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★★★話ができてはいるんだけど★★★

 その後は何も語る事は無い程に順調に階層を下った。

 既に今は三十階層前の扉である。そう、ボス部屋。


「ここまで来るのにあのゴーレムからはまた迷路だったからなぁ。」


 クソ面倒だった。あの広大な空間の攻略を連続でやらされる事にならなかったのは良かったが。

 それでもまた分岐路の多い事、多い事。ゴーレム後のここに来るまでの階層全部が全てそう言った迷路で続いていたのでここまでに相当に日数が掛かっている。


 一度それで集中力が落ちて落とし穴に落ちそうになった事がある。これには肝を冷やした。

 何せその穴の中にはどろどろとした「何か」が溜まっていて落ちたら洒落にならなさそうだったから。


「アレは絶対に「服だけを溶かす」みたいな存在じゃ無いと思うんだよねェ。」


 骨も残らず溶かして吸収される、恐らくはそんな強酸を持つスライムの穴だと思われる。

 そんな所にハマったら、幾ら今の俺の身体のスペックであろうと抜け出す事は不可能に近いのではと思えた。


 この三十階層ボス部屋の前で俺は一旦の休憩を挟んでいる。


「ここを攻略したら一度戻るべきだなぁ。食料が心もとない。いや、材料は残っているし、自炊すれば良いんだろうけど。」


 持ち込んだ食事は残り七日分しかもう無い。相当に迷路で迷ってしまってその分の消費がヤバかったのだ。

 どうやら通路が一定時間で「入れ替え」が起こるギミックが仕込まれていたらしく、それらに気付くのに時間が掛かり、ついでにそのパターンを解明するのに時間が掛かり過ぎた。


「この苦労を、ストレスを、ここのボスにぶつけたい。スッキリするまで。」


 一応の道順とパターンはもう記録済みなので次にここに来る際にはそれ程の苦労はしなくなっているだろうとは言え。

 今のこの気持ちをぶつける相手が欲しいのだ。そう、八つ当たりである。


 この迷路、ずっと出て来る試練獣が「虫系」だったのだ。気持ち悪くて凝視出来ないレベルのSAN値をごっそりと削って来る奴である。

 只の虫だったらそこまでじゃ無かったはずなのだ。ソレが巨大であり、しかもどの試練獣にも口内に何故か「触手」が生えていてニュルニュル、ぬるぬると動くソレが異様に気持ち悪くて俺はダメだった。


 その虫も見た目が大体俺の知っていたりする、もしくは「これかな?」と予想の付く近い外見をしていたりしたのもヨロシクない。


 サーチアンドデストロイ、一瞬でも長くは見ていたく無い存在だったから即殺するのが当たり前だったのでそこまでの精神ダメージを重ねてはいないのだが。

 余り思い出したくは無い相手であり、今後も二度と対峙したく無いと言える。

 ソレもあってここまでの道のりの足取りはずっと重かったのだ。ここで引き返す際も、また戻って来た時も、こいつらをまた殺虫しなくちゃいけないのかと。


 ウンザリした気分を落ち着かせるために今はこうして休憩を入れていたのだが、それも今は落ち着いて来た。


「よし、多分このボス部屋は虫系だろ。ちょっと開けて中を覗いて見て先ずは偵察だな。」


 いきなりまた気持ちの悪くなる思いをするのは分っている。

 だから事前にソレを少しでも緩和しようと思っての行動だ。

 結局は即座に魔法を撃ち込んでぶっ殺せば良いだけの話なのだが。

 それでも俺は一応は念のためと思って扉を僅かに開く。


 初見で気持ち悪くなり過ぎて思わず硬直している間にボスに攻撃されては堪らない。


 だからそう言った選択肢を取ったのだが。


「・・・あ?こんな所に、人?と言うか、これ、何か似た様な場所の覚えが。ああ、玉座の間ね。うん、そっかぁ・・・」


 何故か俺はそこで直観的にこう思ったのだ。あ、これでラストだな、と。


(コレは、会話が可能タイプか?それとも問答無用で襲って来るタイプか?)


 僅かに開いたその隙間からはこの「玉座の間」の全てを観察できなかった。

 それと相当に玉座は奥にあり、そこに座る者がどう言った姿をしているのかとか言った所までは細かく観察は出来ていない。


(多分女性?あの真っ白な感じはドレス、だよな?顔は・・・分からん)


 こんな場所にこんな空間である。何も無い訳が無い。

 だからなるべくならこの隙間から分かる範囲だけでもしっかりと得られる情報を取得しておきたいと思ってジッと観察を続けたのだが。


(こちらには気づいていない?いや、気づいてると思ってこっちは動いた方が良いか。そうじゃ無いとソレで脚を救われるって事も起きるかもしれないし)


 俺がこの世界で「規格外」なのは分っていた。ソレを根拠に結構楽観視した言動をしている事も自覚している。

 けれども何かここだけは俺の脳内で警鐘が鳴り響いていた。


 だから慎重になろうと思っていたが、このままでは埒が明かないのも事実だった。

 玉座に座っている人物?には全く動きが無いのだ。多分コレはこちらからアクションをしない事には始まらないと言った感じである。


 だから勇気をもって扉を開いた。そして、魔法は、まだ撃たない。


 もしかしたら玉座に座る相手が話の出来る、マトモ、な相手かもしれない可能性を考慮してだ。


 だけども俺のそんな期待は裏切られてしまった。


 近づくにつれてその存在が良く分かってくる。


(背中から蜘蛛の脚が生えてるよ・・・遠くからじゃ良く見え無かった・・・)


 絶対にマトモじゃ無い、ここで俺は即殺を狙おうとして何の魔法を使用するかを一瞬考える。

 だがソレを遮るかの様なタイミングでその推定「ボス蜘蛛」であるそいつの顔がこちらに向いた。そして。


「キサマ・・・何者ダ。我ガ巣ニハイリ込ミ、眠リヲ妨ゲテコヨウトハ。無礼ニモ程ガアロウ。」


「ぐっ・・・おい、ここに来て理性もありそうで、しかも会話が成立させられそうなの、何なの?」


 その喋った「ボス」の見た感じが完全に「金髪の貞子」状態だから思わず笑いそうになった。

 だけども自分の今の現状が全く以ってして笑えるはずも無いから一瞬で冷静になってしまう。


「あー、ここってアンタのお住まいだったのね。何も知らずに入り込んでスマンね。こっちにもちょっと事情があってさ。そこら辺を話し合って穏便に誤解を解きたいんだが?うーん、そうね、俺はそもそも、ここが何なのか、全くサッパリなのよ。教えてくれると助かるね?」


「・・・何を言っておる?何も知らぬ?そもそも貴様、どの様にしてここにやって来れたと言うのだ?」


「おん?さっきよりも言葉が聞き取りやすくなった?え?何で突然?」


 今俺は我慢して会話を続けようとしている。こうして話し合いが出来る相手に対していきなり「じゃあ死ね」とかやったりは出来ない。ソレが幾らバケモノ相手でも。

 コレが問答無用で奇声を上げていきなり襲い掛かられていたら速攻で消滅させていた自信はあるが。


「って言うか、どの様にしてって言われても、試練場を三十階層下って来たから、だが?」


「・・・試練場とは何だ?ソレを下って来た?何をでたらめを言うておるのか。ここは森の中に我が作った巣であろうが。」


「おおう、話が違う・・・ちょっとお互い情報を出し合わない?あんた、三十階層のボスじゃ無いの?」


「それこそ何を言うておる貴様。何じゃ、そのボスと言うのは?まあ、良い。貴様をここから出せば済む事である。我の巣に汚らわしい人の血を付けるのは嫌じゃ。今なら見逃してやろう。殺さずにいてやるからさっさと出て行くが良いぞ?」


「ああ、ご親切にどうも。その慈悲がこの身に良く染みます・・・って言ってる場合じゃ無いのよ、こっちは。ちょっと俺の得た話と何だか変に噛み合わ無い所があるから情報交換したいのよ、アンタと。話させてくれよ。」


「下等な存在である貴様と我が話?何を話し合うのか?こちらには貴様に何も用事など無い。大人しく帰る気が無いのであれば直接に我が手で貴様を巣より放り出してやろう。あぁ、感謝はせずとも良いぞ?その代わり、どうなっても知らん。」


「上から目線パターンでこっちの話を聞く気にもなっちゃくれないってアルアルだよね!」


「さて、せっかく目が覚めてしまったのだから多少は楽しませて貰うとしようか。軽い運動は質の良い睡眠に欠かせないと聞いた事があるのだ。せいぜい我に捕まらぬ様に逃げ惑えよ?」


「おいおいおいおいおい!ちょとマテ、ちょとマテ・・・ちょっと待てやぁぁ!」


 金髪貞子の上半身はそのままに、下半身がいきなり黒く染まったかと思えば膨張し、ぐにょぐにょと蠢き始めた。と思えば一気に変態していく。


「人の部分の大きさはそのままで、他の所が超が付く巨大な蜘蛛に変身ね。うん、何だか予想の範囲は超えてはこなかったな。変な部分に安心するくらいには余裕があるな、俺?」


 蜘蛛の頭頂に金髪貞子。ある意味シュールな絵面なのだが、蜘蛛の気持ち悪さが大きくなり過ぎて笑える部分など一切吹き飛んでいる。


 それこそ蜘蛛のありとあらゆる細かい部分までがこれ程の巨大さになればこの目に良く入って来てしまう訳で。

 詳細が解かれば分かる程に怖気が背中に走って上手く動き出せなくなる。


「・・・だって、この玉座の間はめっちゃ天井高いし?横幅も馬鹿みたいに広いし?巣だって言ってたから、まあ、元々がこんだけの大きさだったんだろうけどさ・・・」


 大きさで言うと「重ダンプトラック」と言った具合だ。巨大過ぎる蜘蛛である。

 その複眼にはどの様に俺が映っているのだろうか?


「そんな下らん事考えてる場合じゃねえ!」


 蜘蛛はその前足を一本ゆっくりと持ち上げたと思ったら、俺目掛けて一気に落として来た。


「ぬおおおおお!?殺さずにとか言ってた癖に!」


「しょうが無かろうが。この姿では手加減が難しい。さて、だからな?死なない様に必死に無様に這い回るが良いぞ?」


「ふー!ざー!けー!るー!なぁぁぁぁぁぁ!」


 俺は本気でダッシュして距離を取った。話を聞きたいからと言っても、これ程に一方的にこちらを殺そうとして来る存在に対して手心など加えようとは思えない。


「おい、覚悟しろよ!痛い目見るのはそっちだからな?みくびるなよ?この蜘蛛女!」


 こういう相手を攻略する時は必ずと言って良い程に「脚」狙いである。ラノベの王道。


 アリには足払い、これ絶対。


 そして俺は駆け出して「スラッシュ」を放つ。


 この俺の行動を舐めて掛かった蜘蛛女の末路は悲惨だ。左側の脚が全て「さっくり」と断絶するのだから。


「ぎゃああああああ!?」


「うーん、ゲームでそうだったけど。大抵の敵にはレベルを上げてスラッシュだけで切り抜けられたクソゲーだったからなぁ。ソレが現実になると、こうなるのか?いや、神様、調整しよう?」


「ぎいいいいさああああまあああああ!」


「うるさい、スラッシュ。」


 怨念籠もった声を上げる蜘蛛女の反対の右脚も全て俺は斬り飛ばす。もうここまで来たら相手の心を折ってからじゃ無きゃ話など出来ない。

 俺は諦めてはいない。何せ重要な情報だからだ、この蜘蛛女の話は。

 だからここで何としてでも話を聞き出しておきたいのだ。


「だけどこう言ったパターンの時は相手が諦めずに最後までこっちを殺害しようと足掻いてきて、最終的に殺さなきゃならなくなる、ってのが多いよなぁ。」


 相手の心を殺す方がこういう場面では難易度が高いのである。

 俺にソレが果たして出来るのかと思ってしまうのだ。


「・・・脚が再生してるとかね、うん、コレもアルアルだよね・・・」


 気を付けてみれば先に斬り飛ばした左脚の傷口が煙を上げつつも既に塞がっている。

 しかもそこから見る見るうちに脚がにょきにょきと生えて来ているのが見えてその気持ち悪さに俺は「ウゲッ」と思わず漏らした。

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