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★★★会いたくない、会いたくは無かった★★★

「食うんじゃ無かったのかよ?」


「お前が我を置いて行こうとする気配がしたのでな。途中で切り上げて来た。」


「負けそうだったから逃げて来たんじゃ無く?」


「あの程度は我の敵では無いぞ?半殺し、うむ、三分の一殺し?位までやった所でお前が居ない事に気付いてな。」


「俺はちゃんと先に行ってるって言ったよな?聞いて無かったんかい。」


 この会話からも分かる通り、ベラは俺に割と直ぐに追い付いて来た。

 しかもあの巨大な鹿を相手に無傷である様子。


(化物同士で殺し合って相打ちになってれば良かったのに)


 俺としては別にベラに対して何らの感情も無い。

 あわよくば面倒事が減れば良いな?位にすら思っていたりもする。

 なのであの二十階層のボスと戦ってお亡くなりになってくれていたら俺の負担も減って良いなぁ、とかまで考えていたりした。


「ベラ、地上に出たら絶対に正体を現すなよ?その人の姿の状態で背中に脚生やすのも無しな?」


「おん?何故お前の言う事に従わねばならん?我は自由である。今は邪魔なので出してはいないが、外に出れば脚は出すぞ?この状態は少々窮屈なのでな。」


「おう、ならその時は俺が即座に刈り取るから覚悟しとけ。目立つモノは隠さんとな。化物を連れているとバレたら俺までヤバい目に遭いそうだし。ソレにお前さ、正体が知れれば討伐軍を出されて鬱陶しい奴らの相手をずっとしなくちゃならなくなるぞ?ソレでも良いか?その時は俺はお前の味方なんかせずに敵に回るから気を付けとけよ?その時には容赦無く今度こそ一撃で始末をつけるからな?」


「ぐぬぬぬ・・・良いだろう。言う事に従ってやる。確かに下賤どもに群がられるのは不快だ。ソレにこの姿のままであった方が人の社会を見て回るのにも都合が良かろう。」


 俺たちは歩みを止める事無く、そして試練獣に足止めされる事無く歩き続けている。


 試練獣は出て来た瞬間に俺が魔法のウォーターガンで即殺するし。

 倒した試練獣が消えて出て来る魔石はベラが拾ってお口に放り込んでポリポリと食っている。


 本当であれば試練場内は危険な場所で、これ程に呑気な会話をしながら歩ける所では無い。

 しかも俺が連れて歩いている存在のその正体は正真正銘の化物であり、本来なら気楽に会話できるような相手では無いハズで。


「それにしてもお前、何でそんな姿になれるの?人化の法ってやつ?」


「うん?・・・知らん。何時の間にか出来る様になっておったな、そう言えば。きっかけは・・・はて?何だったか?」


「お年寄りかお前は。もうボケたか?いや、寝続けて記憶が曖昧になった?と言うか、覚えていない程に長い年月寝続けてたって事か?」


「そんな感じだな。別に思い出した所でどうと言う事も無かろうこんな事は。重要な事であったなら覚えてもいようが。そうで無いから覚えてはおらんのだろう。その程度の事だ。」


 あの巨大な蜘蛛の質量がこんなちっちゃい少女の形に収まっているのである。

 多分コレも不思議、不可思議、摩訶不思議パワー、魔力と言うモノの力なんだろうとは思うが。


「まあそんなの気にした所で俺に何の得も無いしな。ちょっとした疑問と興味が解消されるだけか。・・・人型になると何故か着ているその白のワンピースもそうなのか?」


「コレか?・・・改めて考えてみれば確かにそうだな?こういうモノかと思ってこれまで深く考えた事も無かったな?しかし別に何かしら害が有る訳で無し。気にせんでも良かろう。」


「あー、生体防具的な何か、って解釈で良いのかね?こう言うのは余り深く追求しない方が良いか。どうせ詳しい原理を聞いてもチンプンカンプンそうだ。」


 ベラのこの人型形態の事は今後考えない様にしておく。深淵を覗き込む時、向こう側もまたこちらを覗いて来ている、と言った感じだ。

 嵌まると抜け出せなくなりそうな思考は放棄するにかぎる。


 そんなやり取りをしつつ、早くも十一階層にまで来てしまった俺たち。そこで気づいた。


「あ、殿下がもしかすると十階層でまだマジック小袋チャレンジしてるかもしれないよなぁ。ベラの事、どう説明すれば良いんだ?絶対にツッコまれるよな?」


 でもここで俺は面倒臭くなった。追及されたらソレを無視してさっさと九階層に行ってしまおうと。

 知らなかった方が良かった事など世の中には蔓延している。このベラの事も多分その中の一つだと思うのだ。


 そして殿下がそれでもまだしつこい様なら「お前には関係無い」と突き放して言ってしまっても良いだろう。

 本当に殿下とベラの間には何の関係も無いのだから。


 と言う事で小休憩を入れてから入った十階層では殿下があのボス鼠を一撃で斬り殺していた。


「あー、居たのね。しかも諦めてねーみたいだし?あの後は直ぐにまたここに戻って来たって感じなのか?ソレに、成長したっぽい?死ぬ間際の反撃は、されて無いな。」


 殿下は二十名の護衛を付けてこの階層で奮闘していた。

 俺との約束を守ってだろう。ボス鼠を倒す際は殿下自身が止めを刺しているのだ。

 しかも死に間際の反撃もさせずにである。殿下はレベルアップしたのだろうか?


「・・・貴様、下の階層からやって来たのか?何処まで潜った?ジェーウ達からは話を聞いているぞ?十五階層にまで到達していたそうでは無いか。・・・しかし、やはり単独で動いていたのか。信じられん奴だ。全くふざけている。」


 心底出会いたく無かったと言いたげな殿下の表情。それには俺も同意である。

 俺だってここで殿下と顔を合わせたくは無かった。面倒そうだから。


 だけどもこれに一言くらいは返しておかないと物凄く絡んできそうだったので止む無しと思って俺は返答する。


「あー、大分深い所まで潜ったよ。それこそ、今その帰りでな。そっちはその分だとまだ出ていない、か。諦めねーの?・・・あ、ジェーウ、お疲れ。」


 この殿下のマジック小袋チャレンジに第一隊騎士団のジェーウ達も付き合わされていたのが見えたので俺は一言彼らに声を掛ける。


「タクマ、非常に問うのに勇気が要るんだが・・・その、何だ?お前の背後に居るその少女は?」


「ジェーウ、空気を読んでくれ。俺はこのまま九階層に行くから、今のは聞かなかった事にするよ。」


 俺が連れている人物に対する質問を想定はしていた、していたけれどもその相手は殿下からのツッコミだったのだが。

 声を掛けてしまったばかりにソレがジェーウからされてしまった。


 ジェーウからの質問に咄嗟にコレを受け流してこのボス部屋を出よう俺は歩き始めたのだが。


「待て。何故この様な危険な場所にそんな年端も行かない少女が居る?おかしい・・・怪しいな。おい、答えろ。そいつは、何だ。」


「・・・殿下には関係の無い事ですよ。それじゃあ俺、行くんで。」


 俺はベラとここに入る前に決めておいたのだ。


 対応は俺がする。ベラは一切喋らずに俺に付いて来る。


 たったのこれだけではあるが、しかし一番大事な事でもある。

 ベラが口を開くと誤解を招きかねない、と言うか、絶対に誤解される。


 しかし俺が「お前らには関係無い」と突き放せばそれ以上の事にはならないと判断したのだ。

 殿下が俺のこの態度に不満を持ったとしてもだ。端から俺の事を大っ嫌いな殿下である。何を言っても無駄だ。

 ここで追及を受けたとしても何もそれ以上は答えずに黙ってここから立ち去ればイケると俺は踏んでいた。


 いたのだが。


 パチン、と指を弾く音がしたと思えば俺たちの目の前に立ち塞がる殿下の護衛として同行していた騎士たち。

 しかしこれにジェーウ達は従っておらず、離れた場所に下がっている。


 ジェーウ達メンバーは俺に敵対しても勝てるはずが無いと理解しているからこそだろう。殿下の命令に従わないのは。


 そう、この指パッチンの合図を出したのは誰でも無い、殿下である。


「答えろ。納得のいく説明をせねばこれ以上は行かせんぞ?」


「・・・俺との約束、忘れました?」


「それとこれとは話が別だ。」


「いや、同じだろうが。」


 ベラにはしっかりと説明をしてある。この国の王子様に目を付けられたらお前、討伐隊を結成されて攻め立てられるぞ?と。

 そんな鬱陶しい事になりたく無ければ黙って余計な事はするなよ?と。


 だけどもここで俺では無く、どうにもベラの方が先に我慢の限界が来てしまったようで。


「ふん!雑魚で下等なクソガキの分際で偉そうな事を。やはり愚かなる種は身の程を弁えぬのは昔も今も変わらんのか。」


「おい、お前黙ってろって行っただろうがよ。あぁ、もう。」


「・・・おい、今そやつは何と言った?我の聞き間違いか?雑魚、下等、クソ、だと?付け加えて愚か?」


 これに俺はヤバいと思ってフォローを入れてみた。


「おいおい、流せ流せ。受け流せ。そんな言葉をまともに受け取るな。たかがちっちゃい少女がテキトーに言った言葉だ。気にも留めない度量も無いのか?」


「そんな存在を連れているお前は一体なんなんだという話だろうが?説明をしろ!」


 殿下、軽くキレている。嫌な流れになったなと思いながら説得を試みる俺。


「世の中知らない方が良い事もあるって学んで来なかったのか?今がソレだよ。言っただろうが。殿下にゃ関係無いってよ。だから通せんぼは解除してくれ。じゃ無いと本当にどうなるか分からんから。退いてくれマジで。」


 後の展開が読めない。このまま騎士たちが俺たちへと襲い掛かってきたらベラのその時の対応行動がどの様になるかなど俺には予想は付かない。


 無抵抗は絶対に無い。じゃあこの少女の状態のままで騎士をなぎ倒すのか?


(一番最悪なのはこの場で正体を現して脅威とみなされるパターンだよなぁ)


 一応はベラとは約束?をしたはずだ。ソレにベラも納得していた。


 化物と断じられて、挙句の果てに危険だ何だと騒がれたら、人って言うのは際限無く次々に襲ってくる、と。


 鬱陶しく群がられるのは勘弁だとベラも言っていたはずなので人型形態の背中に蜘蛛の脚を発生させる、と言うのもしないとは思うのだが。


 ここで声を上げたのはジェーウだった。


「殿下、引いてください。彼の、タクマの力量を殿下は充二分に知っているはずでしょう?騎士たちに殿下の我儘で余計な傷を負わせるつもりですか?」


「よしジェーウ、もっと言ってやれ!」


 俺が囃し立てるけどそれ以上はジェーウは黙る。


 ここで殿下が物凄く機嫌悪そうな顔になって盛大な舌打ちを一つしてから「散れ」と騎士たちに命令を出した。


 開いた道へと俺は堂々と歩き出す。


「いやー、一時はどうなる事かと思った。じゃあサヨウナラ、お元気で・・・あ?」


 ダメでした。殿下が直接剣を抜いてベラに斬り掛かっていた。しかも黙って、まるで奇襲の様に。


「・・・ほう?寸前で止めたか。我がどう動くか試して来たな?ソレが自分の命を救ったのだと然りと心に刻む事だ。もし振り抜いていればそこで転がっていたのは貴様の頭だっただろう。命拾いした事を精々噛み締めるのだな。」


 その剣はベラの首の直前で止まっていた。ベラはその事に対して殿下へと命拾いした事を喜べと言っている。


「おいおい・・・お前、何ホントしちゃってんの?マジで殿下アホの子だな?死ななくて良かったよ・・・」


 ここで俺は不本意ながらも大きな大きな溜息を吐いてから殿下の無事を心から喜んだ。

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