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★★★こう言った流れはもはやお約束★★★

 このベラは太古の昔から生きているそうな。

 何処までも延々と広がる森の深部に棲んでいて、その周囲のヌシをしていたらしい。

 自分が快適に眠っていられる空間を作り上げてそこでずっと微睡んでいたそうで。


「で、何でこんな玉座の間な空間になっとんの?」


「最初から我は森で生まれ生きていた訳では無いからな。人と言う愚かな種族の住む場所を渡り歩き続けていた。」


 どうやらこのベラ、人の生活の中で生存していた時期があったそうで。

 その時に目にしたこの「玉座の間」を気に入ったのだそうだ。


「人とは実に愚かで矮小だと言うのはその頃に良く見知っていた。互いに争い、貶め、罵倒し、勝手な事を言って他を排除しようとする。集団で生きている癖に、その集団をわざわざ殺す。欲に対して意地汚くしつこくい、粘着だ。弱い力しか持たぬ癖に、自らを大いなる者と勘違いして増長する滑稽さには笑いも出ぬ。」


 人間批判である。まあ言ってる事は別に全部間違ってるとは言えないので笑い飛ばせない。

 だけども俺がわざわざここで否定やら訂正をしようと言葉を紡ぐ気も無いのでそのまま話を続けさせる。


「そうして流浪している間に偶々見つけた森のその奥で暮らし始めてそこで本格的な巣作りを始めたのだ。その頃には既に今の我の姿が完成しておっての。我に敵う存在は皆無であった。そのまま生きるのに飽いた我は死ぬ気も無かったのでな。煩わしい事の一切を断って寝てしまおうと思ったのだ。」


「何その贅沢で悠長で気長過ぎる自殺。自殺だよな?信じられ無いんだが?と言うか、ドンダケ寝てたんだよ?」


 そんな所に俺がやって来なかったらどうなっていただろうか?

 そのまま眠り続けていればきっとそのまま、ベラは眠ったままに死んでいったのではないのだろうか?


 寝ているだけでも人ってのはエネルギーを使っている。

 化物でもソレは同じなのでは?と考えた。


 たとえ仮死と言われる状態でも極僅かずつでも命ってのは漏れ出し続けて、いずれ本当に死ぬ。


 ベラがそのまま微睡み続けていたとして、果たしてその死がその後、何年後に訪れたかは分からないが。


「あー、話を戻すと、俺はそもそも、試練場ってのは百階層、必ずあるって情報を得ていた訳よ。でも、ここ、三十階層なんだよなぁ。なんでそんな試練場がベラの巣ってのに通じてくっ付いてるの?って疑問でさ。」


「そんな事は我にも分からぬわ。全く、迷惑を被っておるのは我の方ぞ?お前の解らぬ事を我が知るはずも無かろうが。話した通りに我はここで時を忘れ眠り続けていたのだぞ?」


「おう、確かになぁ。被害者はそっちで、俺は加害者かぁ。一体どうなってんのやら。何?俺が悪者なの?」


「こちらが聞きたいわ。」


 あの図書館で調べたり、マリやジェーウ達から聞いた話が全然実際と合っていない。


(いや、俺の知ってる試練場はここしか無いからなぁ。他の所は?・・・この分だと多分ここと同じじゃねーのか?)


 俺が勝手に決めつけて解釈して納得した理由ともかけ離れてしまっている感じである。

 神様の思惑が何処にあるのかが分からなくなってきた。本当にこのまま試練場を攻略し続けるのが本当に合っているのかどうか。


 でも俺にはこの世界でそこまでやりたいと思う事も無いし、元の世界に戻りたいと言う気持ちも本気だ。

 今の状況で出来る事はこことは別の試練場に行ってみて最下層を目指すと言う事だけ。


 ここと同じ様な展開にもし他の試練場もなった場合には目的を大幅修正いなければならなくなる事だろう。


(まあそうなる迄はこのままの方針で行けば良いか。他に重要そうな情報を得られていないしなぁ)


「・・・よし、決めたぞ。我は巣を出てお前に付いて行く。」


「え?何で?突然何言いだすんですかこの馬鹿蜘蛛は迷惑ですからこのままここで寝ててくださいお願いしますもう二度と来ないので付いて来ないで?」


 こう言った展開はラノベのお約束と言ってしまえばそれまでだが。

 俺は心底コレを拒否したい。

 だって世話が面倒なのだ、そう言った展開的に。


 世間知らずな俺と、ずっと寝てた化物が二人旅?笑えない冗談にも程がある。


 けれども、そう、こう言ったパターンはどれだけ主人公が拒否をしたとしても付いて来られてしまうのである。


「何故我がお前の言う事を聞いてやらねばならん?無理やりにでも付いて行くぞ?何せ我を目覚めさせたのはお前だ。ならば責任を持ってまた我が眠りに着く気になるそれまでは世話をせよ。」


「何でまた上から目線だよ?本気で殺してやろうか?え?おい?」


 ちょっと凄んで脅して見せるが、暖簾に腕押し、寧ろ言い返された。


「おお、そうかそうか、ならば殺してくれても良い。その際は痛みを感じないで済む死を望むが。しかしなぁ?お前は我を殺す気は無いと言うたな?攻撃の意思を向けぬのならばそちらも攻撃はしないと言ったはずだ。お前に付いて行くだけで我は殺されてしまうのか?どうなのだ?ほれほれ。」


「めんどくせええええええええ!」


 俺は悟ってしまった。これは例え引き離して逃げきったと思っても何故か絶対に追い付いて来るパターンである。


 だがソレを試さないと言う選択肢は俺には無い。ここで即座に諦めるのは早計である。

 逃げて逃げて逃げまくれば、もしかしたらこいつとは二度と会う事も無くなる可能性もまだ残されているはず。試さない訳にはいかない。


 だが先手を打たれてしまった。このベラ、俺を逃す気は無いみたいである。


「ちなみに、我の目は邪眼だけでは無いぞ?目的のモノが何処にあっても見つける事のできる「世界眼」と言うのがあってな。お前の事はもう覚えた。幾らこの世の果てに隠れ住もうとも、即座に見つける事が可能だぞ?」


「その目ん玉、抉り取って燃やしても良い?どれ?どれだ?」


「近寄るで無いわ!」


 俺の心を読んでいるのでは?と思う様なタイミングでそんな事を言って来るものだから、俺はソレに思わずイラっとしてそんな戯言を吐き出してベラへと一歩踏み込む。


 これに過剰に怯えて五歩も十歩も一気に下がるベラ。俺が冗談だと訂正したら「本気だっただろ、今のは・・・」と言いながら増々怯えてしまった。


「はぁ~。分かった。そこに関しちゃ百歩と言わず千歩、いや、一万歩譲ってだ。とは言え、どうしたもんかね?帰るの億劫だし、地上に一気に帰れる魔法陣ここに無いの?」


 嘘をベラが言った訳じゃ無いだろう。その「世界眼」とやらは本当に在るのだと思って俺は諦めの境地で今後の事を口に出した。

 だけどもやはり残念な事に早々に都合の良い事は起きないらしい。


「無いな、その様な物。うむ、さて、我の巣が今どの様な事になっておるのかを知る為にもここから出る訳だが。お前は三十階層と言ったなそう言えば。そこを詳しく説明して貰うとするか先ずは。」


「なあ?俺の方が「上」だよな?格付けはしたよな?え?俺なんでさっきからずっとベラにジワジワと上から目線な態度されてんの?これ俺が折れなきゃいけない感じ?好い加減にして?」


「今更直ぐに態度を変える、言葉遣いを修正するなど器用な事が出来るはずが無いだろう?ソレに我はお前などよりも余程に長く生きておるぞ?その点で言えばお前の方が我を敬うべきだぞ?」


「本当にコイツ一度本気で地獄を見せたろかな・・・」


 ベラが「年長者を敬え」みたいな事を言ってきたものだから本気で調教してやろうかと一瞬思考してしまう。俺はそんな趣味は持っていないが。


 そんな怒りを抱えた俺から何を感じ取ったのか?ベラはいきなり大きくバックステップして俺から距離を取った。


「貴様、先程から我を脅す様にちょくちょくと殺気を小出しにしよってからに。殺す気があるならさっさと一撃で我を殺せ。」


「何だよ?痛み無く殺してくれればソレで良いとか言ってた癖に。」


「馬鹿者が。貴様程の力持つ者の殺気を向けられれば自然と身を引くのはおかしい事では無い。ソレに我は積極的に死にたい訳では無いと言ってあっただろうが。」


「どっちにしろ面倒なのは変わらんだろ。殺しはしないけど態度を改める位には痛めつけてやろうかなと思っただけじゃん?それに、殺気って何よ?俺そんな特殊な物を出せないぞ?」


「質が悪い・・・」


 漫画やアニメじゃ「殺気」などといった物は良く使われる。

 しかし実際に現実でそんな物を感じられた事など一度も無いし、ソレを発揮した事も当然無い。

 ソレを感知できると豪語する人物にも出会った事は無い。


(こっちの世界では何かしら漏れ漏れだったりするのかね?まあ、目に見え無いモノは無いのと一緒、ってな)


 何かしらを察知出来ているベラにはそう言った原理やら摂理をその身で感じられるのだろうが、俺にはそんな特殊技術の持ち合わせは無い。


「ここは一先ずその話は後でするとして。ベラが俺に付いて来るのは、まあ、俺の寛大な心で許すとして、しかし、条件がある。」


「・・・何だ、条件と言うのは?我を雁字搦めにして行動の制限をしたいのか?」


「いや、お前がもし手当たり次第に暴れて虐殺やら破壊をしようものなら俺が責任を持ってその時はお前を殺すからその辺は良い。」


 俺のこの発言にベラが後ずさる。これを俺が本気で言っていると理解してくれたらしい。


「俺が求めるのは・・・」


 俺はここで溜めを作ってから叫ぶ。コレが俺にとって一番大事だとベラに解からせる為に。


「・・・その、見た目だああああああああああ!」


「は?」


 この求めにベラが理解不能だと言いたげに口を大きく開いた。


「お前のその髪の毛何とかしろやあああ!短く切れ!何処からどう見ても邪魔でしか無いんじゃああぁぁ!」


 俺は続けて叫ぶ。


「その恰好のままだと何時の間にか弄られキャラに成り下がった例の怨霊にしか見えん!」


 イベントなどに出て来る様になって明るい場所に出て来た例の怨霊はそう言った場所で見ると怖い部分などが一切無くなっていて、しかもコミカルな所まで有る始末。

 しかも取材アナウンサーの無茶ぶりにも応える様なお茶目ぶりも発揮して、本来持っている怨念どうなった?とツッコみを入れる所である。

 始球式にも呼ばれて投球する姿などは「お前、何がしたいんだよ?」と言ったハッチャケぶりであり、ホラー要素が裸足で逃げ出すレベルだった。アホか、と言いたい。


「・・・コレを、短くすれば良いのか?それだけで、良いのか?本当か?」


 ベラが何故だか大人しくなった。しかも何度も「本当か?」と問い質してくる。


「俺としてはそれだけだ。別にそれ以外には見た感じ人と変わらない姿みたいだしな。背中から生えてたあの脚、生やすなよ?あれがあると一目でバケモンだと分かるからな。人の社会に紛れる心算なら仕舞っておけよ?それと、お前のその顔が髪切ってみれば蜘蛛の顔です、とかだったら仮面被って貰うぞ?と言うか、そんなん俺のSAN値がガリガリ削れる。」


「一体何を言っておるのかサッパリだが、良いだろう。・・・ホレ、これで、良いのか?」


 そう言って長い金髪を切っておかっぱ頭にしたベラ。

 露わになったその顔は北欧系美少女なものだった。

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