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★★★お暇ですか?★★★

 話は簡単。シーラルに一目惚れしたビラットが親の死でチャンスと思ってこれらの事に動いた訳だ。


 短気だが小狡い思考をしているらしく、親が存命している間は孤児院に手を出さずに静かにしていたそうだ。

 問題を起こせば目を付けられる。父親に。ソレを回避するために忍耐の時を過ごしていたらしい。


 身分の高さを笠に着てシーラルに迫ればソレを知った父親が自らに厳しい処断をしてくると分っていた様だ。

 目の上のたん瘤と言える親が居なくなり自由を得たビラットは今だと言わんばかりに動いたと。


 ナドルック侯爵が亡くなったのは別に我慢の限界に達したビラットが暗殺、などと言った事では無いのだけは確からしく、ビラットに対して国からの何らかの処分は付けられないそうだ。


 そしてシーラルを襲った件に関しては何故これ程の遠回りな方法を取ったのかと言えば。


「はぁ。どうやら奴隷として一度、裏で手続きを通してソレを買うと言った事を企んでいた様だ。そんな偽装をされたら、解放は難しくなる。幾らシーラルが教会から派遣されている者であるとは言えだ。文字通り奴隷としてヤツの所有物にされていれば、助かる道はなかったと思われる。」


 シーラルがコレを聞いてゾッとした様で顔色を青褪めさせている。


 侯爵様も途中でビラットの事をヤツ呼ばわりだ。それだけ嫌悪感が凄いんだろう。


 ここで俺はうーん?とちょっと考えた。こう言った展開は大体がそのビラットの悪事を暴く為に真正面から正々堂々と調査などをして主人公が不正を暴いていくと言った展開になったりとかあるが。


「奴隷ねえ?力で解決してから後で犯罪の証拠でもでっち上げて捕縛して処刑で良くね?それだけ調べた結果が出てるなら幾らでも国の「裏事情」ってのでビラットなんて片づけれそうなものだけどなぁ。」


「・・・タクマって時々物凄く邪悪になるよね?どうして?」


 マリが、と言うか、俺以外の全員がこの意見にドン引きしていた。と言うか、邪悪と呼ぶな、邪悪と。


 ここで「どうして?」と問われたし、ここは答えておいた方が良いのか、どうなのか?ちょっと迷ったのだが。

 別に俺がこの問題の責任を負う訳でも無さそうだし、良いかなと思ってペロッと喋ってしまう。


「えー、どうせ裏でそう言ったどうしようも無さそうな貴族を始末する機関とかあったりするんでしょ?ならそのナドルック侯爵家に調査で出て来たある事ある事の証拠を突き付けて潰して、そこから分家の良識ある奴に引き継がせてたら良く無いか?このままビラットがずっとその家の当主に座り続けているだけで国は損失出し続ける事になるだろ?損切は早い方が良いぞ?ナドルック家ってのが潰れるとマズイ事があるんだったら手回ししてソレの補填をしておくのが王様のやらなきゃいけない事なんじゃ無いの?つまらん事でこの先もコイツ問題起しそうじゃん?ならそう言った見込みがあるって解ってるんなら早いトコ切り捨てた方が良い。そいつがもしかしたら更生するとか考えてる?そう言った事ならその復帰の機会を与えるのは自由だけど。監視は常にしておかないと駄目な奴じゃない?そんな労力を、費用を、出しても勿体無くないと言える程の有能、能力持ちであるなら良いけど。そうじゃ無ければどうしようが、どう思おうが、現実そいつ生かしておくのは無駄でしか無いよ。寧ろ害。それは国民への裏切り行為にも近いと思うけどね。」


 俺の固定観念と偏見が爆発した。俺には貴族社会の事など分からないし、知りたくも無い。だから言ってやった、何処までも傲慢な態度で。


 どうせ俺の存在なんてこの世界から、この国からしてみればちっぽけである。ならば言いたい事はここで言い切って開き直った方がモヤモヤした気分を抱えずに済む。


 俺にとってはここで侯爵様に睨まれるよりかは、このモヤモヤをこの場ではっきりと吐き出してしまう方が大事だったりする。


 ストレスの元は何時までも抱え込んで居たくないというのは、誰もが思う所では無いだろうか?


 こんなに強気で居られるのもこの俺の肉体がヤベーからである。どうせ本当にどうしようも無い事が起きたらさっさと逃げ出せる、そう言った思いがあるからこんな事を言えちゃうのである。


 そしてこれらの辛辣な発言は元はと言えばその中身はラノベからである。

 ロクでも無い貴族がやる事ってのは大抵がクソばかり!といった展開からの影響を受けた発言である。


 この俺の意見にアカルが「ムンクの叫び」みたいな事になっていた。

 彼女からしてみると俺の口から出たこの意見は過激すぎるんだろう。どうにもショックで呼吸を忘れかけている様子。


 ソレをマリが背中をポンポンと叩いて落ち着かせようとしているが、少々効果が薄い様でアカルの状態は余り緩和されていない。


 シーラルはと言えば、既に気絶していた。口を半開きにして天井を見上げて既に白目を剝いている。


 マリがアカルを介抱していたのは既にシーラルが早々とその意識を飛ばしていたからの様だ。


 さて、ここで俺が「ある事ある事」などと言ったのは、どうせ無い事なんて無さそうだ、と思ったからである。

 ビラットをこの短い間に調べてこれだけの事が分かったのだ。残念な事に。

 恐らくはナドルック家を潰せるだけのネタも幾つも発見しているに違いない。


 俺はそう思ってこの発言をしていたのだが。


「・・・むぐぐぐ、しかしだな・・・」


 侯爵様はどうやら俺の意見を受け止めて、そして呑み込めたらしい。

 それにしても「腹黒」な侯爵様であるのにここまで悩むのはどうしたのだろうか?

 それだけ難しい問題が鎮座しているのだろうかこの問題には?

 もしくは俺の方が侯爵様へのイメージを下方修正した方が良いのだろうか?


 とは言え俺がそこまでしなければならないと言った感じでも無い。侯爵様への評価を改める必要は無いはずだ。


 寧ろ俺は今ここで世話になっている立場なので余り侯爵様の事をとやかく言える立場では無かった。これ以上は何も思わないでおく事にする。


 さて、マリも流石に貴族令嬢と言えば良いのか?どうなのか?俺が「潰しちゃえよ」と言った内容に対して動揺はあったモノの、どうにか耐えられたらしい。


 未だにムンクになっているアカルを気にしているという事で余裕はまだありそうに見える。


 ここでの問題はこの侯爵様の様子だと、どうにも貴族としての何らかの問題でビラットを潰す事に躊躇などが有る様子に見える事。


(それも俺からしたら下らないと思っちゃう様な理由だったりすると思うが。まぁ俺はこれ以上は何も言わなくても良いな)


 俺はもうこうなれば何も言わなくても良いだろう。今回の問題が解決となるには国の一番上、王様が決めなければならない事にまで、行く所まで行った感がある。


 この侯爵家の屋敷で俺はその問題が片付くまで引き籠っていれば良いだけのはずだ。

 ならばちょっと暇を持て余すかもしれないが、外に不用意に出てクソ犯罪者共に絡まれるよりかはマシである。


 狙われているのはどうにも俺だけだと言うのであるならば、ソレは俺がこのお屋敷から出なければ良いというだけだ。


(だけど暗殺者とかを派遣して命を奪いに来るとかもありそうで怖いんだけどな、ちょっと)


 幾ら何でもそんじょそこいらの犯罪者集団がこの侯爵家の屋敷を襲撃、などと言った事はしてこないだろうが。

 しかし今回その集団の後ろにはこちらのと同等、ナドルック侯爵家と言うのが付いている。


 ビラットがもしピンポイントで本気で俺の命を狙ってきたりすると言うのであれば、もしかすれば暗殺者などと言うモノを使ってくる可能性はあるのだ。


 そんな事を考えていれば侯爵様は「むーん!」と腕組をして唸ってから立ち上がる。


「私はまたこれから城へと戻る。四人はこの屋敷から出ない様にな。」


 侯爵様が部屋を出て行く際にマリが「いってらっしぃませ」とソレを見送った。


 この時点でアカルは呼吸を取り戻していて、シーラルは依然意識を取り戻せてはいなかった。


「で、俺ってば屋敷から出ないならソレはソレ、相当暇なんだけど。今後はどうやって暇潰ししたら良いと思う?」


 俺はマリに率直な意見を聞いた。ここで閃いたと言わんばかりにマリが言う。


「私と稽古をしようよ!」


「おい、どうしてそうなるんだよ・・・まあ、そうもなるかぁ。」


 これまでの間に強くなりたいと言っていた子供たちが訓練をしてメキメキとその腕前を上げていた。

 その子供たちは全員漏れなくどうやら才能と言ったモノをお持ちだった様で。


「子供たちに上を目指して貰う様にする為にもタクマの力は見せた方が良いと思ったんだ。そしてそのお披露目に私と模擬戦しよう!」


「それって逆に上をハッキリと認識しちゃってヤル気を削ぐとか、或いは自分の限界を作っちゃう事にはならんか?」


 衝撃、ソレは人を成長させもするが、出る杭を打ってくるモノでもある。

 上を見て「自分には無理だ」と思う者も居れば、「そこに自分も辿り着きたい」と願う者も出る事だろう。


 そう言う思いがエネルギーとなりその者の心の流れを作る。それは時には下に、或いは上に。


 下に行けば今に対しての「現状維持」もしくは「満足」に繋がってそれ以上の成長を妨げる。

 或いは無理だと悟って完全に心折れてしまう事だって少なくは無いだろう。


 上に向けば「熱意」「願望」「欲望」「野望」などと言ったモノに対しての燃料になるはずだ。

 その時に起こる行動力の上昇や意識の改革などがその者を一皮剝く事もあるだろう。

 男子三日会わざれば、それがこの時に起こる可能性が高い訳だ。


「そんな弱気な事になってしまったら、ソレはその子の限界だろうからね。私たちがそこで何かをしてあげる必要は無いと思うよ。いずれ遅かれ早かれって感じなんじゃないかな?」


「シビア過ぎませんかね?そんな小さい子供の頃にかなりの痛い挫折とか味合わせるって。でも、まあ、俺もそんな事に責任持てないし、慰めるとか言ったのはする気も起き無さそうだけど。」


 結局そんな事で心折れてしまう様な決心なら将来大物にはなれないだろう。

 と言うか、別に俺が今子供たちの将来に対して責任なんて負う必要も無いのだから気楽にやれば良いのだ。


 コレはマリから要請された事であり、それで起きた事は全てマリが背負うべきである。


 とまでは言う気は無いが、そう言った気分で気軽にマリとの模擬戦をすれば良いというだけだ。


「じゃあやってみるか。・・・あー、でも、俺、剣術なんて素人も素人、ドドドドド素人だぞ?」


「それなら私が付きっきりで教えてあげる!」


「ドを連呼した所には突っ込みして来ないのかよ・・・」


 俺が剣術なんてやった事無いと言えば、マリが嬉々として「教えてあげるね!」と言ってくる始末である。

 もうどうにでもなれば良いのでは無いだろうか?とか投げ遣りな気分になる俺。


「まぁ、マトモな剣術ってのを習ってみるのも一興だよな。なんちゃってイメージだけで振る俺の剣の扱いは卒業しようじゃ無いか。」


 俺は少しだけ前向きになってそんな決意をキメてみたのだった。

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