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★★★よく見る展開で、今度は★★★

 赤い髪の方がアカル、神官の方がシーラルとの事。名前である。今更。


 襲われた経緯を知る為に気を飛ばしてしまった二人の肩をゆすって目を覚まさせた後に自己紹介と言った感じだ。


「私たちは、その、正直に言ってしまえば孤児院の経営資金を手に入れようとして、その、ハイ。」


 シーラルは俯きながらそう言った。どうやら経営難である様子。


「侯爵様?孤児院経営は?」


 俺がそう問えば返事はコレだ。


「私が監督していない孤児院だな。資金の使い道は毎月厳しく取り締まっているし、充分な金額を補助で出している。職業育成なども積極的にしているからな。我が侯爵家が面倒を見ている孤児院でこの様な事は起こり得んよ。誰が上に居るのだ?」


ここで侯爵様がこの孤児院の経営責任者の名前を聞く。すると。


「ナドルック侯爵様です。これまでは援助金の額は一度も減らされた事は無かったのですが。一月前に御病気で亡くなられまして。その爵位を御子息であるビラット様が継いだとなった途端に一切の援助を打ち切られまして・・・」


 深刻過ぎる問題発生。ラノベあるあるマタキタコレ。俺の心の中はウンザリ気分。大体流れが分かってしまう。


「子供たちが飢える前に資金を得なければと思い、友人であるアカルに頼んで私も挑戦者に登録をして試練場に入りはしたのですが。その、悪漢たちに・・・」


「アイツらはあたしたちに既に目を付けていた感じだった。多分シーラルの登録の時だと思う。」


 アカルがそんな予想を言うが、もう遅い。そう言った事は目を付けられた瞬間に気付くか、或いはその前に事前に想定していなければ意味が無い事だ。


 ここで侯爵様が溜息を吐いた。


「ナドルック候が亡くなられたのは知っている。そしてその子息が爵位を継いだのも。その気性は短気で気に入らない事には直ぐに癇癪を爆発させるらしい。何故冷静で思慮深いナドルック候からその様な息子が出来上がったのか残念極まる。息子可愛さに甘やかし過ぎたのか、或いは生まれた時からその様な本性だったのか。いや、気にせねばならぬのは今そこでは無いな。」


「あー、簡単に匿って欲しいとか言っちゃいましたね。これ、孤児院の子供たちもどうにか保護して貰っても?」


 俺はここで「やっちまったなぁ」と思いながら侯爵様に追加の御願いを出す。話がこのアカルとシーラルの二名を侯爵家で匿って貰うだけに留まらなくなってしまったから。


 孤児院問題、ナドルック侯爵の件、挑戦者たちの犯罪、どれもコレも面倒だ。


(この流れは絶対にイカンでしょ。ラノベラノベしてるじゃ無いですかヤダー)


 さて、ここで一切関係無い事ではあるが、ここまでベラが何も言わず俺の言った通りに大人しくしてくれているのは俺が魔石を与えていたからだ。

 嚙み砕いて食べないで飴みたいに口の中で溶かして楽しんだりできないのか?と聞いてみればどうやらベラはそれを実行したらしく。

 そしてどうにも本当に飴みたいに徐々に魔石を溶かして吸収している様なのだ。

 なのでソレに集中しているあいだのベラは余計な事を口走らない。有難い事に。


「暫くは預かる事も出来ようが、しかし長期は無理だな。時間を置いて孤児たちは侯爵家経営の複数の孤児院に分ける事になろう。」


「あー、ソレだと別れがかわいそうかなぁ。余り無理は頼めないし?」


「既にもう無理を通り越して諦めているのだがなぁ・・・」


 侯爵様は器もデカくて太っ腹だと思っていたが、どうやら既に少々の自棄っぱちが入っていた模様。

 俺はそこまで難題を求めたりはしていないと思っているが、どうにも侯爵様からしてみるとそうでも無いらしい。どうやら価値観の相違がそこには聳え立っている様である。


「取り合えずシーラルを連れて一旦その孤児院に行かないとダメだろうな。子供たちが心配してるだろうしきっと。」


 一度孤児院の方に戻らねばならないだろう。侯爵様が暫くは面倒を見てくれるそうだから問題が諸々解決するまでは子供たちも丸ッと纏めて世話をして貰うとする。

 その為には子供たちを連れ出すのに責任者が居ないとダメで。見知らぬ大人に付いて行っちゃだめですよ、なのだ。

 シーラルが居ればそれは簡単に解決する。なので連れて行か無い、と言った選択肢は無い。


 そしてここで善は急げと言わんばかりにマリが。


「ならウチから馬車を出そう。歩いて行くよりも安全だし、子供たちを大勢連れて来るにも必要だろうからね。もちろん私も一緒に行く。そうなるとアカルはどうする?ここで待つかい?」


 マリのこの言葉でシーラルは覚悟を決めた顔に。アカルは首を横に勢い良く振っている。


 背に腹は代えられぬ、シーラルのその覚悟は自らの身がどうなろうと子供たちの安全第一での事だろう。

 ここでこうして事情を説明したのだ。自分たちの力だけで問題がもう自力解決できないと理解しているはずである。

 だからこそ遠慮などしていられないと腹を括った訳だ。


 それとは違い、アカルが首を横に振るのはここに一人で置いて行かれる事に肩身の狭さを思ったからと見える。

 終始緊張で背中が伸びっぱなしであり、居心地が悪そうである。


「まあしょうがないよな。俺がその護衛で一緒に行かんとダメだろう。連れて来たのは俺だからなぁ。最後まで面倒見ないとモヤモヤするだろうし。」


「うむ、我も行くぞ。ここで待っておっても暇だしな。」


 魔石を食べ終えたベラがそう一言。ここでシーラルがビクッと緊張で体を硬直させた。


 ここで俺はその反応に質問を飛ばしてみた。ベラに何をそんなに怯えているのか?と。


「なぁ?シーラル。君にはベラがどんな風に見えてんの?ちょっと教えてくんない?」


 シーラルのベラに対する怯えは異常で目立つ。この先も一々そうやっていれば緊張の為に体力と精神を消耗して倒れかねないだろう。

 だから理由を聞いてみれば何かソレの解決策でも思いつけるかもと思ってそう聞いてみたのだ。


「・・・あ、あの、い、い、言っても私は殺されたり、その、しないですか?」


「うむ?別に我の真の姿を吹聴する様な事をせねば良い。何をお前が言おうが我にとって見れば所詮は矮小なる存在の戯言でしかない。殺そうと思えば直ぐにでも殺せる、我にとって殺す価値の無い存在をどうして気にする必要があろう?」


 ベラが自然にそう言い放つのでシーラルはこれにゆっくりと肩の力を抜いて言う。


「あ、あの、黒い、そして禍々しい、揺らめく靄を、その、纏っている様に見えます、ハイ。」


「禍々しいからそこに嫌悪や恐怖とかを感じてそんな反応になっていたって事ね。うん、理解した。おいベラ、それもうちょっと抑えられ無いのか?」


 これまでにそう言った部分を微かに思いついてはいた。シーラルがベラに過剰に怯えているのを最初に見てから。

 俺はここでベラに何とかしろと求めた。良くあるアレである。気を抑えるとか、オーラを「絶」にするとか、そう言ったアレ。

 

「無理だな。今の状態でも少々無理をして抑え込んどるぞ?まあコレが分かる者はそこまで多くは無かろう。心配する程の事でも無いと思うが?」


「いや、そう言う油断が駄目なんだって。その靄?が見える奴が居たりして、しかもソイツがしつこくて、面倒とか。そういう輩が絶対にベラに絡んでくるぞ?気を付けないとダメだってば。フラグ建てんなよ。その、何?黒い靄ってのが原因でお前の正体がバレるかもしれないんだからな?そうなったら討伐隊が組まれてそれこそ鬱陶しい事になるぞ?」


「何を無茶を言っておるか。今の状態でも多少の無理をして抑えこんどると言っておろうが。それこそ我を討つなどと、雑魚共が幾ら集まろうが我を殺せはせんだろうに。しかし鬱陶しいだろうというのは同意する。纏わり続けられるのも御免だ。ならば努力はするか。と言うか、ふらぐ?とはどんな意味だ?ソレがたつ?建築物の類か?と言うか、我が何を建てるというんだ?」


 フラグと言う意味を説明せずに俺は立ち上がる。一々教えてやるのは面倒だったから。


「さてと、早めに片づけちまおうよ。こんなのさっさとやる事やって引き籠っていれば時間が解決・・・してくれそうにも無いけど。子供たちの安寧とか掛かってるとね。ソレが引っ掛かるのよね。」


 何かしらの被害やら胸糞悪い事などが起これば今後の俺の精神安定に悪影響だ。絶対に後味が悪い。

 こんな事は手早く片づけてしまうに限るのである。ならば手始めの「子供たちの回収」は素早く終わらせたい。


 こうして俺が立ち上がった事でマリもそれに合わせて立ち上がって「準備してくる」と言って小走りで部屋を出た。

 俺もベラも、そしてアカルとシーラルもこれに後を追って部屋を出る。別にここでマリを追って走ったりはしない。急ぎたいと言っても全力疾走などと言う程では無い現状だから。


 その際には一言侯爵様に「じゃあ行ってきます」と俺は告げた。

 これに返事は無かったが侯爵様が頷いたのはこの目にしたので何も他に問題は無さそうだと思って屋敷を出れば既に馬車が三台も並んでいた。


「いや、うん、孤児院には何名の子供たちが居るの?そこ聞いて無かったわ。」


 俺がそんな事をシーラルへと聞いた時にはベラが一台の馬車の上に乗っかった。ひょいと軽々に。


「行くぞ。何を立ち止まっておるか。早く乗れ。グズグズと鈍間だな。全く。」


「急かすんじゃないっての。物事には心の準備ってのが必要な時があるんだよ。それこそお前が俺たちの事をそもそも矮小と言ってるんだろうが。こちとらちっぽけな存在だからな。お前みたいに何も考えずに大胆に動けないんだよ。逐一考えちゃうんだ。お前と一緒にしないでくれ。と言うか、何で馬車の上に乗った?」


 多分上に乗った方が周囲が良く観察できると言った理由だと思うのだが。

 俺のこの最後の疑問にベラからはこう返って来た。


「力持たぬ者はそう言った所が残念だな。非力であるからして引き籠ってばかりで行動が取り辛いのだろう?我はその点何が起きようが捻じ伏せられるだけの力があるからな。好きな様に動いても誰もコレを止める事は出来ん。どんな障害がやってこようが粉砕してくれる。」


「そんなお前は俺にボコボコにされていますが?」


 俺のツッコミにベラは目を逸らしながら。


「・・・ふん!我が力をお前よりも上げた時にはあの際のやられた事を倍返ししてやるからな!」


「偉そうに言ってもなぁ?その力を上げるのって俺がやる魔石を後何個食えばそうなるんだ?」


「ソレを言えばお前は我に魔石を渡すのを渋るだろうが。教えんわ。」


「あのー、子供たちは全部で二十人居ます・・・」


「うん?結構多いな?マリ、大丈夫そうなのか?」


「大丈夫じゃないかな?詰め込めば何とか?最悪でも馬車の上にも乗せて行けば。入りきらなかったら歩いてもらうしかないけどね。そうなったら交代で乗り降りさせれば。」


 俺とベラの会話にシーラルが絶妙なタイミングで割り込んで来て人数を告げた。

 これに足りるのか?と疑問になったのでソレを問えばマリはあっけらかんと答える。

 ここで気にしてもしょうがなさそうだったので俺は出発の合図を口にする。


「うん、まあそれじゃあ、いっか。行こう。」


 ここでアカルが侯爵家の紋章?の付いた馬車に乗り込むのにビビッていたので背中を押して無理やり乗せた。


 さて、ここで問題です。侯爵令嬢がこうして馬車で移動するのだからその護衛が付くのは当たり前で。


 屋敷から出ればぞろぞろとその護衛さんたちが馬車を囲って同行して来るので町の中はコレに騒然とする訳で。


 何が起きたのか、何があると言うのか、何が始まるのかと言ったヒソヒソ会話がそこら中に溢れて次第に野次馬が増えていっていた。

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