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★★★やっぱり定番の★★★

 さて、別にその三日間の内で何か変わった事が起きたりはしていない。至って静かで順調。


 シーラルは子供たちに事前に話を聞いて将来的に何か就きたい仕事はあるかと言った事を聞いてそれを纏めていた。後で侯爵様に提出する用だろう。


 マリに聞いてみれば子供たちはこの事によって向かわせる侯爵家運営の孤児院に振り分けされる予定になると言っていた。

 どうやら専門的な勉強をさせられる様にその筋のプロスタッフが各孤児院には居るらしく、まさしく専門学校と言った感じになっているそうな。


 結構なお金を投資して運営されていると言う事であるが、しっかりとその元は取れているらしい。

 そこら辺の詳しい部分は俺が知る必要も無いので割愛である。

 そんな話を聞いても俺には活用できそうにも無いし。


 ここでどうにも子供たちの中には「強くなりたい」と言ったイメージ、願望を持つ者も居た。

 将来的には挑戦者になって金を稼いで行きたいと言った事やら、兵士、或いは騎士として取り上げられたいと言った御堅い将来を夢見る子まで。


 以前の生活ではそう言った剣の扱いを教えてくれる者などおらず、どうやら子供同士で木の棒を振って体を鍛える的な事しかしていなかったらしい。

 そんな子たちは二日目にして早くもその要望が受け入れられて木剣を振っての型稽古を侯爵家の私兵の一人?から習っていた。


 そんな中にアカルも混じっている。侯爵様の言っていた事を受け入れる気になったのか、どうなのか?


 そこら辺の所の話は俺は気にも留めていなかった。もう今これ以上に俺がアカルの選択や決断に口を挟む事でも無いだろうから。

 彼女自身の人生だ。自由にすればいい。俺が心配する事も無いだろう。

 俺が二人を助けた責任はこうして侯爵家の保護を約束された時点で無くなっているも同然だ。


 後の事はシーラル、アカルと侯爵家の間の問題である。俺はそこに関与しない。


 子供たちの意見を纏めていたシーラルも自分の行く末を真剣に考えている様だった。

 時折アカルのその稽古中の姿をじっと見つめながら深刻な表情をしているのを見かけている。


「平和だなぁ・・・」


 俺は俺で日向ぼっこをしていたりした。試練場に籠っていた反動とでも言えば良いか、どうなのか?

 今回の事が落ち着くまでは充電期間と言った感じだろうか。


 そんな俺とは違ってベラは歩き回っている。この町を。

 余り目立つ事やら暴れる事はするなよ?とベラには言ってあったのだが。


『姿を見られる様な間抜けはせんよ。我が本気でこの姿を消して行動すれば、見抜ける者などおらんわ』


 と言われた。俺はこれにベラを自由にさせているのは流石にどうかとちょっと思ってしまったが。

 しかしソレを縛る事など面倒でしかない。ベラを一々束縛などする気も無かった。監視対象ではあるが、ずっと見ていなければならない程にベラはそこまで馬鹿じゃない。


 ここでベラからは「オヤツ」と称して魔石を求められている。町の散策、散歩をするのに口寂しいとか行ってきやがったのだ。

 何を偉そうな事を、などと思ったのだが、ここで俺は思った。

 この程度を与えるだけで俺が見ていない間の自由にしているベラが大人しくしていてくれると言うのならば魔石をやるのに何らの問題も無いと。


 こうして与える数は雑にマジック小袋からちょっと多めに一つまみ、と言った感じにした。

 これを受け取ったベラが「少ない」と不満を漏らしていたが、それに俺が「気に入らないなら返せ」と要求したらさっさとベラはその場を逃げて行った。


 取り合えず今はベラに関しても何らのトラブルなどは発生していないっぽいので良しとする。

 まあベラが裏で何かしらの隠蔽をして来ていたらソレを見抜く目を俺は持っていないのでどうしようも無かったりするのだが。


 そんなこんなで問題の無い日々が続く。充分な食事と寝床を与えられた子供たちは至って健康。

 貴族の家で世話になっている事に多少の緊張とストレスを感じていそうな子もいたが、ソレも暫くすれば孤児院へと引っ越しになるのだ。もう少しの辛抱である。


 とは言ってもここで受けている待遇は破格と言って良い物だと思う。

 常識的に考えても侯爵と言う立場の人物が俺の様な怪しいヤツの求めを受け入れている事がヤバい。


「それって俺の事をかなりの重要人物と見做しているって事なんだろうなぁ。面倒な事になる前にオサラバさらばした方が良いんだと思うけど。居心地は悪く無いんだよなぁ。」


 俺は試練場の攻略の事を一時忘れる事にしていた。

 今回のベラの件は何をどう考察してみても他に情報が足り無さ過ぎて考えるだけ無駄だと感じたからだ。


 別の場所にある試練場に向かうにもまだある程度は今回の事が落ち着いてからにしたい。

 最低でも試練場で会ったあの挑戦者たちの件が片付くまで。


「って訳で、どうなのそこらへん。マリ、知ってる?」


 俺は与えられた部屋の窓辺に座って日向ぼっこをしながら「お茶しようよ」とやって来たマリに質問をした。


「うーん、父上は城に務めに行ったばかりでまだ戻って来る予定では無いからね。そういった話が聞きたいならタクマが直接に城に赴くのが一番早いよ?」


「おいおい、門番に真っ先に止められるだろそれは。怪しいヤツと見做されるか、最低でも頭のおかしい奴と思われるのがオチだろ、ソレ。」


「私と共に行けば止められ無いだろうけど。行って進捗状況を聞いてみるかい?」


「いや、しないよ?なんでマリはそんな「ワクワク」みたいなリアクションしてんの?何で嬉しそうなの?」


 マリの「ツボ」ってのが全く分からない。今の会話はその様な話では無かったはずだ。


「ちぇー、せっかくタクマと一緒にお出かけできると思ったのになー。」


「おい、侯爵令嬢様よ?どういう思考してんだよソレ。」


 まるで城へと俺と一緒に行く事を「デート」の如くに言うマリに対してドン引きである。

 思考回路が理解できない相手程怖いモノは無い。俺はマリのこう言った部分がまだまだ理解に苦しむ。


 そんなこんなで、それからも一週間、何らの問題も起きずに過ぎて行った。逆に何も無さ過ぎて疑うレベルである。


 そんな日々に多少の不安を覚えた頃に侯爵様が屋敷に戻って来た。

 どうにもその表情は余り晴れやかとは見えないのだが。


 その勘は当たった。その戻って来た翌日には俺とマリと、シーラルとアカルを集めて侯爵様が「話がある」と呼び出したからだ。

 因みにベラはこの日も町の何処かをほっつき歩いている。もちろん俺から魔石を「オヤツ」と称して受け取ってから。


「さて、集まって貰ったのは他でも無い。試練場内での二人の襲われた件についてだ。」


 ようやっと動きがあったとみられる。しかしコレが只の「全て終わった」と言った報告であれば良い。

 けれども侯爵様のこの様子と話の始め方だと絶対にそんな事では無い。


「ナドルック侯爵家の裏の私兵だ。君たち二人は、と言うか、シーラル、君が計画的に狙われていた事が判明した。もちろんソレを企てていたのはナドルック侯爵家、現当主ビラットだ。」


 俺は思わずこの話の流れに「うぇ・・・」と漏らしてしまった。

 一番面倒そうなパターンになったと、心の中だけでウンザリしたのだ。


 侯爵様の口から出た事だ。これらの事が嘘とか、或いは虚言などと言った事はあり得無いだろう。

 しっかりと調査をして裏を取ったのだと分る。しかもこの分だと王様にも何らかの形で報告もされていそうだ。


(これに巻き込まれる形になるのは、嫌だなぁ。でも、無理やり巻き込まれるんでしょ?ラノベの主人公みたいに、ラノベの、主人公、みたいに!)


「そして、タクマ、そ奴らから君は狙われている。奴らは血眼になって君の事を探しているそうだ。」


「・・・何でそこはベラじゃ無いんですかね?やったのはベラなんだけど。あー、いや、やってくれって頼んだのは俺だから、そこは俺「も」狙われるかぁ。」


「いや、君だけだ。」


「ナンデ!?」


 驚きの言葉が漏れるのも当たり前だというモノだ。あの場にはベラだっていたのだから。

 だけども侯爵様は説明を続けてくる。


「シーラルとアカルは奴らの標的であり、多少の抵抗はあったとしてもあの場では無力と判断されたからだろう。そこに助けに入ったタクマ、それと・・・ベラ殿が来て奴らは殺されている訳だ。そうすると脅威だと言われるのはどちらだと言われたら。」


「うん、そりゃ俺とベラだね。・・・って、おい、あいつもしかしてあの時も自分の姿を周囲に認識され無い様にしていたのか?いや、認識はされていたはずだし・・・そうなると存在を曖昧にさせていた?ぼやけた認識になる様にして記憶に残らない?」


 良くあるラノベスキルを思い浮かべる。チートだ、チート!と俺はここで心の中で叫んだ。

 ベラが言っていた「本気を出せば見抜ける者は居ない」と言う言葉。これである。

 しかしあの時に俺とベラで、二人の内どちらが敵として見做されるかと言われると。


 見た目が北欧系美少女と、冴えないながらもしっかりと装備をしている挑戦者と見做せる男とでは比べるまでも無い。


「あいつ面倒を俺に全部被せる気だったのかよ・・・まあうん、確かにソレで良いっちゃ良いんだがよぉ・・・」


 ベラ自体が問題になるよりかは俺がこうして注目を浴びる方が余程マシだろう。それくらいの事は考えられる。

 どうせだったらあの場に居たクソ共全員を手間でもブチ殺しておけばよかったと後悔してしまう。


「この家に居る間は安全だと思ってくれていい。しかし一歩でも外に出ると命を狙われるだろう。・・・所で、ベラ殿は?」


 侯爵様は「安心しろ」と言ってはいるが、そんなの全然保障にはならない。

 相手が暗殺者などを雇ってこの屋敷に潜入させたりしてきた場合はどうしようもないからだ。


「ベラなら散歩ですよ。ここ最近は日課みたいになってますね。」


「・・・大丈夫、なのか?」


「心配するだけ無駄じゃないですかね?あ、ソレがベラの身を案じての言葉じゃ無くて、襲撃をした者たちの事を言っているのであれば、まあ、そっちはヤバいかも?ですけど。」


 俺のこの返答に盛大な溜息を吐いた侯爵様。そして小声で「捕縛して貰えると手間が省けるのだが」と漏らした。

 俺はこれに口には出さなかったが心の中だけでは「そもそもベラの事を発見できるだろうか?」と疑問が浮かぶ。


 ベラは考え無しでは無い。自らの力を自覚して行動している。面倒な奴らに絡まれる鬱陶しさを知っているからこそ、姿を消して散歩をして見つからない様にしているはずだ。


「さて、少し話を変える。何故、ビラットがシーラル、君を狙ったかについてだが。」


 この言葉で俺の脳内には幾つかのパターンが既に思い浮かんでいた。

 そこで一番安直な思い付きが侯爵様が説明するよりも先に口から洩れた。


「どうせビラットが彼女を得ようとしたとか、そう言う感じなんじゃ無いんですか?」


「・・・何故分かった?」


「うへぇ・・・本当にそうなのかよ・・・」


 俺も侯爵様もシンクロしてウンザリした溜息を同時に吐く事になった。

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