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★★★食べ放題★★★

「解せぬ・・・何故だ・・・」


 そんな言葉を口にして落ち込んでいるのはベラだ。

 俺たちは今あの玉座の間、ベラの「巣」から出て地上目指して進んでいる。


「そりゃ俺にも分からん。まあ、ドンマイ?」


 別に問題と言う程の事でも無いのだが。

 ベラが試練獣を倒しても魔石が落ちないのだ。


「食べ放題だと思ったのだ。なのに、何故に・・・」


 俺が倒した試練獣から魔石がゲットできるのを見てベラは「何だ、そんな事で得られるのか」と言って次に出て来た試練獣をその手で倒したのだが。


 文字通り、手刀で一撃。ソレを食らった試練獣は光と変わるのは同じであったが、しかしその後には魔石が何処にも無い事態が続いた。


 俺が倒した場合はそんな事は一切無い。必ず落ちている。

 なのにベラがやるとどうしてか魔石が出て来ないのだ。


「これではお前に頼るしかアレを食えぬでは無いか。どうしてくれるのだ?」


「いや、何でお前食いしん坊キャラ何だよ?いや、こういう場合はその表現は変か?」


「あれを食らい続ければより我は強くなれそうだった。そうして強力になった暁には我が受けた苦痛をお前に味合わせてやろうと思っておったのだがなぁ。」


「復讐目的かよ。それを教えられたら俺は「ハイソウデスカ」って簡単にお前に魔石を食わせてやれなくなるが?」


「冗談だ。」


「お前目がマジなんだよ。馬鹿言うな。冗談を言うんだったらその顔を本気でどうにかしてから言え。」


 心底悔しそうにベラが不満を漏らすので俺は「冗談は止し子さん」と言ってやる。

 これには「ちッ」と言う舌打ちが返された。

 俺はこれに本気で調教を考えないとダメかな?とか考える。


 そうして急がず、しかしダラダラとせずに順調に階層を上がって行けばあの「モンスターハウス」にやって来た。

 此処をまた突破しないと地上にいけないとか怠い、とか思っていればベラが言う。


「何じゃこの部屋は?何もないでは無いか?ここまでに来たあの複雑な分かれ道ばかりとは違うな明らかに。空気も何やらおかしい様な?」


 空気がおかしい、などと言った感覚は俺には分からない。

 けれどもここがどういう場所なのかは俺はもう既に知っているのでここで言ってやった。


「ああ、そうだな。喜べ。魔石食べ放題にしてやるよ。」


「・・・何じゃと?それなら早くソレをやってくれ!魔石、うむ、アレは良い物だ!」


 食いつきが半端無い。トップブリーダーも推奨するペディグリーチャ◯。猫にチャオチュー◯。犬にワンチュー◯である。

 もう我慢できないと言わんばかりにベラの口から涎が垂れかけている。


「お前その口端拭けよ汚ねーよ。まだもうちょっと時間かかるから我慢しろ。」


「ふはははっはははあ!どれ位待てば良いのだ?何処まで行けば良いのだ?はよう!はよう!・・・いや、我にあの力の塊を与えるのは宜しくないとお前は思っておったのでは無いのか?ソレを何故今になって?」


「あー?お前が幾ら強くなった所で逃げきる自信はあるしな。逃げた先にまでお前がやって来たとしてもまたそん時は逃げるから良いよ。それと、お前がどれだけ強くなったかとか、ソレに俺がどれだけ通用するかとかもちょっとだけ試しておきたいってのはあるかな。」


 俺はこの世界に来てまだ自身の「限界」と言ったモノを実験できてはいない。

 なのでここでベラが魔石を食ってパワーアップして俺に襲ってきた場合にソレを試してみようと考えたのだ。

 ベラがまた俺を害そうとするならば今度こそこの身体で「本気」ってのを出して見ても良いだろう。

 敵わないと判断したら即座に逃げ出せば良い。俺にはソレが出来るだけの実力がある。


 と言う訳で中央に置いてある玉を俺は回収する。

 ベラは何故かこの玉には何らの興味を示さなかったのでコレは只のギミックを動かす為だけの道具でしか無いのだろう。

 特別な力でも込められていそう、などと俺は思っていたのだが、ベラのこの反応だと本当に何も無いんだろう。


「さて、覚悟しとけよ?次から次に食べさせてやっからよ。」


 俺は例の窪みに玉を嵌めてギミックを起動させる。

 すると出て来る出て来る、試練獣がまるでゴミの様に。


 俺がこれらを倒し続けるならば、ベラにとっては食べ放題の時間なだけである。


「さて、じゃあウィンドカッター。スラッシュ。スラッシュ。スラッシュ。」


 先ずは手始めとばかりに四連撃。これで今の俺たちの周囲に居た試練獣が大幅に消えた。

 その後に床に散らばるのは消えた試練獣と同じだけの魔石。


「うひょおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 ベラがこれに興奮。本当に残念美少女である。中身は蜘蛛だし。


 正しく今俺の目の前でその見た目だけなら美少女のベラが床に散らばる魔石を拾い食いしている光景なのだから溜息の二つも三つも出ようモノだ。


 ポリポリと一つ一つ丁寧に食べて味わう事など出来ないとばかりにその頬の内側にまるでリスの如くに大量に魔石を詰め込んでいるのは流石に滑稽だ。


 まるで仙人のマメを大量に頬張るヤジロ◯エの様だと俺は思った。


(こいつはどれだけ食えば腹いっぱいになるかね?ギブアップって言うまではこのままこいつに魔石を食わせ続けてみるか)


 こうして幸せそうにボリボリゴリゴリと魔石を貪り食うベラの意地汚い姿を眺めつつ俺は次々に試練獣を魔石に変えていった。


 そうして一向に収まる気配が無かった「湧き」にとうとう限界が来たみたいである。


「・・・?おっと?ベラ、もうそろそろ終了のお時間ですよ?」


「待て待て待て!まだだ!まだ終わらんよ!」


「いや、終わりだって。ほら、見て見ろ。もうさっきから倒しても復活してこないだろ?」


「ぬぐぐぐ・・・我の幸せの時間がぁ・・・」


「いや、そんだけ腹がポンポコリンで何を言ってるやら・・・」


 呆れてモノが言え無いとはこの事だろう。ベラのお腹部分は物凄い事になっている。まるで妊婦の様に。

 ついでに口の中、頬袋と言っても過言では無いその状態で、ベラはまだ食べたいと言い張るのだ。食い意地が張り過ぎてまるでその手の化物である。


 と言うか化物だった実際に。こいつは今北欧系美少女の姿なのである。


 まあそれも今は見る影も無いのだが。


 だけども油断はしてはならない。こいつは蜘蛛の化物であるからして正体は。


 さて、ここで一時間以上を俺は試練獣倒しっぱなしだ。

 コレがRPGとかであれば経験値ガッポガポで大幅レベルアップ間違い無しと言いたい所だ。


「今のこの身体がレベルカンストしてて、そもそも最初から経験値が意味無さそう、って所には目を瞑っておく。」


 俺は補充されなくなってだだっ広い空間に戻ったこの部屋でそんな事をぼやく。

 ベラはまだまだと言った感じで未だに魔石を夢中で拾い食いしていて俺の事など忘れている様子である。


「おい、残りは俺が保管しておいてやるから後で食え。今ここで全部食べんでも良いだろ。」


「・・・は!?そうだったか!お前の持つその不思議袋に入れておくことができるのだったか!ならばこれらを、ホレ!」


 両手一杯に山盛りなその魔石をベラは先程まで、まるで志村けんのスイカコントの様に貪り食っていたのだが、急に俺の言葉で落ち着いた。


「・・・その手の中の奴は今全部食っとけ。お前の涎がめっちゃ付いてて汚い。」


「むうう!まあ良い。我を汚いなどと言えるのはお前くらいだ。ここは我の広い心で許してやろう。」


「本気で調教されてみるか?ん?そんな言葉遣いと上から目線態度で外の世界でやっていけると思っているのか?なら、俺がその体に痛みと共に「謙虚さ」ってやつを刻んでやっても良いぞ?その手間を俺が掛けてやるから慣れていこうな?な?」


「お、おう、やめてくれ、ソレは望んではおらん・・・ヤメロ!その目をしながら近づいて来るで無い!」


 俺がじりじりと一歩一歩ゆっくりとベラに近づくと向こうはこれに怯えて後ずさる。

 ここでベラが足元の魔石に足を取られてすっ転んだ。


 この間抜けな姿に毒気を抜かれた俺はさっさと魔石を回収していく。

 余りにも広範囲に散らばってしまっているので拾い集めるのが一苦労所じゃ無い。


「で、俺の事はそれだけ魔石食ったんだ。殺せそうか?」


「・・・うぐぐぐ。これらを消化しきらねばまだその点の判断は付かん。まあ待て。殺せると確信を持った時には正面から堂々と挑んでお前を切り刻んでくれよう。」


「はいはい、それじゃあさっさと回収作業を手伝えよ。」


 どうやらベラは律儀にも正々堂々と俺と戦うつもりらしい。

 俺に対して不意打ちでも暗殺でも仕掛けて殺しにくればいいハズであるのに。


(ベラにも矜持ってのが有るのかね?それとも今のセリフはブラフか?まあどっちにしろ今じゃ無いから気にせんでも良いか)


 俺には今ベラに対しての危機感が無い。何故だかどうしても「こいつが幾らパワーアップしても勝てそう」と言った何となくな気持ちがあるから。


 それと幾ら不意打ちでも暗殺でも、こいつに殺されると言ったイメージが湧かない。


 とは言え相手は化物なので余りそう言った油断は持っていては危険なのだが。


(どうしてもコイツに俺が殺されるビジョンは見え無いんだよなぁ)


 余りにもベラの「食いしん坊キャラ」をこの目にしてしまったので「餌で釣れる」と言った安心感がデカい。

 なのでそう言った要素でもこのベラの危険度をどうしても下げて見てしまう。


 そうやって魔石の回収を終えた。ベラが「一つも残さん!」と言ってこの空間をひたすらに探し回って作業をしていたので相当な時間が掛かった。


「あー、やっとこの部屋を抜けれるわー。ホントに、怠いな。休憩入れっか。」


 階段部分で俺は腰を下ろして一息つく。しかしこれにベラが文句を言ってきた。


「何だ?だらし無いな。あの程度で根を上げたのか?」


「お前ホントに口が減らないな?まあ今は良いか。取り合えずお前のその締まらない体を見てりゃ非難する気が失せる。」


 まだまだ引っ込まないベラのその腹はずっと膨れてパンパンのままだ。


「これでも少しづつは消化できておるぞ?一粒一粒がかなりの密度であるからして時間も掛かろうものだ。一気に吸収しようと思えばできん事も無いが、無駄が多く出過ぎるのでな。暫くはこのままだな。」


 ベラがそんな事を言うので俺は「じゃあ別にここで休憩しても良いだろ?」と言ってやる。

 ここでゆっくりして行ったってバチなど当たら無い。


 ベラがこんな体形であるからして、歩き辛そうによちよちペンギン歩きだった事も「モンスターハウス」を出るのに時間が掛かった要因の一つである。

 このまま先を急いだ所で余計に時間が掛かるのならばベラの腹が収まって来るまで待った方が楽だ。


(無理やり吸収する為に力を使うとその分の差し引きで無駄が出るのかね?)


 人と言うのはエネルギーを得るのに食べなくちゃならない。

 けれども食べた物を消化するにもソレを為すのにはエネルギーが必要であるのだ。


 人もバケモノもそこら辺は同じと言う事か。


「俺も小腹がすいたから食っておくか。その後は・・・寝よ。」

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