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★★★すでにもう★★★

 野次馬が増えて行ったと言ったが、侯爵家の馬車の行方を追う者など居ればそいつは非常に目立つ訳で。


 侯爵家に良い感情を持たれ無い様なそんな真似をする人物が一般市民の中に居るはずも無い。


 自然と野次馬はその場で馬車を眺めて「何があったのか?」と言った言葉を漏らす位しか無いのである。


 しかしここでベラが一言、馬車の中に居る俺に声を掛けてきた。しかも脳内に。


「む?頭の中に直接声が?と言うか、ベラだな?で、何?」


「付いて来ておる者が居るぞ?始末しておくか?その場合は魔石を・・・」


「しないで良い。様子見にしておいてくれ。手を出すなよ?」


「なんだ、つまらん。」


「何が詰まらん、だよ。あー、マリ、この馬車を追いかけて来てる奴が居るってさ。心当たりはあるか?」


 俺たち四人は同じ馬車内に居る。なのでここでベラからの報告を俺は伝えると。


「ん?心当たりが在り過ぎて分から無い、が答えかな?侯爵家を探ろうとしてる者たちは当然普段からこうした動きに敏感だし。こうして派手に馬車を出して動いているから何事かと思ってその行く先を見届けようとしてるだけかもね。」


「だそうだ、ベラ、聞こえたか?殺す程の相手じゃ無いんだよ。魔石欲しさに誰でも彼でもお前が勝手に人を殺そうとしたならば俺がお前を片づけるからな?脅しじゃねーぞ?」


「全く、つまらん。つまらんが、まあいい。余り問題を起せば我にまとわりつく鬱陶しいモノが増えるというのには納得しておるからな。」


「ならそんな目立つ場所に居るんじゃねーよ最初っから。」


 ベラは未だに馬車の屋根の上だ。目立つ事この上無いと思うが、ベラはその事になど何らの気も回していない気楽な感じだ。


 そうしている間にどうにもその問題の孤児院に到着してしまった。

 馬車が止まるので俺たちは外に出てみたのだが。


「なあ?何でこんなボロボロなの?今さっき破壊されました、みたいな跡ばっかりなんだけど?」


「・・・そんな、子供たちの無事を確かめてきます!」


 シーラルが走って孤児院内へと走って行ってしまう。その後をアカルが追う。


「もしかして、取り潰し決定的な?」


「それにしても早過ぎるからね。普通じゃ無いよ。まあ短気で癇癪持ちだと言う話だから、資金援助打ち切りと同時に手続きをしていたかもね。この分だと。それでもコレは余りにも酷いけど。」


 俺もマリもちょっと困惑。俺たちが今こうして動いたりしたが既にも既に遅かった訳であり、間に合わなかった、と言った言葉すらも意味を成さない。


 さて、俺たちは外で待機だ。何故って?こんなボロボロの建物に入って崩落があり、それに巻き込まれたら堪ったモノでは無いからだ。


 安全第一「ヨシ!」である。じゃあ中に入って行ったシーラルとアカルは良いのか?と言われると、ここで世話をされていた孤児たちを探しに行かねばならない役目があるのでしょうがない。


 建物の内部の事を良く知っているだろうシーラルがここで行かねば始まらないし、ソレを守るための最低限の護衛としてアカルが一緒に行ったと思えばそこまでの事でも無い。


 そうして暫くして建物から外に出て来たのはしっかりと一人も欠けた様子が無い子供たち。

 しかし幾人かは顔を殴られた跡があった。どうやらここをボロボロにした者たちから暴行を受けた様である。


「どうやら無法者たちがやって来て壁などを壊して行った様です。その際に子供たちにも暴力を・・・」


 シーラルは物凄く顰め面でそう言って俯いた。拳が握られて震えており、相当に悔しい様である。


 アカルはそのシーラルの肩に手を乗せて慰める様にして擦っている。


「子供の回収、ヨシ!忘れ物ナイカ?指差し呼称で確認始め!」


 俺が突然そんな事を言うモノだから全員がここで「へ?」と驚いた。

 なので説明を兼ねて俺は気持ちを切り替えろと言ってやる。


「ここに来たのは子供たちの確保が最低限だったんだろ?で誰も欠けておらずにこうして無事だった。まあちょっと怪我してるのも居るけどな。だけどソレが達成できたなら今度は別の確認だ。この孤児院から持って行く物は?必要最低、とまでは言わない。デカい馬車があるんだから思い出の品でも良いし、大事な物でも良い。持ち出す物があるだろ?別に度を越した重い物で無けりゃ持って行っても良いよな?」


 俺はマリに向かってそう問う。これにマリはニッコリと微笑んで「そうだね!」と元気良く、そして子供たち全員に聞こえる様な声量で答えてくれる。


「よし!それならお前ら、各自そう言うのがあるならソレを持って集合だ。だけど余り時間は待ってやれないぞ?そうだな・・・今から俺がゆっくりと百数える内に走って持って来い。そう言った物が無い奴らはここで過ごした思い出だけ心の中に抱えてこの場に残っていれば良い。さあ、数えるぞー。いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーく・・・」


 そうしていきなりだが俺は数を数え始める。吟味させている時間は余り与えない。

 何故なら拘り過ぎると何も決められなくなるからだ。こういった時には悩まずにサッパリと切り捨てられる理由を付け加えて行動させるのが良い。

 時間が無いから、そう言った理由と意識があればこの場で即座に「いらないもの」と言った部分に気を使わなくなるものだ。


 本当に持って行きたい物だけが真っ先に浮かんでソレを確保するだろう。その後で余裕があったら他の事に意識が行くのだ。

 そして悩んだり、或いは迷ったりして「大人の階段上る」のである。


 でもフォローも忘れ無い。ソレを言っておかないと子供と言うのは勝手に動き出しかねないからだ。


「よーし!最後だぞー!ひゃあああああああーーーーく!おらぁー!お前ら!全員集まってるかー!シーラル、数えて。誰か抜けてたりしない?」


「え?あ、その、大丈夫です。誰も居なくなったりしてません。」


「はいじゃあ皆!ちゅうもーく!もしこの先で向かう場所に到着してから「あ、コレ持って来たかったな」と思った物が後で出てきたら、シーラルか、俺に言う様に!もしその時にこの孤児院が壊されたりしていなかったら俺が探して渡してやるから、その事は然りと守れよ?そうじゃ無いとお前らが危険な目に遭えば悲しむのは誰だ?勝手に居なくなって心配するのは誰だ?」


 俺がシーンと静まり返っている子供たちにそう問えば返って来た答えは小さな少女から。


「シーねえちゃん・・・」


「よし!君は良い子だな!良く解ってるじゃ無いか!だけどもし俺がここに来た時に建物も何にも壊されて残っていなかったらその時は諦めろよ?無くなった物を何時までも心残りにするよりも、新しい大事な物を見つける事の方が断然素晴らしい事だ。良く覚えとけお前ら。分かったなら馬車に乗り込め!ほらほら!さっさと乗るんだよ!」


 俺は有無を言わさずに馬車の扉を開けて子供たちの背後に回る。

 その後はヤンチャそうな男の子の背中を押して半ば無理やり馬車の中へと押し込んだ。


「この子と中の良いヤツは?ん?お前か?なら一緒になった方が気が楽だろ?それとも気まずい相手と一緒に馬車の乗り心地を語り合いたいか?」


 俺のこの質問に反応した男の子に対して向かってそんな事を言って脅す。大人げないと自分でも思う。

 けれどもこれ以上に穏便に説得できる内容は俺には無理だった。

 子供たちもここまで来ると誰もが悟っている様子だ。もうこの場には居られ無いのだと。引っ越しをするのだと。


 ここでシーラルが女の子を誘導して他の馬車に乗り込ませる事に成功していた。

 後は流れでドンドンと馬車の中に子供たちが詰め込まれていく。


(馬車の中は外面のインパクトとは変わってかなり広いんだよなぁ。うん、全員乗り込めそうだな)


 この馬車、見た目からしてコンパクトな印象を与えるのだが、中は広々空間である。どこぞの車のシーエムか?と言いたくなる。

 けれども今回はソレが良い。二十名の孤児たちはこうして馬車に全員入れる事に成功してスムーズに出発が出来るのだから。


 こうして馬車は進む。子供たちを満載して。侯爵家屋敷へと。


「で、何でお前はずっと馬車の外を歩いておるのだ?」


 ベラはずっと馬車の屋根から動かなかった。寧ろどうやら気配まで殺していてくれたらしい。空気の読める奴なのか、どうなのか?

 そんな事が出来るのであれば最初からやって欲しかったのだが。時折爆弾投げ込む様な事をしてこなければもっと扱いやすくなるというのに。


「俺の乗るスペースがギリ無いってのと。まあ警戒の為だな。護衛の人たちも居るから、こんな事言うと無礼とか、侮辱だとか言われそうで怖いけど。」


 短い時間だが、ここにシーラルとアカルが姿を現していたのだ。

 もしかするとソレを嗅ぎ付けた試練場内でやっつけた奴らの仲間が居たりして襲撃を掛けて来る可能性も考えてしまった。


「気絶させた奴らの仲間の襲撃を気にしておるのか?心配し過ぎだろう。」


「お前今俺の心の中読んだ?」


「いや、その顔で分かる。」


「何だよそのエスパーな感じ。」


「エスパーとは何ぞや?まあいい。我が生きて来た、重ねて来た経験と年月を舐めておるな?」


「はいはい、サイデスカ。人の顔色窺って直ぐに適切な言葉をぶち込んでくるのはある意味充分に特殊技能だよ、理解しろ。」


「この程度で何をふてくされておるのだ?訳が分からんな。」


「ふてくされてる訳じゃ無いけどな。で、ずっと静かだったのは何でだ?」


「あの様なチビ共は恐怖と言う感情が薄かろう?真に自分の存在が脅かされる事にならないと理解できん。何でもカンでも興味に引かれて近づこうとする。そんな者たちに群がられるのは鬱陶しさの極みだろうに。この見た目ならどうやら大人も子供も惹きつける様だしな。」


「解ってるならその姿とは別の見た目になれないのかよ?」


「ソレが出来ておれば直ぐにでもやっておると思わんか?全く、頭の回転が鈍いな。」


「お前俺にちょくちょく喧嘩売って来るの何でなん?」


「我がお前に対し恨み辛みが無いとでも?」


「いや、ごもっとも。散々脚斬り飛ばしてるからなぁ。そりゃ棘の一つや二つは飛ばしたくなるか。」


「その程度では済まんがな。」


「勘弁しろよ。」


 下らない会話が続く。別に俺もベラも別に仲良しこよし、って訳じゃ無いので寧ろこの程度の距離感で構わない。

 余りにも関係が近しくなれば、もしかするとベラをこの手で葬る時がやって来た場合にこの手が鈍る可能性も出る。

 その時には俺の命の危険性が跳ね上がるのも同然だ。ならばベラが俺の事を程良く嫌ってくれていた方がこちらもいざという時にやり易いというモノである。


 そうしている内に侯爵家の屋敷門前に到着である。敷地内にそのまま入って子供たちが馬車の停止と共に外に出てみればいきなり目の前にご立派な建物という具合だ。

 そりゃその顔が間抜け面に変わるのも早いというモノである。全員が口をぽかんと開け放ってその大きさに首が上を向いているのだ。


「ここが君たちが少しの間お世話になる屋敷だよ。うん、私の住んでいる家だね。さあ、詳しい事は後にして、君たちは体を綺麗にしないとね?ほらほらほら~。」


 ここでマリがそんな事を説明したのだが、一向に子供たちは自分たちの立っている場所など把握できずにやって来たメイドさんたちに連れられて屋敷の中に連行されていった。

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