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★★★そう何度もあって堪るか!★★★

 遅かった。ベラに近づこうとした男が口から泡を吹いて倒れたのだ。


「・・・あーあ、ベラ、何をした?」


「やはり効くでは無いか、我の邪眼は。なに、殺してはおらん。我に剣を突き付けて来たあの阿呆にも同じ事をしていたんだがな。あちらは堪えよったわ。その代わりに心の底には我への恐怖が刻まれた事だろうがな。それに比べてそ奴は何だ?込める力を最小限に抑え込んで睨んでやったが、死ななかっただけマシだと、幸運を噛み締めるべきだ。ふむ、こうして比べてみれば同じ阿呆でも違いはあるものだな。」


 ベラは込める力を抑えた邪眼を使ったと言うので俺はそこにツッコミを入れた。


「その邪眼を使うと生命力ってのを消費するんじゃ無かったのか?」


 これにベラからの返しはコレだった。


「うむ、だから消費した分だけの魔石をくれ。五個ほどで良い。殺さんでやったのだ。問題を起さずにここは収めてやったのだ。この程度は良いだろう?」


 この俺たちのやり取りに入り込んでくる叫び声。


「何をゴチャゴチャ言ってやがるキサマらぁ!一体何をしやがった!」


「三下以下が吠えるなよウッセーナー。ワンワンと大声出さないでも聞こえてるって。お前は盛りの付いた犬かよ。」


 お怒り表明の一人がそう言ってこちらに剣を抜いて向けて叫んできたのだ。

 これにはもうベラが既に手を出しちゃった後であるので俺は「もう良いか」と堪える気が無くなっていて相手をワンちゃん呼ばわりしてしまう。


 煽った事を「あ、しまった」と思った時にはもう遅い。


「てめえええええ!」


 斬り掛かって来られてしまった。コレはしょうがないなと俺は思った。

 相手は典型的なテンプレチンピラであるのだ。この様にして煽ってしまえばこんな展開になるのは目に見えていた。

 だから最初は我慢しようと思ったのにこれである。今のこの状況は堪え性が無く、諦めが早い俺の性格から来る無駄な争いであり、一文にもならない。


「ベラ、スマンがやっちゃってくれ。もうしょうも無い。面倒だ。最初からこうしとけば良かった。」


「うむ、特別だぞ?ちゃんと後で魔石を頂くからな?」


 このやり取りの後は瞬時に残りのチンピラ挑戦者が全員同じく口から泡を吹いて倒れた。


「・・・死んで無いよな?大丈夫か?このまま放っておいて?」


「こやつらは我らを害そうとしてきた者たちぞ?心配をする必要が無い。殺す覚悟があれば殺される覚悟も持たねばな。返り討ちに合っても今こうして命があるだけこの者たちにとっては幸運だろう。まあ目が覚めるまでに試練獣とやらに殺され無かったら、の話だろうがな。放っておけ。」


「ソレもそうか。じゃあホレ、サービスでこれだけやるよ。」


 俺は魔石を二十個取り出してベラに渡す。一人五個計算だ。

 別に邪眼一回のベラの「生命力」の使用量を細かく算出してキッチリカッチリと魔石を渡す気は無い。

 こう言った場合はその時その時で適当に決めて報酬を渡せば良い。こんな下らない事に思考を割いてストレスとして抱え込んだりしたく無い。


「こいつらが生きて戻った時に俺たちの事を何て言い触らすか分からんけど、まあそんなのドウでも良いか・・・?いや、あんま良くないかも?でも、殺す程の事でも無いと言えばないんだよなぁ。」


 こいつらが生き残る事でフラグになって後々にまた面倒事に発展、などと言った事になるのは勘弁して欲しい所だ。

 だけどもここでソレを回避するのに「ミ・ナ・ゴ・ロ・シ」をしても、それが別のフラグとなって後にもっと大きな問題になってしまったりする可能性もあるだろう。


 俺のそんな無駄な悩みなどベラは気にもしていない。俺が渡した魔石を美味そうにポリポリと食べて満足そうにしている。


「ほれ、さっさと行くぞ。こんな殺す価値も無い雑魚など後々で群れて来おってもお前なら一捻りで片づけられるだろうに。何をそこまで悩む事があるのか?全く、力を持っておる癖に変な所に気を揉む奴だな、お前は。」


「そうバッサリと言われちゃうと何も言えんけども。まあ、一個言える事は、人の世の中ってのは複雑怪奇で力だけで解決できる自然界の弱肉強食とはかけ離れた構造してるから悩むんだよって事。そこら辺ベラには分からんだろ?」


「うむ、サッパリだな!分かりたくも無い。」


「はいはい、サイデスカ。」


 こうして俺たちはこの場をさっさと抜けて次の階を目指して歩き出した。


 で、二度あることは三度ある、とよく言うが、一度起きた事は二度目も起きないとは限らないと。


「ようアンチャン、ちょっと止まりなよ?そんなガキを連れてどこ行こうってんだ?こんな場所でガキ相手にお盛んかぁ?」


 にちゃ~、とした笑いで俺たちを通せんぼして来た四人組が。

 しかもここは二階層。三階層はダッシュで突っ切った。挑戦者たちの視線を。


 そうして二階層に着いて「さあもうちょっと」と思えばこれである。


「ベラ、ここもまた無駄な労力だとは思うけど、俺が先ず話す。邪眼は最後の手段な?」


「良いだろう。別にソレで我は構わん。どう転んでも魔石を我が貰う結果には変わらんだろうからな。」


「おい!何を俺たちを無視してやガンだ?あぁあん?」


 俺たちが何者なのか知らない向こうは「冴えない挑戦者と少女」としか映っていないんだろうその目に。

 だからちょっと凄んで脅せば向こうの四人という人数に怯え、ビビると思っているに違いなかった。


「あー、俺たちは外に出たいんだ、さっさと。退いてくれ。そこを通して貰え無いか?」


 俺の言葉に向こうは互いに顔を見合わせて「ニヤリ」と表情を変える。


「へっ!なら好きに通りな。引き止めちまって悪かったな。」


 こんなチンピラがこんなに素直に俺たちを通すなんて信じられ無かった。

 だから俺は何かあると疑う。しかしここから先の戻り道に別に何も怪しい所は無かったはず。記憶を探ってみるが、怪しい所は無いハズだった。


 だけども通って良いと言うのならばコレ幸いとチンピラたちが退いたのでこちらも動く。


 これにベラは「何じゃ、予想と随分違うでは無いか。こちらの思惑が外れてしまったな」などと小声で漏らしていた。


 だけどまあ何かあると思っていた俺の予想は当たっていた。この先の分かれ道の場所を塞いでいる六人組。


「ガキを連れた男一人だぁ?何だお前ら?まあ、良い。おう、こっちは通行止めだ。そっちの道を行って遠回りして帰りな。」


 低階層は道が繋がっている部分があって言われている通りに遠回りしてでも帰れる道はある。


「通行止めの理由は?」


 けれどもどんな理由で塞がれているのか知らないし、ソレを知る権利がこちらにだってあるだろう。

 俺はそう尋ねたが向こうの反応はこれに。


「は?てめえが聞いたってどうしようもねぇ事だ。さっさとそっちに行きな。」


 手で「しッしッ」と追い払う様なジェスチャーをして来た。

 俺はもうこうなったらどうしようもないなと思って一言。


「ベラ、やっちゃって。」


 俺は魔石を十個取り出して渡しつつ言う。こいつら気絶させろ、と。


「ホレ、これで良いだろう。さっさと進むか。」


 俺の渡した魔石をピーナッツでも食う様にポリポリと口へ放り込んで噛み砕くベラが聞いて来る。


「で、どうしてこいつらを無力化しようと思ったのだ?」


「いや、この先を通さない理由が知りたかったからだな、単純に。あと多分さっきの四人組とこいつらお仲間だろ、絶対に。」


 ベラの質問に俺はあっさりと答える。こいつらグルだろ、と。


「言われた通りに回り道して罠が張られていれば、単純にソレを突破してこいつらの鼻を明かしても良いと思ったんだけどさ。何か、そう言う雰囲気じゃ無かったのを感じてなぁ。さて、ちょっと急ごうぜ。この先に何があるかさっさと確認しよう。」


「別に構わんがな。」


 そうして床に仲良く気絶して倒れている六人をそのまま放置してその先に行ってみれば。


「げへへへへ・・・お嬢ちゃんたち、もう諦めな?そうすりゃ俺たちが優しく可愛がってやるからよぉ?」


「この屑どもが!近寄るな!臭いんだよてめえらの息は!」


 ここはちょっとした広場だ。だけれどもそこまで広大と言う訳でも無い。ちょっとした小部屋みたいな環境である。


「二人だけでここに入って来たのが運の尽きだろ。と言うか、危機感が足り無さ過ぎるから今こんな目に合ってるんだぞぉ?反省を今後生かせるんだったら、こんな油断をこの先はしない様に注意しろよ?まあこの先がお前らに有ればの話だけどなぁ?ここらは俺たちの縄張りだ。ソレを解かって無かったお嬢ちゃんたちがいけないんだぞぅ?」


 悪党はこの場に五人。ここでそいつらに迫られている挑戦者だと思わしき女性二人。

 どうやら集団で女性を襲っている場面に出くわしてしまった。


「テンプレじゃねーか!」


 俺は思わずここで叫んでしまう。


「何があるかと思って確かめようと思ったらこれかよ!と言うか!そうだよな!俺が迂闊だった!あんな流れになったら!そりゃテンプレしかその先に待っていないですわ!そうですわぁ!」


 油断も油断である。「油断大敵、火がボーボー」とは誰が言った言葉だっただろうか?


「こういうパターンに嵌まらない様にってちょくちょく思ってるのに、何で気が付くとこうなってんだよ!あーもう!」


 放っておく事も出来ないこうなったら。見なければ、聞かなければ、興味を持たなければ、知らなければ、俺は今この場に関わらないで済んだのに。


 でもここまで来たらしょうがない。


「おい!助けて欲しいか!欲しいならしっかりと言え!」


 俺はイラつきと共にそう言い放つ。女性二人の方に。


 一人は活発そうな赤い髪のショートヘア。武装は短剣二本のシーフ系?


 もう一人はどうにも何処かしらで見た事のある様な「神官服」なデザインで金髪ロング。その手に小っちゃいモーニングスターを持って怯えている様子。


「へ?・・・あんた一人でこの場で何の力になるって言うの?そんな子供も連れてる癖に。さっさと逃げなさい!私たちの事は気にしないで良いから!あんたらは自分の命の事を優先しなさいよ!」


「げへっへへ・・・見られたからには逃がしちゃおけねーよ。しかもガキとは言え上玉連れてるじゃねーか。こりゃ楽しんだ後に売っぱらったら幾らの値が付くかな?げはげはげは!」


 笑い方が汚い。そもそもその根性もどうやら修正が効かない程である様子。


「俺は挑戦者じゃ無いけどさ。こういう犯罪者を放っておけれる程に無頓着で無関心でも居られ無いんだよ。と言う訳で、ベラ、こいつら男たち殺してくれる?ほい、魔石。」


「そこまで言っておいて我にやらせるか。まあ良い。ほれ。」


 俺がマジック小袋から一掴みして取り出した魔石をベラに渡す。もう数えたりしない。


 ソレを受け取ったベラが邪眼発動。山場もオチも無く男たちは息絶えて床に転がった。

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