの件が解決したとなればお別れの時である。
因みにベラはこの一週間で俺に金を要求してきていた。魔石では無く。
どうにも町でやっている屋台飯に興味を持った様でソレを食べたいと言って俺に「金をくれ!」と言って来たのだ。
これには「お前は何処の家なき子だ?」とツッコミを入れるのを我慢した位である。
未だ俺は手元に現金を持っていなかったのでマリに頼んでベラに小遣いをやって欲しいと頼んだ時には「何で俺がそんなのせにゃならんのだ?」と本気で頭を抱えた。これでは俺はヒモである。
そう言えばチャン・リーから報酬は貰ったっけ?などと今更な事を考えたりもした。
さて、侯爵様は問題は片付いたと口にしたが、しかしそれと矛盾する事をここで言う。
「しかし、一つだけ小さいが、問題が残った。ビラットが囲っていた私兵の一部が野盗化したのだ。そいつらが王都周辺に潜伏してしまう事態がな。」
「侯爵様、ソレはちょっと詰めが甘すぎるのでは?あの挑戦者たちだよな?何でそんな事に?」
俺は容赦無くツッコミを入れておいた。何だってそんな中途半端な事になるのかと。そうしたら侯爵様は。
「城での会議が紛糾してな。この決定が出るまでの間に奴らの中に勘が良い者でも居たのか、どうか。奴ら早々にビラットを見限ったのだ。そして逃げ出した。コレはこちらの落ち度だな。そこまで動きの速い奴らだとは誰も思っても居なかった。まあ、正直に言ってしまうとだな、舐めていたのだ。私も含めて奴らの事をな。」
俺はこれに思う。ラノベ的キャラ付けにおいて「貴族は楽観視し過ぎ」の法則である。
脇役貴族、モブ貴族、太鼓持ち貴族など、そう言った賑やかしの存在がやるパターンである。
そこに抜け目ない、腹黒い侯爵様も一緒になって、と言うのが俺にはちょっと胡散臭く感じる。
取り合えず話は最後まで聞こうと言う事で俺はその後の侯爵様に注目した。
そこで糞発言されるとは思っても見なかったが。
「タクマ、以前に言ったな?君が狙われている、と。奴らはどうにもまだ諦めてはいないらしい。」
「・・・何処からそんな情報?」
「この屋敷を見張る様な動きをする怪しい人物が見つかっている。しかもどうやら稽古中のタクマを監視している様子だったとの事だ。報告によるとここ三日間はずっと見張られていた様だ。」
「ぬぉぉぉぉぉ~・・・何てシツコイ。ドンダケ根に持ってるんだよ、ソレは。」
人の怒りってモノは長続きしない、などと言った事を聞いた事はあるが。
それでもアングリーコントロール?だったか?長続きさせる事もソレはできると言う意味であり。いや、これで使い方があっているかどうかは分からんが。
そして人と言うのは受けた恨みをいつまでも忘れないモノで。
「相当に執着?粘着質な性格してるのかよ、そいつらのリーダーってのは。勘弁してくれ。」
「その話なのだが、タクマ、君にそいつらの始末を頼みたい。侯爵家が当主、私の直々の依頼でだ。」
「・・・おいおい、そりゃ無いんじゃないの?狙われてるの、俺だよ?まあ、奴らも直ぐに食いついて来るだろうから、他への被害が出る前に一網打尽にしちゃいたいのは分かるけどさー?」
俺を餌にしてその野盗と変わった挑戦者たちを誘き出して一気に殲滅、は解るのだが。
「侯爵家の兵も出すし、軍も一部も奴らの捕縛に出る。君には奴らを誘導して貰うだけで良い。こちらで用意する案内の者と共に指定の場所に向かってくれるだけで良い。」
「それでそう簡単に引っかかりますかね?疑問ですよ?それと実行は何時ですか?」
「引き受けてくれる様だな?」
「ええ、まあ、ハイ。このまま引き籠り続けるのもちょっと・・・と思っていた所なんで。」
「ならば気が変わらない内に説明をしてしまうとしよう。」
こうして俺と侯爵様だけがこの場に残って話を続ける。
マリもアカルもシーラルも部屋を出て行く。この後は三人でお茶会であるそうだ。気楽なモノである。
シーラルとのお別れ会と言った部分もあるのだろうけれども。
ベラはと言えば、この場には居ない。町の散歩は飽きたとか言っていたクセに屋台飯を食いに行っているのだ。
ベラ曰く「魔石だけでは飽きる」のだそうだ。飽きっぽい性格をしてるとは良い根性をしている。
一々こんな穀潰しに構っているのはどうか?などと思って何時だったか俺は心の中だけで「いっその事コイツ何処かで始末してしまおうか?」と思ったりもしたが、その時には何かを察してベラは一目散に俺の前から姿を消していた。
勘の良いガキは嫌いだよ。
そうして居る内に侯爵様との打ち合わせは済んで退出。
俺は宛がわれている部屋に戻りソファーで伸びをしながら今後の事を考える。
(俺の動きを向こうにワザと流して誘導するのが二日、その翌日に案内人とこの国を出て街道を、って。本当にそんなので引っ掛かるか?)
俺が餌となって動き出すのが今日より三日後。
余りにも綿密性の無い計画にちょっと不安だ。しかも俺と案内人だけの二人だけでは無く。
「アカルも一緒にとかなぁ。血生臭い修羅場を早いうちに体験させておくのが目的とか言って。まあ確かにいざと言う時に動け無いとかあると使え無い訳だし?そう言った覚悟を作り出す為の経験は必要なのは解るけどなぁ。」
足手纏いが増えるのは勘弁だ。一応は侯爵様からは戦闘になった案内人の安全は考えなくて良いと言われてはいる。
しかしアカルの事にまではソレは言われていない。そうなると俺が気にしなくちゃいけなくなる訳で。
「助けた手前、こうして侯爵様の保護下に入った所までで俺の義務やら責任は果たしたじゃん?侯爵様に雇われる事を決めたのはアカルの意思だからなぁそこは。俺が守ってやる義理はそこには発生しないんだけどねぇ?」
薄情な事を言っているとは思うが、これまでにアカルも剣の指導を受けて一緒に稽古をしていたりする立場なのだ。
ソレを発揮してアカルには自分で自分の身を守って貰いたい所である。
この野盗たちを率いるリーダーはどうにも勘が良いのか、或いは独自の情報網によって決断早くビラットと縁を切ったと言うのだ。
ならば油断はしない方が良いと俺には思えた。
(こう言った奴らってのは大抵が厄介な性格してる奴らばっかり、ってのはラノベで学んでる。慎重に行きたいもんなんだけどなぁ)
心の中だけで俺はぼやく。そして今回の事を侯爵様が俺に依頼して来た事にも考えを及ばせる。
(胡散臭いからなぁ侯爵様。腹の中が黒いから、きっと今回も俺を利用して別の何かしらの問題も同時に解決しようと画策してるんだろうけど。それに素直に乗っかってイイものやら、どうなのか?)
こうも何かと利用されるのはこっちとしても気分の良い事では無いが。
それでも俺が狙われていると言うのは嘘でも無いのだろうというのは分かった。
嘘も方便などと言った事では無く、侯爵様は事実を事実としてソレを使い、俺を動かしているのだ。
そんな人を動かす事に長けている相手に対して俺は一泡吹かせられる様なキレた頭脳を持ち合わせていない。
「やるなら頭悪いけど「力こそパワー!」で黙らせるくらいだよなぁ。俺ツエエはあんまりやりたくないよね。脳筋って言われるの、やだわー。」
考え得る少ない選択肢の中で俺の実行できる事となると、単純に「力で脅す」くらいである。そんなのまるで「悪」。
「悪即斬されちゃうなぁ。国から指名手配されちゃう。そうじゃなくてもそんな手を使ったら普通に侯爵様に恨まれるわー。良い様に利用されている内が華って事なのかね?頭の悪い俺にしてみれば。」
馬鹿とハサミは使い様、などと言う言葉がある。今の俺に当て嵌まるのでは無いだろうか?
俺は自分のこの力を持て余している状態だ。コレを思う存分に使い熟せると言うのであれば、こうして侯爵家に世話にならずに今頃一人で何処かの宿でのんびりと出来ていたのだろうか?
「いや、ソレは無いな。」
俺は俺を否定する。そもそもが力を使い熟せるだけの自力が、頭の良さ?アイキュウ?知能指数?閃き?柔軟な思考が俺には無い。
今目の前にしている現実が全てである。世の中は非情だ。人生は冷徹だ。
「そう言うのを回避するために、俺もこの世界の常識?歴史?ってのを学んだ方が良いのかねぇ。」
ボヤキは止まらない。この世界の事に何て興味が無い。
どんな王朝がこれまで幾つ勃興し、どれだけ亡国となって来たのかなど、元の世界に戻ろうとしている俺にはそんな情報は必要性が低いのだ。
元の世界に戻れそうな手掛かりは「試練場」にあると言った情報があれば事足りた。
「だけどもソレもちょっと最初っから眉唾だったしなぁ。それに。」
ベラの件である。何だか胡散臭さが増した試練場の件。
「俺、この野盗の件が解決したら他の試練場に向かうんだぁ・・・」
などとフザケた、どんなイベントに繋がるか分からないフラグセリフを吐いて俺のその日は終了となった。
翌日には俺は変わらぬ生活に戻る。朝食を摂って、剣の稽古、汗を掻いた体を風呂で清めて昼飯、午後はボケッと昼寝である。
良いご身分だ。俺はこの侯爵家の食客?客人扱いではあるのだろうが、自分でこの生活を余り宜しく無いとは薄っすら思ってはいる。だらけ過ぎだ。
けれどもそんな日々も後二日したら野党とのワチャワチャが待っている。
ソレも終われば俺は別の場所にある試練場に向かうつもりでいるので準備もせねばならなくなるだろう。その内に忙しく買い出しをする事となるはずだ。
それまではこの残り少なくなった時間を堪能しよう、と思っていればマリが部屋に尋ねて来た。
「タクマ、一緒に買い物に行くよ!」
「・・・は?何で買い物?俺が?マリと?と言うか、屋敷に御用商人呼べば良い話じゃ無いのか?」
貴族には外に出て一々買い物したりしなくても欲しい物が有ったら御用聞きの専属の商人を屋敷に呼び出すのものだ。
俺は知っている、ラノベでよく見る場面でもあるから。
現代で言えばスマホやパソコンでネットで買い物、配達と言った事になるのだろうが。
此処は異世界、剣と魔法が幅を利かせる、命の価値が低い。
ホイホイと貴族が毎度の事に外に出ていたら、権力争いでバチバチやっている対抗勢力がそのチャンスに敵を亡き者にしようと刺客をバンバンと放つ世の中である。
この世界もきっとそうである。偏見でも固定観念でも無く、実際にそんな世の中だと言った実感もある。
試練場内で教会勢力?に暗殺されかかってる王子様が居た訳で、実際。
だから欲しい物は屋敷に持ってこさせる。不必要な外出なんてものはしないのだ。
「父上が言うには相手を油断させる為だって言う事らしいよ?」
「え?それ自分の娘まで出してする事なのか?」




